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概要
[編集]スービーズ館Hôtel de Soubiseは18世紀まで貴族たちの邸宅地として栄えていたマレ地区にある邸館。古くはクリソン館、ギーズ館ともよばれた。フランス革命時に政府が接収した。ロアン館とともに形成する建築群は現在は国立古文書館(Archives nationales)および歴史博物館として機能している。
中世(14世紀):半要塞化城館
[編集]フランス王シャルル5世のパリ市域拡大にともない、フランス元帥オリヴィエ・ド・クリソンは、フィリップ2世尊厳王の城壁外に地所を所有した。そして1371年、ド・クリソンはその所有地内に城館を建てる計画を企図する。1375年に完成したこの城館は、武装盗賊の襲撃にも対応可能な、半要塞化した建造物だった。14世紀に造られた部分は現在では「文書館通り」に面した小塔に確認することができる。
ルネサンス期(16世紀):ギーズ家による改修
[編集]1553年、強力な貴族の一族であるギーズ家がこの城館を購入した。同家は館の本質的な改築を行った。礼拝堂は公爵フランソワ・ド・ギーズによって作り直された。この改修にはフランソワ1世に招かれ第1期フォンテーヌブロー派の中核となり活動した、ボローニャ出身の画家・建築家のフランチェスコ・プリマティッチョ(1504‐70)が参画した。
啓蒙期(18世紀):スービーズ公子の改修
[編集]ロアン家による邸館の購入
[編集]17世紀末、ギーズ公爵家の血脈が断絶した。これにより館は売りにだされ、1700年にスービーズ公子フランソワ・ド・ロアン(1630-1712)が買いとった。公子は住み心地の良くない城館の改修に取り掛かった。再建計画には公子の息子でストラスブール管轄教区司教を務めていたアルマン=ガストンが助言を行った。
ドラメールの計画:巨大アパルトマンの連続による内部構成
[編集]公子は当時どちらかといえば無名だった建築家ピエール=アレクシス・ドラメールを起用した。だが工事の進捗の遅れとライヴァルたちの策謀が原因となり、ドラメールはスービーズ館の建築計画から排除されることとなった。ドラメールの排除にはフランソワの息子エルキュール=メリアデック・ド・ロアンがかかわっていた。ドラメールは軸上に展開される儀礼的で巨大なアパルトマンの連続体による建築内部空間の構成を企図していた。だがエルキュール=メリアデックはこのドラメールの計画は前世紀的で旧態依然としており、居住にあたっては不都合を生じると考えていた。
ボフランの計画
[編集]ドラメールの後継者はアルドゥアン・マンサールの弟子のひとり、『建築書』(1745)の著者であるガブリエル=ジェルマン・ボフランだった。「摂政期」からルイ15世治下までの間に活躍したボフランが立案した計画に従い装飾された。ルイ14世治下に完成したこの建物のために1735年から40年にかけてボフランが手がけた内部装飾は、この建築家の数少ない現存作品である。
造形上の特徴
[編集]大階段 (Grand Escalier):古典主義的建築要素の使用
[編集]地上階の玄関ホールにある大階段は左右対称に構築されている。この部分の装飾に関しては古典主義建築の造形要素が用いられている。まず大階段左右の円柱はコンポジット式オーダーの柱頭を頂いている。そして上階の正面入口両脇には付柱、破風を備えている。いっぽうで迫上天井には10点の歴史画が設置されている。
邸館内部の装飾:古典主義的造形言語からの乖離
[編集]一部の建築内部の造形には、以下の新しい特徴がみられる。
- 従来企画・建造されてきた古典主義建築の造形言語として多用された、柱頭上部の軒蛇腹および飾柱の消失。
- 壁面と天井の間に存在していた明確に視認可能な境界要素が消失し、両者の移行面は曲面を形成しつつ連続。
- 窓間・壁面・扉面を飾る木彫パネル上などにおける、金色で覆われた植物モチーフを中心とした精巧な繰形装飾の使用。
参考文献
[編集]- Andrew Ayers, The Architecture of Paris: An Architectural Guide, 2003.
- Archives nationales, Hôtel de Soubise et grands dépôts, livret de visite, mai 2012, 35 p.
- Claire Béchu (dir.), Les Archives nationales, des lieux pour l'histoire de France : bicentenaire d'une installation (1808-2008), Paris, Somogy & Archives nationales, 2008, 384 p. ISBN 978-2-7572-0187-9
- Philippe Béchu & Christian Taillard, Les Hôtels de Soubise et de Rohan, Paris, Somogy, 2004, 488 p. ISBN 2-85056-796-5
- Jean-Pierre Babelon, Du palais de Soubise au CARAN : le siège des Archives nationales, Paris, Archives nationales, 1988, 47 p. ISBN 2-86000-139-5
- Jean-Pierre Babelon, Musée de l'Histoire de France, Histoire et description des bâtiments des Archives nationales, Paris, Imprimerie nationale, 1969, 101 p.