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利用者:LUE=42/sandbox

利用者:LUE=42/sandbox/1

前提知識ー同種粒子

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2つの相異なる粒子1、2があり、粒子1、…、nの取りうる状態ベクトル全体のなす空間をそれぞれとすると、粒子1、2の両方が存在する合成系の状態ベクトルのなす空間はテンソル積

によって表現できる。

しかし粒子1、2が同種の粒子(例えばいずれも電子)である場合、である。

この場合量子力学では2つの粒子は区別できず、それゆえ状態ベクトル

と、粒子を入れ替えた

は同一の状態をさす事が知られている。

これらが同一の状態を指すという事は、位相の差を除いて一致するということなので、

が何らかの位相成分cに対して成立する。同様の理由で

でなければならないが、これら2つの式が成立するには

すなわち

でなければならない。c=1である粒子をボゾンc=-1である粒子をフェルミオンという。

フェルミオンの定義式

においてψ1ψ2が同一の量子状態ψ1=ψ2=ψであったとすると、

より

である。すなわち、2つの同種のフェルミオンが同一の量子状態ψを取る事はない。この事実をパウリの排他原理という。

量子力学に従う全ての粒子は同種である場合区別できず、ボゾンであるかフェルミオンであるかのいずれかであるが、近似的には同種である場合に区別できる粒子を考えた方が良い場合もある。たとえばフェルミオンの分子数が非常に大きいときは量子状態の数も多いので、パウリの排他原理を課すまでもなく、2つの粒子が同一の量子状態を取る事はほとんどなく、同種粒子が区別できるとしても問題ない。

よって以下ではボゾン、フェルミオン、同種でも区別できる粒子の3種類の粒子を考えることにする。

統計力学では粒子がどのような確率で分布するのかが重要であるが、粒子が以上の3種類の粒子のうちいずれであるのかによって粒子が従う確率分布が異なる為、これら3つのケースを区別して扱う必要がある。

粒子がボゾンである場合の系の統計的振る舞いをボーズ・アインシュタイン統計もしくは対称統計(symmetric statics)といい、この統計に従う系をS系というK2:位置5102

また粒子がフェルミオンである場合の系の統計的振る舞いをフェルミ・ディラック統計もしくは反対称統計(asymmetric statics)といい、この統計に従う系をA系というK2:位置5102

同様に、粒子が同種であっても区別できる場合の系の統計的振る舞いをマクスウェル・ボルツマン統計もしくは完全統計(complete statics)といい、この統計に従う系をC系というK2:位置5102

S系やA系の粒子を扱う為には、対称化作用素

や反対称化作用素

を定義すると便利である。より一般にN個のテンソル積の空間

の上で

となるよう定義できる。ここでN次の対称群であり、置換の符号である。

明らかにS系、A系の粒子の状態ベクトルはそれぞれ、これらの関数の値域に属する。状態ベクトルは必ず単位ベクトルであったので、

の単位ベクトル

と書くことにすると、次が成立する:

  • C系の粒子の状態ベクトルはに属する
  • S系の粒子の状態ベクトルはに属する
  • A系の粒子の状態ベクトルはに属する

ミクロカノニカル分布

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XをC、S、Aのいずれかとし、N個の粒子からなる外界から孤立したX系を考え、この系の状態ベクトルのなす空間をとする。さらにこの系のハミルトニアンとし、Eの固有値とし、Eの固有空間を

に属するEの固有ベクトル

とする。さらにXがC、S、Aのいずれであるかに応じてとする。

前節で述べたようにX系状態ベクトルは必ず球面に属している。したがってこの系でエネルギー固有値Eが観測されたとすれば、状態ベクトルはEの固有空間の共通部分に属している事になる。

我々は系の状態に関してこれ以外に知識を持っていないのだから、状態ベクトルが上一様ランダムに分布していると仮定するのは自然である(等重率の原理)。

そこで、上の一様分布ミクロカノニカル分布という。

上定義された任意の実数値関数

フェーズ関数(phase function)といいK2:位置2138、状態ベクトルをミクロカノニカル分布に従って選んだときのフェーズ関数の値の期待値

を、エネルギー固有値Eにおけるfミクロカノニカル平均というK2:位置2139

統計力学では基本的な役割を果たすフェーズ関数として、オブザーバブルの観測値の期待値

が存在する。は状態ベクトルを固定した際における観測値の期待値であるが、をミクロカノニカル分布に従ってランダムに選んだ際のの平均(ミクロカノニカル平均)

を考える事ができる。を、エネルギー固有値Eにおけるオブザーバブルミクロカノニカル平均といい、

と表記する。

単位ベクトルの集合の貼るベクトル空間の次元Mは粒子の個数Nとエネルギー固有値Eによって定まる。そこで次元Mの事を

と表記し、を系の構造関数(structure function)というK2:位置2485、2572、3511。(ここで暗にが有限次元だと仮定しており、これはエネルギー固有値Eの重複度が有限だと仮定しているという事である)。

さらにからベクトル空間の基底をとする。このとき次が成立するK2:位置2178、2326、2598

読者が密度行列に関して知っているなら、以上の事実から

という混合状態を定義する事が自然である事が分かるであろう。この混合状態をミクロカノニカル状態という。

理想気体におけるミクロカノニカル分布

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理想気体とは系に閉じ込められている粒子間の相互作用が無視できるほど小さい気体のことであるK2:位置270。相互作用が無視できる事から、系のハミルトニアンは

と粒子毎のハミルトニアンの和として表現できる[注 1]。よっての固有値に対応する固有関数をとすると、

の固有値

の固有ベクトルである。実は逆も成立し、の固有空間の元は、各の固有関数のテンソル積で貼られるK2:位置2415

一般にはが重複を含む場合もある。そこでから重複を除いた上で番号を付け替えた列を作り、の重複度をとすると、

  …(K)

が成立しなければならない。

以上の事実を利用すると、X=C、S、Aに対し、X系における理想気体の場合構造関数を具体的に書き表す事ができるK2:位置3527

漸近的には

であるK2:位置4117。 ここで

でありK2:位置3777

でありK2:位置3779


であるK2:位置4397

密度行列

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中心極限定理

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一次元

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X1、…、Xnを独立同一分布に従う整数値確率変数とし、i1,...,nのいずれかとし、

とし、

を仮定する。

このとき、期待値と分散

は有限値である。さらに(下記の式中に現れるknとは独立な)定数m0m1が存在し

が成立する。

注釈

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  1. ^ を略記したもの。以下同様

参考文献

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  • 量子力学(数学的定式化)
    • [新井97] 新井朝雄 (1997/1/25). ヒルベルト空間と量子力学. 共立講座21正規の数学16. 共立出版 
    • [H13] Brian C.Hall (2013/7/1). Quantum Theory for Mathematicians. Graduate Texts in Mathematics 267. Springer 
  • 統計力学(物理学的側面)
    • [田崎1]田崎晴明『統計力学Ⅰ』培風館〈新物理学シリーズ〉、2008年。ISBN 978-4-563-02437-6 
    • [田崎2]田崎晴明『統計力学Ⅱ』培風館〈新物理学シリーズ〉、2008年。ISBN 978-4-563-02438-3 
    • [C1] H. B. Callen 著、小田垣 孝 訳『熱力学および統計物理入門(上)』吉岡書店。ISBN 978-4-8427-0272-8 
    • [C2] H. B. Callen 著、小田垣 孝 訳『熱力学および統計物理入門(下)』吉岡書店。ISBN 978-4-8427-0273-5 
  • 統計力学(数学的定式化)
    • [新井08] 新井朝雄 (2008/7/10). 量子統計力学の数理. 共立出版. ISBN 978-4320018655 
    • [K1]A. Ya. Khinchin (1949/6/1), Mathematical Foundations of Statistical Mechanics (Kindle edition), Dover Books on Mathematics 
    • [K2]A. Ya. Khinchin (2011/11/2), Mathematical Foundations of Quantum Statistics (Kindle edition), Dover Books on Mathematics, ISBN 978-0486601472