利用者:Kenji-nakaji
--Kenji-nakaji 2008年6月22日 (日) 10:25 (UTC)Dr.中島健次 [1]特許pHスティック 「ストラバイト」は缶詰業界の専門用語だった。昔、サケ缶やカニ缶の中にガラス状の粒々が出てきて、口の中でジャリジャリして舌ざわりが悪い上、口内粘膜を傷つけて出血することがあったという。 胃液に溶けるので食品衛生法の異物には該当しなかったものの、商品価値を損なう異物として嫌われたらしい。 この粒状の異物は、ヨーロッパの缶詰製造業者にstruviteと呼ばれていました。一説によると、von STRUVITE(シュツルフィテ伯爵?)の経営する缶詰工場で初めて発見されたからだと言われている。 異物の正体は、水晶と同じ結晶です。缶詰の中がアルカリ性になると、サケの骨やカニの身から溶け出した燐酸とアンモニウムとマグネシウムとが結合し、析出(結晶化)してくる。 初めは顕微鏡でなければ見えない微小な結晶だが、次第に口の中でジャリジャリする大きなガラス状の結晶になり、やがて結晶の周りにカルシウムなどがこびり付いて結石になる。今では、缶詰を製造するとき、缶詰の中にクエン酸やL-グルタミン酸を添加したり、酸性の特殊な紙を敷いたりして、缶詰内のpHを弱酸性に保つ方法が普及している。 こうすれば魚骨やカニ肉から溶出した燐酸塩類などが結合して結晶化することはなく、ストラバイトは出てこない。 参考のため、水産系大学の学生必携「水産百科事典」から引用しておく。
ストラバイト〔struvite〕 魚貝類かん詰には白色または無色透明な無機質の結晶を生成することがある。その大きさは微視的なものから、長さ1cmあるいはそれ以上に及ぶものもあり、その数も1個から数十個、ときとして無数に生成することがある。このような析出物をストラバイトと称する。その組成はMgNH4PO4・6H2Oで、斜方晶系に属し、比重1.72、100℃で融解することなく分解する。かん詰にみられるものは必ずしも単結晶ではなく、外形も針状、柱状、粒状種々あり、明確な結晶面を認めがたいものもある。純粋な前記組成のほかにある種のアミノ酸、カルシウムを包含するものもある。ストラバイトは水にはきわめて難溶であるが、胃液には溶解する。生理的に無害であるが、かん詰の商品価値を害する。ストラバイト成分は魚貝類の肉質そのものに由来するものであるが、甲殻類以外は新鮮な原料を使用したかん詰にはあまり析出しない。L-グルタミン酸によって生成を防止することができる。(「水産百科事典」海文堂出版、昭和47年、p281から転載)
尿のストラバイトも死語になる。ストラバイトというコトバは、著者が獣医学生だった40数年前の教科書に載っていまない。昭和54年(1979)に時事通信社が発行した大冊「ペットの医学」にも、載っていない。 それがいつの頃からか、獣医師会雑誌などに美麗なカラー広告が掲載されるようになった。犬や猫の「ストルバイト」に有効という輸入○○の宣伝であった。輸入会社の社員が○○に添付された英文の説明書を日本語に翻訳するとき、struviteを「ストルバイト」と読んだのではなかろうか。広告の威力は甚大である。犬・猫を襲う「ストルバイト」なる病名が獣医業界に普及し、定着した。僅か10数年前か、せいぜい20年くらい前のことだと思われる。 ちょうどその頃から、人形やロボットを扱うような感覚で、大型犬や中型犬を室内で寝かせたり、猫を室内に閉じ込めたりする飼い主さんが増えてきた。ペット可の集合住宅も増えてきた。昔は犬を抱いてフトンで寝るなんて変態、と疑われかねなかったのに…。世の中、変われば変わるものである。
struviteの発音記号を確かめようと英英辞典などを調べてみたが、どの本にも載っていない。医学辞典にも載っていなかった。何故なんだろう? 理由は、缶詰業界の特殊な専門用語であった上に、とっくの昔に使われなくなった死語だからだと思われる。 魚介類の缶詰の中のpH環境を弱酸性にする。たったこれだけの簡単な方法で、缶詰の中にストラバイトが出現することを確実に防止できるようになった。お蔭で、今や口の中でジャリジャリするサケ缶やカニ缶は昔話になっている。 缶詰業界で「ストラバイト」は死語になったた。 さあ次は、あなたの番である! 犬や猫たちのストラバイトを死語にできるのは、獣医師でなく、飼い主さんたちである! なるべく毎日一度、せめて二日に一度でも、愛犬・愛猫が弱酸性~酸性の尿を出してくれるように。 庭で寝ている普通の犬のように。外出自由の普通の猫のように。それは毎日の運動励行によって確実に実現できる。 その結果、やがて尿のストラバイトなんて死語になってしまいます。 だから、struviteの読み方は何だって構わない。ストルバイトでも、ストロバイトでも、スツルバイトでも…。 どうせみんな過去のものとなり、もうじき消えてなくなるであろう。