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利用者:I.hidekazu/束論

束論(そくろん、: lattice theory)とは、結び ∨ と交わり ∧ を持つ代数に関する理論を言う。半順序集合の理論の一種として扱われることが多い。束論は、ジョージ・ブールによるブール代数に始まる。

概要[編集]

定義[編集]

半順序を用いた定義[編集]

半順序集合を <P ; ≦> とする。任意の2元 a, b ∈ P について、その最小上界 a ∨ bと最大下界 a ∧ b が存在するとき、代数 <P ; ≦, ∨, ∧> を束(lattice)と呼ぶ。

普遍代数型[編集]

束に付与する条件[編集]

有界性(bounded)[編集]

完備性(complete)[編集]

分配性(distributive)[編集]

原子的(atomic)[編集]

束のイデアル論(ideal theory of lattice)[編集]

定義[編集]

束のイデアル(lattice of ideal)

束 L(<L ; ∨, ∧>) の L の部分集合 C が

a, b ∈ C のとき a ∨ b ∈ C
k ∈ L, a ∈ C のとき k ∧ a ∈ C

を満たすとき、C を束 L のイデアル(ideal)と呼ぶ[1]。明らかにイデアルは束となる[2]

主イデアル(principal ideal)

束 L の任意の元 a ∈ L に対して、

(a) (= aL) = { x ∈ L | x ≦ a }

はイデアルを成す[3]。このとき、このイデアル (a)(または aL と表す)を a から生成される主イデアル(principal ideal)と呼ぶ。定義から任意の c ∈ (a) に対して、c ≦ a が成り立つ。

イデアル代数(algebra of ideal)[編集]

束 L のすべてのイデアルの集合を I とする。

I = { C ⊆ L | C は L のイデアル }

このとき、I に対して以下の演算が定義できる。

交わり

C, D ∈ I のとき、C ∩ D はイデアル

結び

脚注[編集]

  1. ^ なお、束のイデアルについて以下が成り立つ。
    a ≦ b かつ b ∈ C のとき、a ∈ C
    (証明)
    b ∈ C であるのでイデアルの定義から任意の a ∈ L に対して a ∧ b ∈ C
    交わり演算の半順序模倣性より a ≦ b ↔ a ∧ b = a
    すなわち、a ≦ b である a ∈ L とは a ∧ b = a を満たす a に他ならない。
    したがって、a ∧ b ∈ C かつ a = a ∧ b から、a ∈ C
  2. ^ 結びについては定義より明らか。交わりについて、C ⊆ L であることから、a, b ∈ C のとき a ∧ b ∈ C
  3. ^ 束 L が最大元 1 を持つのであれば、
    (a) = { a ∧ x | x ∈ L }
    と定義しても良い。1 を持たない場合、イデアル (a) は要素として a を持たないことになってしまうため、半順序関係で定義している。

参考文献[編集]

  • ガーレット・バーコフ, ソンダース・マクレーン『現代代数学概論』(改訂第3版)白水社、1967年。 
  • 前田 周一郎『束論と量子論理』槙書店、1980年。 
  • Garrett Birkhoff (1979). Lattice Theory (3rd ed.). American Mathematical Society 
  • ジョン・L.ケリー 著、児玉 之宏(訳) 編『位相空間論』吉岡書店、1979年。 
  • 山崎 進『計算論理に基づく推論ソフトウェア論』コロナ社、2000年。 
  • George Grätzer (1979). Universal Algebra (2nd ed.) 
  • George Grätzer (2003). General Lattice Theory (2nd ed.) 
  • Dana Scott (1976), Data types as lattices, http://www.cs.ox.ac.uk/files/3287/PRG05.pdf 
  • Bodo Pareigis (1970). Categories and functors. New York : Academic Press