利用者:Lonicera/ある寓話

昔むかし、あるところにひとつの遊園地がありました。名前は…何でもいいや。仮に「浦安デゼニリゾート」とでもしましょうか。そこでは、来客の中からボランティアで清掃係を選び出して決めており、清掃係以外の人間は一切ゴミを掃除することができないという規則になっていました。そんなばかな、とおっしゃらないで下さい。そういう方針なのですからしょうがありません。

さて、来客数の割にそれほど数の多くない清掃係は、それぞれ自分のペースでゴミを片付けていました。しかし、掃除する量に比して捨てられるゴミの量が日に日に上回ってきており、園内のあちこちにゴミが散乱し始めています。物陰には長期に亘って隠れたままのゴミも山ほどあり、それを探し出して掃除するのも一苦労です。

ある日のことです。通りすがりの来客がゴミを捨て、それを掃除係が拾おうとした瞬間に、ある一人の客である¶さんが、こう言いました。


あって有害なもの以外は全部残しておけ。
誰がどう使うかなんかわからないんだから。


すると、それまでまったく姿が見えなかったおおぜいの人たちが、どこからともなく現れて、口々に「そうだそうだ」と言い始めました。そしてその「ゴミだったもの」はゴミとして扱われることなく、園内に置いておかれることになりました。

…さして長くもない月日が経ちました。ある日、やはり通りすがりの来客がゴミを捨てようとしたので、一人の掃除係が「ここにゴミを捨ててはいけませんよ」と注意しました。すると、その来客は「あそこにも似たようなものが落ちているではありませんか。まずあのゴミを拾うべきでしょう」と言い放ち、ゴミを捨てて立ち去ってしまいました。

このようにして、来る日も来る日も、園内で遊ぶついでにゴミを落としていく人が増えていきました。なかには、ゴミを捨てるためだけに、園にやってくる人も出る始末です。彼らに注意しても聞く耳は持ちませんし、たまに口を開けば「アッテ有害ナモノ以外ハ全部残シテオケ」「誰ガドウ使ウカナンカワカラナインダカラ」とニヤニヤしながら言うだけでした。

さすがにこれには困り果てた一部の掃除係が、¶さんに「あなたも掃除を手伝ってくれませんか」と打診したのですが、¶さんは何も答えてくれません。まして、掃除係になるということは一切考えていないようです。

こうして、浦安デゼニリゾートは、ゴミに埋もれてしまったのです。