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利用者:EULE/からくりサーカス

あらすじ

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サーカス編とからくり編はストーリーの区切りが付くたびに交代で語られる同一時系列上のストーリーである。

また、下記の「~「〇〇」」は各編中を細分化した幕劇のタイトルである。

勝編(プロローグ)

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(1-3巻)

小学5年生の才賀勝は、父親である大手家電メーカー「サイガ」社長・才賀貞義の事故死により180億円の遺産を相続するも、愛人の子かつ末っ子だったことから、これをよく思わない異母兄姉に命を狙われる。3年前に亡くなった祖父・正ニは、この事態を予期しており、もし貞義が亡くなり危機に陥った場合には、ある大きなスーツケースを持って逃げ、いつも勝から一番近い所のサーカスにいる「しろがね」を頼るよう生前、勝に話していた。そのため、勝は単身で自分並に大きなそのスーツケースを運びながらサーカスを目指している最中、加藤鳴海と出会う。

19歳の鳴海は若くして中国武術を修めたものの、他者を笑わせないと発作で死ぬ奇病「ゾナハ病」にかかり、今はきぐるみを着てサーカスのビラ配りをしている有様であった。勝の笑顔で発作から助かった鳴海は恩を返すとして、勝を殺そうとする謎の黒服の男達、もとい、その正体は精巧にできた「からくり人形」達を退けながら、サーカスへ共に向かう。最終的に、彼らの襲撃を受けつつも偶然、サーカスにたどり着いた2人は、そのサーカス団の演者でクールな端正な顔立ちの美女に助けられる。彼女は勝のスーツケースから懸糸傀儡「あるるかん」を取り出すと、それを使って残りの敵を倒してしまう。その彼女こそ勝が捜していた「しろがね(エレオノール)」であった。

鳴海としろがねは、互いに勝のことを想うがゆえに対立しつつも、襲撃してきた人形たちの操作者で殺し屋の阿紫花から勝を守る。しかし、その後、阿紫花とは別の誘拐目的の人形使いのグループに勝は誘拐されてしまう。誘拐者達の依頼人は、勝の叔父・才賀善治であり、自らが勝の後見人となることで莫大な遺産を手に入れるのが目的であった。阿紫花から事情を聞いた鳴海としろがねは、善治がいる軽井沢の別荘を襲撃する。2人は、阿紫花と同じ一族の手練である人形使い達との戦いの中で窮地に陥るも、そこでわだかまりが解け、互いに惹かれ合うようになる。一方、勝自身も単独で叔父に立ち向かい、その機転と勇気で叔父の下から逃げる。敵だった阿紫花を10億で雇い、また自らも見よう見まねで懸糸傀儡を操って2人を助けようとする。激しい戦闘を制するも崩壊する別荘の中で、鳴海は勝を助けるために自らを犠牲にして爆発に巻き込まれ、切断れた片腕を残して行方不明となる。

サーカス編1

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(4-7,11巻)

一連の騒動から二ヶ月後。勝は、今や彼に怯える善治の養子となることで平穏な生活を取り戻そうとしていた。しろがねは、勝を守るとして共に学校生活を始めるなど相変わらず自分を犠牲にする。また、彼女は自らを感情の薄い人形と認識しており、最後に鳴海に笑顔を見せられなかったことを後悔していた。時に彼女の過保護に悩みつつも、勝はそんな彼女に年相応の普通の生活を送って欲しいと願う。そして、2人は共に亡き鳴海のことを想い、彼の信条や彼から教えられたことを守ろうとする(~「出発」)。

勝たちに新たな人形使いの刺客が現れ、これを退けるも、同級生などが巻き込まれてしまったため、勝は、しろがねと共にこの騒動で出会った「仲町サーカス」に、自分の正体を隠した上で身を潜めることを決める。仲町サーカスは、かつては有名な大サーカスであったものの、とある事件を機に解散し、今また団長の仲町によって再興しようとしていた(~「出発」)。前途多難ではあったものの、しろがねの他、猛獣使いのリーゼやナイフ投げのヴィルマ、道具作りの法案など新たな団員が加わり、勝自身も曲芸を行って見事サーカス団は往時の活気を取り戻していく(~「猛獣使いの少女」「ヒロとノリ」「勝 大サーカスを見る」「仲町サーカス」「ナイフ使いのヴィルマ」「入団希望者」)。

からくり編1

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(7-14巻)

死亡したと思われた鳴海は人形破壊者「しろがね」のギイ・クリストフ・レッシュに密かに命を救われており、パリにいた。記憶を失くし、自分が何者かもよくわからない中、鳴海は「生命の水」(アクア・ウイタエ)を飲まされて、ほぼ不死の身体となる「しろがね」になっており、ゾナハ病が治るも、「自動人形(オートマータ)」の戦いに巻き込まれる。ギイによれば本来、自動人形と戦うには懸糸傀儡が必要となるところ、鳴海の中国武術に基づく気(発勁)は自動人形の弱点となり、生身で自動人形と戦えるという。そして2人はフランス・キュベロンにある「しろがね」の本拠地へと向かう。

当初は、誰かに言われて戦うことを拒否する鳴海であったが、ゾナハ病の正体や、それを撒き散らす「真夜中のサーカス」と名乗る自動人形の一団、クローグ村の悲劇や、村を救った旅の錬金術師・白銀(しろがね)のことを知る。全ては、自動人形達の長・フランシーヌ人形を笑わすためだけに、自動人形らは各地でゾナハ病を撒いたり、殺戮に興じ、それに対し白銀の意思を継ぐ「しろがね」らが200年前より彼らと戦ってきたという。そして、自動人形やゾナハ病から子どもたちを守るために、鳴海は「しろがね」として、自動人形らと戦うことを決意する(~「男」)。

鳴海は、「最古のしろがね」で実質的な指導者であるルシールから、自動人形らがあえて「しろがね」を襲う理由の1つが「生命の水」の材料となる「柔らかい石」であると教えられる。人の体内でしか保存できないという「柔らかい石」は、かつてルシールの娘で同じく「しろがね」のアンジェリーナの中にあったというが、今は石の場所はわからなくなっており「いい笑顔の者に」という伝承のみがあった(~「歯車」)。鳴海はルシール、ギイと共に、その候補者であるローエンシュタイン大公国のエリ公女に会いに行き、同じく石を狙う自動人形らと戦う。最終的に幹部アプ・チャー率いる自動人形らを倒すも、石はエリの体内にはなかった(~「プランセス ドゥ マヌカン」)。

引き続き鳴海ら一行は「柔らかい石」を探す旅の中、「真夜中のサーカス」の手掛かりになるかもしれない目撃者の子供に会うため、アメリカにあるゾナハ病の医療施設「レイ疫病研究所」を訪れる。子供の患者達が多く収容されており、その実態に鳴海は心を痛める一方で新たに出会った「しろがね-O」のジョージなど、感情の薄い「しろがね」らを嫌悪する。やがて施設はパウルマン率いる自動人形らに襲われ、鳴海は子供たちを守るために奮闘して人形らを倒すものの、その苛烈な戦いぶりによって子供に引かれてしまう。鳴海は自らを道化とし、改めて「真夜中のサーカス」の壊滅を決意する一方、そこで得られた情報から、サーカス団の次の目標が、中国の、彼の武術の師・梁剣峰(リャン チャンフォン)のいる場所だと気づく(~「銀の煙」)。

一瞬のからくりサーカス

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(13-14巻) 一般旅客機で上海へ向かう鳴海、ルシール、ギイの3人は自動人形らの襲撃に会う。乗客たちを守るため、死闘を演じる鳴海だったが、卑劣な自動人形らによって飛行機はエンジンをやられ墜落を始める。しかし、ギイの活躍やルシールの機転で、かろうじてサーカスを行っている日本の海岸へと不時着する。そこで取りこぼしの自動人形らに襲われた女性と子供を助けた鳴海は、煙で判別できなかったものの彼女らに懐かしさを覚える。その相手こそエレオノールと勝であり、2人もまた死んだはずの鳴海に助けられたような感覚を覚える。結局、2人は鳴海に会うことはできず、あれは錯覚か幻だとするが、もし生きていればまた会えるはずだと希望を持つ。

一方、ギイが海上に転落して行方不明となるもルシールは生きていると断言し、鳴海とルシールは2人だけで上海へと向かう。その後、法案と涼子が海上に浮くギイを発見し仲町サーカスへと収容する。実はギイの教え子だったエレオノールは彼を先生と呼び慕い、甲斐甲斐しく世話をするため、勝は嫉妬する。

からくり編2(~「白金・白銀」)

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(14-16巻)

上海へ着き、白銀(しろがね=バイイン)の記憶がフラッシュバックする中、鳴海は紆余曲折を経て師匠の剣峰と彼の故郷で再会する。実は剣峰は幼少よりゾナハ病を患っており、さらにその出自は「しろがね」や自動人形らの因縁を作った白家であった。そして剣峰は白家の先祖が残した200年以上前の記録について話し、また鳴海はより深く白銀の記憶も浮かんでくる中、以下の昔話が展開される。

今から200年以上前。代々人形の製作と操りに長けた白家の兄弟である白銀(バイイン)と白金(バイジン)は、人形をより人間に近づけるために錬金術に目を付け、プラハで錬金術を学ぶ日々を送っていた。そこで2人は、貧しくも心優しく笑顔が素敵な女性・フランシーヌと出会うが、最終的に白銀が彼女の心を射止め、嫉妬に狂った白金が彼女を連れ去ってしまう。彼女と弟を捜して9年後、白銀は、フランスはキュベロンにある彼女の故郷クローグ村でついに2人を見つける。しかし、フランシーヌは謎の病に冒されており、彼女を助けるため、兄弟は「柔らかい石」の生成に一心不乱に取り組む。しかし、石が完成した矢先に、2人との関係に悩むフランシーヌは自ら小屋に火をつけ、白銀に感謝の言葉を残して自殺してしまう。白銀は村を去るも、白金は同地に残り、23年後にフランシーヌ人形を完成させる。そしてフランシーヌ人形を笑わせるためと、クローグ村への復讐を兼ねて村は惨劇に見舞われたのだった。その3年後に白銀はゾナハ病に冒されたクローグ村を救うために罪悪感を抱く自らを犠牲にして「生命の水」を生成しルシーラ「しろがね」が誕生することとなる。一方、白金も、笑わないフランシーヌ人形を捨て生まれ故郷に戻って同地で同じく「生命の水」に溶けて自殺を遂げようとした。

物語は現代に戻り、鳴海が造物主の故郷に来たことを知って興味を持ち、同地へとやってきた「真夜中のサーカス」の最高幹部「最古の四人」の一人・パンタローネは、ここに「生命の水」の泉があると知る。パンタローネは、チャイナ・ホーと共に、「生命の水」を奪い、その場にいる人間たちを殺そうとするが、剣峰は容易く2人を捌いでしまい、最終的に泉ごとダイナマイトで自爆し、パンタローネは撤退する。騒動が片付いた後、鳴海らは白家の記録の記述者がすべての元凶である白金本人であること、そして「生命の水」に溶けようとした最期に彼が何か良からなぬことを思いついたことを知る。だが、ひとまず、白金の「生命の水」を飲んで「しろがね」化した犬がパンタローネの臭いを覚えていたため、これを手がかりに「真夜中のサーカス」の本拠地へと鳴海ら一行は向かう。

からくり編3(~「最終幕」)

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(17-22巻)

しろがね犬によって、今の「真夜中のサーカス」の本拠地がサハラ砂漠にあることがわかったルシールは、現存する「しろがね」の主戦力のすべてに動員命令をかける。「しろがね-O」を率いるフェイスレス司令を始め、同地管轄で特別参謀となるファティマなど、3万人の戦力が集結しサーカスを包囲する。そしてルシールは明晩午前零時までサーカスを同地に引き止めるよう命令し、一方で代表者20名が、サーカスのテントの中に入り、彼らのルールの下で戦うことが決まる。一方、ジョージは、この作戦のために特別な懸糸傀儡を受け取るため黒賀村に向かうこととなり、同村出身の阿紫花と出会っていた。

ルシールら「しらがね」幹部達の真の狙いは、自分達が注目を引き付け、次の午前零時に特殊ミサイルの雨を降らして同地を消滅させるというものであったが、「真夜中のサーカス」のテント内部での死闘の最中、ルシールらの狙いを看破した自動人形達は、足止め予定であった周囲の「しろがね」約3万人を全滅させる。もはや自分達がフランシーヌ人形を壊すこと以外に道はない「しろがね」らは、フェイスレスの犠牲を出しつつ、同士討ちさせようとする自動人形らの策略をあえて鳴海が潰す活躍を行うことで、フランシーヌ人形と「最古の四人」が待つ最奥へとたどり着く。しかし、鳴海はこれまでの激闘で倒れ、他の仲間達も強敵「最古の四人」に苦戦する中、ルシールはジョージらが届けた切り札・アンジェリーナ人形の停止命令で、彼らの動きを封じ逆転の目が出始める。自動人形側も命令効果の薄い大量の低級人形で時間稼ぎを行い、最後の死闘が始まる。

深夜12時が近づく中、味方達の犠牲の上に甦った鳴海は、残りの「最古の四人」パンタローネとアルレッキーノを容易く壊し、ついにフランシーヌ人形の前に立つ。しかし、彼女から明かされたのは、自分が本物のフランシーヌ人形に作られた偽物であることであり、ゾナハ病を止める方法はわからないと言う。深夜12時に降り注ぐミサイル攻撃から、またもや犠牲を払って脱出した鳴海は、多くの仲間を失い、しかし何も解決できなかったことに深い絶望に陥る。

サーカス編2(~「最終幕」)

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(22-29巻)

勝としろがねは、自分達が会う前の出自について明かし合う。勝は実は3年前まで貧しい母子家庭の生まれで母が死んだところ、実父と名乗る才賀貞義に拾われたのだという。勝は父・貞義は顔を思い出せないほどという一方、祖父・正ニとの思い出は大きかった。一方、しろがねは、本名をエレオノールと言い、自動人形と戦う人形破壊者「しろがね」について話す。既に90年を生きており、物心ついた時にはギイを先生として世界各地を放浪して、その後、「しろがね」の本拠地キュベロンで研鑽を積んだという。そしてある日、正ニと名乗る日本人が現れ、将来、勝という子供を守るよう頼まれたと言い、話を聞いた勝は、自分が何か大きな作為の中にいるのを感じ取る(幕間~「対話」)。

やがて勝は、自分の正体がサーカス団にバレたことをきっかけに、ギイの言葉を元に自分のルーツに迫ろうとする。独りで軽井沢の別荘跡にやってきた勝は、そこで貞義の真の目的が勝に自らの記憶・人格・知識を植え付ける(転送<ダウンロード>する)ことで自分のコピー体とすることだったと知る。貞義の人格はまだ覚醒していないだけと言う指摘に動揺する勝は、今度は正ニに大恩があるという黒賀村の人形使い達に襲われ、黒賀村へと連れて行かれる。実は黒賀村では死んだと思われていた正ニが下半身を失いながらも培養液の中で生きていた。正ニは、息子・貞義を異様に憎んでおり、貞義の事故死も実は正ニによるものだと言う。勝は正ニの前に連れてこられるが、やはり正ニも勝を既に貞義と決めつけており、否定する勝を嘘をついていると断定する。そして、正ニは、「生命の水」が溶けているという自身の血を勝に飲ませ、以下の自分の記憶を追体験させる。

正ニの正体は今から200年前に長崎に生まれた少年・正二郎であった。1816年、異国からやってきた医者ジャコブ・インこと白銀と出会い、正二郎は彼から医学とからくり技術ほか、広範な知識を学ぶ。一方で、正二郎は白銀に「しろがね」という日本語読みの名前を与え、自分は既に終わった者と評していた白銀に新たな生き方と、すべてを見届けるという決意を持たせる。白銀が日本を去って25年後の1842年。36歳となった正二郎は、共に永遠の命を歩む伴侶を捜していたルシールの娘アンジェリーナと運命的な出逢いをして結ばれ、正二郎は「生命の水」を飲んで不死の身体となる。そして明治に入り、正二郎こと正二とアンジェリーナは才賀機巧社を設立して表向きの成功を得るのと同時に、「しろがね」の武器である懸糸傀儡を製作しては、「しろがね」より派遣されてきた変装の達人ディーン・メーストルを仲介に海外に送る生活を歩んでいた。また、ディーンは、表向きは正二の息子・貞義として社会的地位を得て、互いにすり替わることで年齢を誤魔化していた。

そして1909年。アンジェリーナが妊娠し、喜ぶ正二の元にフランシーヌ人形が現れる。警戒する正二だったが、結局笑うことができず疲れたと言うフランシーヌ人形は自らを破壊して貰うために来たと言い、ひとまず正二は彼女の身体を人間以下の膂力にし、アンジェリーナに引き合わせる。一方、そこにはアンジェリーナの体内の「柔らかい石」を生まれてきた子供に移植するよう命令を受けてきた新人の「しろがね」ギイもいた。紆余曲折の経て、フランシーヌ人形もギイも、生まれてきた正二とアンジェリーナの娘・エレオノールの面倒を見る奇妙な生活が続く。ところがそこにフランシーヌ人形の命令が聞かない謎の自動人形達が襲撃してくる。「柔らかい石」が体内に移ったエレオノールを託されたフランシーヌ人形は、その逃走中に井戸に落ちてしまう。「柔らかい石」が反応し、井戸の水が「生命の水」となってフランシーヌ人形の身体を溶かしていく中で、最期までエレオノールを守ろうとし、そして泣く彼女をあやすために、最後の最後にフランシーヌ人形は笑うことができた。一方、アンジェリーナはギイと正二を守って死に、復讐に燃えるギイは残りの自動人形達を撃滅する。そして正二とギイは、フランシーヌとフランシーヌ人形の記憶が溶けた「生命の水」で「しろがね」となったエレオノールを発見する。娘に自分と同じ運命を背負わせたくないアンジェリーナの今際の際の願いを叶えるため、正二とギイはエレオノールの正体を隠し、一度、アンジェリーナとは無関係の「しろがね」とすることで、最終的に日本の正二の元に派遣させ、その庇護下で幸せな生活を送らせるという遠大な計画を立てる。

1982年。キュベロンで研鑽を積むエレオノールの元に正二が現れ、ルシールらに引き取る口実として「柔らかい石はいい笑顔の者に」というアンジェリーナの遺言があることと、それを探索するためにエレオノールを借り受けたいと申し出る。ところがそこで正二は、正二に変装した何者かが介在し、エレオノールに暗示をかけて人形のようにしてしまったと知る。そして正二とギイは、その犯人の正体が貞義ことディーンであると検討をつけ、彼の正体と狙いを調査し始める。そして物語開始の3年前。貞義は本性を現し、すべての黒幕であったことを正二に明かす。貞義は初恋の人に似ているアンジェリーナを自分の女にしたかったが、それが適わなかったために今度はエレオノールを狙っているというものだった。自分の人格をコピーした勝とエレオノールを強い絆で結ばせるという計画であった。黒賀村での死闘の果てに、貞義は正二を殺したと思い込み、一方、正二は村人達をゾナハ病から治すため自分の血液を与えて昏睡状態に陥り、表向き正二は死んだことになる。そして物語開始の年。高速道路上で正二は貞義に最後の戦いを挑み、正二は重傷を負うものの、濃硫酸のプールに貞義を叩き落とし、貞義は死ぬ。

現在。正二が唯一危惧していたのは転送<ダウンロード>が既に完了しており、勝は既に貞義ではないかということであった。抵抗する勝はここで白金の記憶が蘇る。実はディーンこそ、すべての元凶・白金が溶けた「生命の水」で彼のコピー体となった白金そのものであった。白金はディーンとして、フランシーヌに瓜二つであったアンジェリーナに恋をしたこともすべて、勝の告白という形で明かす。そして、正二とギイが勝を殺そうとしようとしたところ、そこに死んだと思われていたフェイスレスが現れる。フェイスレスの正体もまた貞義ことディーンこと白金であった(すなわち貞義もまだ生きていた)。フェイスレスは勝への人格転送がまだ完全ではないことを明かし、ギイを倒し、勝の身柄を奪おうとする。しかし、予想外の勝の抵抗と活躍に喜ぶフェイスレスは、勝に2年間の猶予を与え、その間エレオノールを守るというゲームをしようと言って去る。そして、培養液を破壊された正二は、殺そうとしたことを勝に謝り、エレオノールを頼んで息を引き取る。

勝はフェイスレスのゲームに勝ち抜くため「しろがね」ことエレオノールと別れて黒賀村に残り、ギイの指導下、修行することを決める。

からくりサーカス編(本編)

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(29-34巻)

勝を守る使命を失い彷徨うエレオノールは念願だった鳴海と再会するが、逆に鳴海は今もエレオノールの記憶がなく、逆にフランシーヌ人形だと決めつけ、彼女を襲う。実はサハラ砂漠の戦いの後、鳴海は「しろがね」の支援者だったフウと出逢い、彼からエレオノールの正体がフランシーヌ人形である可能性について話されていた(このフウの推測が誤りであることはサーカス編で読者には既に提示されている)。彼女の機転で、鳴海はひとまず彼女を襲うことを止め、仲町サーカスに居候することとなる。一方、勝は貞義ことディーンがかつて作った3体の懸糸傀儡を操りながら、人形操りの技術を学んでいく。居候先の人形使いの阿紫花三姉妹と平馬とは最初対立するものの、やがて打ち解けていく。そんな中、生き残りの自動人形達を束ね、改めて「真夜中のサーカス」を結成したフェイスレスは、予告通り、定期的に刺客を勝の元へと送る。勝は村での日常生活の裏で、人知れず「真夜中のサーカス」の刺客と死闘を演じる日々を過ごす。

エレオノールに敵意を見せる鳴海は、サーカス団から孤立していた。そんな折、バスジャック事件が発生し、鳴海の身を呈した活躍で周囲の認識が改まり始める。また、鳴海も、その際にエレオノールが自分を犠牲にしようとしたことで、彼女に対する認識をやや改め始め、ギイに助けられてから起こった出来事について話す。やがて、サーカス団は夏祭りに合わせ黒賀村で興行することが決まり、エレオノールやサーカス団の面々と、再会できたことを勝は喜ぶ。一方、部下の度重なる敗北に業を煮やしたフェイスレスは、「最古の四人」を上回る強敵シルベストリを召還し、祭の当日に勝へぶつける。そして勝はシルベストリを撃破するが間もなく、フェイスレスは世界中にゾナハ病をばらまく。

機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)編

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(34-43巻)

黒賀村の仲間たちもゾナハ病にやられ怒りに燃える勝の元に、フェイスレスはエレオノールを奪うと宣言し、村へとやってくる。勝とエレオノールは勇戦するも、フェイスレスが新たに作った自動人形「最後の四人」は強く、また仲町サーカスの仲間達の命を助けるために、エレオノールは自分から囚われの身となることを選択する。

一方、鳴海やギイらは、フウに集められ、レイ疫病研究所でゾナハ病を退けるマシン「ハリー」が完成したと教えられ、それを自動人形らの襲撃から守るために再びアメリカの地を踏む。鳴海らの活躍で自動人形たちが苦戦する中、フェイスレスはパンタローネを増援として送る。ところが、パンタローネら「最古の四人」はエレオノールを、新たなフランシーヌ人形として忠誠を誓っており、彼女の命令である「人間を傷つけてはならない」を守ろうとする。そして、ジョージを始め多くの犠牲を出しながらも、鳴海らは自動人形の襲撃から「ハリー」と患者の子供たちを守り通す。

フェイスレスの行方を追う勝は、彼らが本拠地としているモン・サン・ミッシェルへとたどり着く。勝は、自動人形らに捕まってしまうも、ゲームの立会人を務めてきた「最古の四人」コロンビーヌの手助けを受けながら、ナイアら裏切り者の「しろがね」である「機械人間O」と戦う。フェイスレスは、この戦いの中で計画を完遂することを決め、勝に自分の人格をコピーし、エレオノールの前で自分とフェイスレスになった勝との戦いを文字通り演じて、勝となった自分とエレオノールの2人きりで宇宙ステーションで生きようと目論む。しかし、勝は自分の人格を失っておらずエレオノールを助け出し、フェイスレスが一人で宇宙へと送られてしまう。

念願だった計画が破綻し、フェイスレスは自暴自棄となり、ゾナハ病を活性化しあと2週間で人類を殲滅すると宇宙ステーションから予告する。ローエンシュタイン大公国に集まった鳴海やエレオノールらは、フウ支援の元でロシアから発射されるスペースシャトルに乗り込む計画を立てる。しかし、そのためにはシャトルに組み込む「ハリー」の機能を流用した装置を列車で運ぶ必要があった。自動人形らの最後の襲撃の中、ギイが足止めとして犠牲となりながら列車は発車する。尚も追撃してくる「最後の四人」に対し、鳴海の他、パンタローネとアルレッキーノや、仲町サーカスの面々、そして追いついた勝が応戦する。なんとか列車は発射場に辿り着くが、パンタローネを倒したハーレクインは、惚れたエレオノールを捕まえ結婚しようとしていた。鳴海は、既にわだかまりが溶け惚れた女エレオノールを、その「ゾナハ病を治す」という使命感から見捨てシャトルに乗り込むつもりであったが、そこに勝が現れ、自分がシャトルに乗り込むこと、そしてエレオノールを助けに行けと言う。そして鳴海は、教会でハーレクインを討ち倒し、エレオノールと結ばれる。

一方、鳴海に代わってシャトルに乗り込んだ勝は、フェイスレスが待ち構える宇宙ステーション「アルファー」に突入する。そして「ゾナハ病の治し方」を賭けて勝とフェイスレスの最終決戦が始まり、圧倒的にフェイスレスが有利な中、彼は勝になぜ最愛の人を恋敵の鳴海に託したのかと問う。しかし、その答えは、かつて自分の行為を正当化するためにフェイスレスこと白金自身が述べた言葉であり、動揺したフェイスレスは今度は一方的な身勝手な愛を説くも勝に否定される。それを嘲笑うフェイスレスであったが、そこに他ならぬフェイスレスに愛してほしく身勝手な行動を取るディアマンティーナが現れる。そして彼女の言動を通して、フェイスレスはようやく自分の身勝手を自覚する。

ディアマンティーナの爆弾によって「アルファー」が墜落を始める中、その墜落地点が偶然にも黒賀村と知り、勝は回避しようともがく。最初は手助けするつもりはなかったフェイスレスであったが、悪戦苦闘する勝を見て、そこに兄・白銀が弟をどう見ていたか思い至り、勝を弟と見立て兄としてフェイスレスはこれを助ける。そしてフェイスレスは、ゾナハ病の治し方が「フランシーヌの子守唄」、すなわち「エレオノールの子守唄」なら治ると明かし世界は救われる。勝を脱出させ、「アルファー」に残ったフェイスレスは、「僕が間違っていた」と最期に認め、大気圏に突入した「アルファー」と共に消滅する。

エピローグ

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騒動から6年後。仲町サーカスの団員ほか、生き残った者たちは平穏な生活を送っていた。鳴海とエレオノールは、普通のサーカスでは行けない危険地帯にいる子供たちを笑わせるため、2人で世界各地を回る。そして勝は、サーカスの芸人として一人旅立ち、遠い異国で、あの時の鳴海の様に、きぐるみを着ながら、大人に追われる子供たちを助けるシーンで物語は終わる。