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利用者:Miraburu/私論/特筆性の判定基準

ウィキペディアに記事を作成する場合、取り扱う対象には、百科事典の記事として言及するに相応しい性質が必要です。ウィキペディアでは、この性質のことを「特筆性(notability)」と表現しています。

「特筆性」は「名声」「重要性」「人気」といった言葉と似ていますが、いずれも特筆性と全く同じ意味を持つものではありません。特筆性とは、「立項される対象が、その対象と無関係な信頼できる情報源において、有意に言及されている状態であること」を意味します。

現時点の立ち位置

ただし、削除依頼を中心とした、実際の生の議論の場においては、必ずしもこの考え方が支持されているわけではありません。2023年現時点の日本語版コミュニティの見解としては、大きく分けて2つの考え方があります。

1.「実績」を素地に分野ごとに独自の基準を設定して、その基準を満たすか否かで作成の認否を判断する

例えばスポーツなどの競技の選手であれば「出場試合数」「勝利数」「特定のリーグ・大会への参加の有無」、アーティストであれば「単独作品の有無」、政治家であれば「当選の有無」、高齢者の方であれば「センテナリアン(100歳)の達成の有無」など、「実績」を基準とした分かりやすいラインを設け、「この試合数だけ出場すれば、特筆性はあるものと見做す」「この試合数に出場回数が満たなければ、特筆性があるとは言えない」などの判断を下す考え方です(以下「人定区分法」と呼称します)。

「実績」を「特筆性」にそのまま直結させる考え方であり、一見妥当性があるようにも思えます。しかしながら、一般的な百科事典に収録される事物においては、本業における実績だけが収録される価値となるわけではなく、本業以外での活動などが元となって収録されるに至っている題材は多数存在します。また、その人物・団体が複数の活動分野に属している場合、片方の分野における基準は満たすがもう片方の基準は満たさない、といった事例もあります。

さらに、収録に値する性質というのは、多くの場合連続的なものです。その連続的な性質に対し、「10試合までは特筆性がないが、そこから上は特筆性がある」といったような離散的な線引きを、コミュニティ独自が設定する事についての根拠は、多くの場合、明確ではありません。

こうした点を総合的に勘案すると、コミュニティ独自の人工的な基準による判定という手法は、題材の持つ多様な側面を過度に単純化し、百科事典としての性質を逸脱した、単なる名鑑的な性質としてしまう、との批判があり得るでしょう。

これに対して人定区分法を支持する立場のユーザーからは、「主要な活動分野以外での活動が収録するに値する場合のみ、例外性を認めれば良い」「ウィキペディアはユーザー間の合意で成り立つプロジェクトであり、その合意に基づいて決定された線引きである、という事自体が根拠となり得る」などの反論があり得るかもしれません。ただし後者に対しては、さらに「合意自体が根拠となり得るという主張に基づくと、線引きの限定性自体が意味を失う」との再反論が可能でしょう。

2. 「その対象と無関係な信頼できる情報源において、有意に言及されている」という原則に忠実に判断する

Wikipedia:独立記事作成の目安#一般的な目安(WP:GNG)に定めのある「対象と無関係な信頼できる情報源において、有意に言及されている」という文言に沿って、特筆性の審査を行う立場です(以下「GNG」と呼称します)。

審査の際に、事前に資料の調査を要するという工数は存在しますが、その分、分野ごとに逐一定めを設ける必要はなくなります。さらに、人定区分法における「特筆性の有無の線引きの根拠が明確でない」という問題点について、「既存の社会における情報源において、有意な言及が存在する」という明確な根拠を示すことで解決することができます。

日本語版における歴史的な経緯

日本語版においては、発足当初の段階では、そもそものWikipedia:独立記事作成の目安というガイドラインが存在していなかったこともあり、画一的な基準は見られない状態でした。その後、画一的な基準の必要性という要請に応じる形で、分野ごとにそれぞれ参加者間の合意に基づいた、人工的な線引きの基準が設定されるに至ったようです(Wikipedia:独立記事作成の目安#関連項目に総覧があります)。

Wikipedia:独立記事作成の目安は、2015年と比較的新しい時期に正式化されたガイドラインです。そのため、それ以前から存在していた分野ごとの判定基準と、Wikipedia:独立記事作成の目安の判定基準には齟齬が発生する結果となりました。この結果が、上述した2通りの考え方に繋がっていると言えます。

現時点の結論

2023年の時点では、人定区分法とGNGのそれぞれの見解を取るユーザーが並存しており、現時点で特筆性の議論の中心的なページである削除依頼の場においては、しばしば意見が対立するケースが見られます。

原理的には全ての記事に関して、GNGを基に判定を行う事には妥当性はあると言えます。しかしながら現実的には、実績的な面が類似する題材同士の間において、どちらか一方は認められ他方は認められない、といった状態への不公平感が生じるというのも事実です。そのため、分野ごとにおける人工的な線引きをある程度取り入れる事にも、妥当性がないとは言い切れないでしょう。

2つの考え方の存在を意識する事で、自身や議論相手のそれぞれの選択している見解の立場を理解し、妥結点を探っていく一助となればと思います。