コンテンツにスキップ

利用者:Kovayashi/Ian Ridpath

OH/IR星[1][2][注 1](おーえいちあいあーるせい、: OH/IR star, OH-IR source[3])は、赤外線で明るく、水酸基ラジカルのメーザー(OHメーザー)を強力に放射している赤色巨星である。恒星の進化においては、太陽と同じか少し重い質量で生まれた恒星がその進化の終盤に迎える「漸近巨星分枝 (AGB)」と呼ばれる段階の終わりに近い状態にあるとされる。

特徴[編集]

誕生したときの質量(初期質量)が太陽の0.8倍-8倍程度の重さの星は、主系列星として長く輝いた後、その生涯の終盤に「漸近巨星分枝 (AGB)」と呼ばれる段階を迎える[4]。この段階にある星は、半径が太陽の数百倍にまで膨れ上がり、外部からは赤色巨星として、またその多くが星全体が膨張と縮小を繰り返して変光する脈動変光星として観測される[2]

脈動するAGB星は、その膨張のピークを迎えるたびに外層を外部に放出しており、

AGB星

自身が放出したガスから形成されたダストが周囲を厚く取り巻いているため、星からの可視光はダストに吸収され、ダストから赤外線 (IR) として放出されることで輝いている[2][5]

[6][7]

100日から3000日程度の周期で変光し、

太陽質量 (M) の0.8倍-8倍程度の質量を持つ中小質量星が恒星進化の末期を迎えた「漸近巨星分枝星 (AGB star)」で、漸近巨星分枝の中でも惑星状星雲となる直前の最終段階にあると考えられている[7]。星が脈動するたびに放出するガスと塵に周囲を厚く覆われている。そのため、中心星からの電磁波はほとんど塵が吸収してしまい、赤外線として再放出される[5]


無変光OH/IR星[編集]

OH/IR星の中には変光が弱い、あるいは変光が見られないものもあり、これらは「無変光OH/IR星[2] (: nonvariable OH/IR Star[8])」と呼ばれる。無変光OH/IR星は、まさに今AGBの段階を終えて、原始惑星状星雲を経て惑星状星雲へと移行する段階にあるものと考えられている[2][8]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「赤外線星[1]」と呼ばれることもある。

出典[編集]

  1. ^ a b 斎尾英行 2010, pp. 178, 187.
  2. ^ a b c d e 小野里宏樹「中小質量星の終盤の進化の謎」『宇宙NOW』第365巻、兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 天文科学センター、2020年8月、8頁、ISSN 0917-6918 
  3. ^ Ridpath, Ian (2018). “OH-IR source”. A Dictionary of Astronomy. Oxford University Press. p. 695. ISBN 9780192542618 
  4. ^ Felli, Derek Sean. “The Morphology and Uniformity of Circumstellar OH/H2O Masers around OH/IR Stars”. BYU ScholarsArchive (Brigham Young University). Bibcode2017PhDT.......130F. hdl:1877/etd9674. https://scholarsarchive.byu.edu/etd/6633. 
  5. ^ a b 斎尾英行 2010, p. 178.
  6. ^ te Lintel Hekkert, P. et al. (1991). “1612 MHz OH survey of IRAS point sources. I - Observations made at Dwingeloo, Effelsberg and Parkes”. Astronomy and Astrophysics Supplement Series 90: 327-353. Bibcode1991A&AS...90..327T. 
  7. ^ a b Etoka, Sandra; Diamond, Phil (22 November 2007). OH26.5+0.6: insight into the circumstellar structure of an extreme OH/IR star. 8th European VLBI Network Symposium, September 26-29, 2006. Trieste, Italy: Sissa Medialab. doi:10.22323/1.036.0046
  8. ^ a b Kamizuka, Takafumi et al. (2020-07-01). “Long-term Near-infrared Brightening of Nonvariable OH/IR Stars”. The Astrophysical Journal (American Astronomical Society) 897 (1): 42. arXiv:2008.06897. Bibcode2020ApJ...897...42K. doi:10.3847/1538-4357/ab9829. ISSN 1538-4357. 

参考文献[編集]