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利用者:Fcp~jawiki/複数投票可の投票方式の利点

Wikipedia‐ノート:メインページの改訂#予選投票通過数で、投票方式についてちょっと面白い話題が出たので、ここでは候補の中から任意の個数に投票する「複数投票可」 (正確には「任意個投票可」と言った方が良いかもしれませんが) の投票方式の利点が何かということを書いておきます。

利点

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複数投票可の投票方式の最大の利点とは、各候補の得票数が候補の増減によって変化しないことです。この性質によって、「票が割れる」という現象が起きないこともわかります。

票が割れる」というのは、候補が増えることによって本来選ばれるはずだった候補が落ち、代わりに選ばれるはずのなかった候補が選ばれてしまう現象です (この現象が良いことか悪いことかはここでは議論しません。あくまでも、複数投票可であれば票が割れることがないことを説明するだけです)。

例えば、 100 人の人がいて、このうち 60 人の集団 A は同一の好みを持ち、 40 人の集団 B も同一の好みを持つとします。候補 X と Y があるとき、 A は X を好み Y を嫌い、 B は Y を好み X を嫌うとします。このとき、一人一票制で X と Y から一つを選ぶ投票を行ったら X 60 票、 Y 40 票で X が選ばれます。ところが、候補 X とほとんど同じ候補 X' が現れると、最悪の場合、集団 A の票が X と X' に半々に割れて、 X 30 票、 X' 30 票、 Y 40 票で Y が選ばれてしまいます。候補 X' が増えたらそれまで選ばれなかったはずの Y が選ばれるというのは、歪んだ現象であり、これを「票が割れる」と呼びます。

(ここで重要な仮定は、有権者が他の有権者の行動を知らないということです。誰かが票を取りまとめたりせず、全員、自分の好みだけに基づいて票を投じると仮定しています。有権者同士が連絡を取り合うことができれば、集団 A の人は「X と X' のどちらでも良い人は X に投票してほしい」と呼びかけることによって X を勝たせることができます。)

複数投票可であれば、 X' が増えてもこの現象は起きません。 A は全員 X と X' に投票し、 B は全員 Y に投票するので、 X 60 票、 X' 60 票、 Y 40 票であり、それまで選ばれなかったはずの Y が選ばれることはありません。候補 X' が現れても X の得票数も Y の得票数も変化しないのだから、当然です。これを有効投票総数 (各候補の得票数の総和 = 60+60+40 = 160 票) に対する割合で見ると X 37.5%、 X' 37.5%、 Y 25% で X の率が減少していると思うかもしれませんが、それは分母である有効投票総数が増えたからであって、すべての候補に同様に効くので投票結果には影響しないのです。

複数投票可のとき、有効投票総数に対する割合で決定を変えることがあまりないのも、このためです。複数投票可の大きな利点は、各候補の得票数が無関係な候補の増減によって変化しないこと、この一点です。有効投票総数に対する得票数の割合を使ってしまうと、この値は候補の増減によって変化してしまうので、複数投票可の大きな利点を失うことになります。

本当に?

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上の単純な例では、候補 X' が増えても X や Y の得票数は変化しませんでした。でも、これは本当にいつでも成り立つのでしょうか。

じつは成り立ちません。上では候補 X に似た候補 X' が増えるという場合を考えましたが、今度は X' の代わりに、集団 A の人がものすごく嫌悪する候補 Z が増えた場合を考えます。

集団 A に属する人は、 X を Y や Z より好みますが、 Z が選ばれるくらいなら X と Y の差など無視しても良いと思うくらい Z を強烈に嫌っているとします。一方、集団 B に属する人は、 Y を X や Z より好むだけでなく、 X と Z を同じくらい嫌っているとします。このとき、 B は Y にだけ投票するのは当然として、 A はどう投票するでしょうか。 B も Z を嫌っていることを A が知っていればともかく、上で書いた有権者は他の有権者の行動を知らないという仮定の下では、 A は最悪の事態である Z が選ばれるという結末を避けるため、 X と Y の両方に投票することになります。すると、結果は X 60 票、 Y 100 票、 Z 0 票で、 Y が選ばれます。候補 Z が登場することによって、 Y の得票数が増えているのです!

どうしてこうなるのか? 勉強不足でよくわかりません、すみません。でも、集団 A の人が「私は X を Y より好むけれど、 Z が選ばれるくらいなら Y でも許容する」という微妙なニュアンスを投票で表現できず、「X と Y を Z より好む」ということしか表明できないことが直接の原因です。ただ、これは前の節で書いた説明とは少し次元が異なっており、複数投票可であることの本質的な弊害ではないと感じます (これをちゃんと説明できないのが、僕がこのあたりをよく理解していない証拠です)。