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利用者:Pentium830/sandbox

電波オークション(でんぱおーくしょん,英: Pulse auction)あるいは周波数オークション(しゅうはすうおーくしょん)とは,通信放送に利用される周波数帯域の割当に際して,オークション形式で利用者を決定する仕組みである。

概要[編集]

一般に電波オークションと言われる場合,テレビ放送携帯電話等に使用される周波数帯域(いわゆるプラチナバンド)の割当方法について述べられる事が多い。プラチナバンドはアンテナ設置の容易さなどから,希少価値の高い帯域として知られインターネット利用や移動通信が進んでいる現代において,電波需要が電波供給を上回っている状況である。これ以前は,電波需要が少なかったために電波割当は政府が適宜(先着順,比較審査,抽選等によって)行っていた。

電波オークションを巡っては,2020年にノーベル経済学賞(スウェーデン銀行賞)を受賞するなど注目を集めているが,テレビ放送局の既得権となっていることも多く,導入については様々な議論が展開されている。

導入に対する意見[編集]

電波利用の効率化[編集]

プラチナバンドのような混雑帯域での電波利用は,都市部での土地利用に例えることができる。都市部ではビルが立ち並び,田畑や住宅地として利用されることは少ない。土地利用は市場取引によって,高い土地使用料を支払う者に限定され,効率的な土地利用が促進される。電波利用においても同様に,導入によって高効率な電波利用が期待される。

電波割当プロセスの透明化[編集]

政府の比較審査によって免許付与を行う方法では,既得権益化や汚職の温床となる恐れがあり,不公平な割当となる可能性が高く,電波事業の新規参入が困難となる。オークションというシンプルな方法を導入すれば,透明性の高い事業者選考が可能である。また透明性の高いプロセスを用いることによって,訴訟リスクの低減や,割当に要する時間短縮などの副次的効果も期待できる。

財政赤字削減[編集]

OECD加盟国が電波オークション導入を推進した主な理由に,財政赤字削減が挙げられる。実際に導入国では以前よりも電波利用料が高額となり,財政赤字削減に大きく貢献している。これについては,スウェーデン王立科学アカデミーが受賞理由として「両氏は、従来の方法では売ることが難しかった電波利用権などを入札にかける新たなオークション形式を考案し、売り手、買い手、納税者に恩恵を与えた[1]」と説明している。

新技術導入の妨げ(3Gオークション)[編集]

2000年代初頭,EU各国では3G(第3世代移動通信システム)導入にあたって,電波オークションを導入した。結果として極端な高額落札となり,3G導入の妨げとなったとの指摘もある。東京経済大学准教授の黒田敏史氏は,「推定の結果、オークションを実施した国では第三世代携帯電話の普及率が低いことが明らかになった。この結果は、市場競争の不足が普及率を低下させたメカニズムである可能性を示している。」と主張している[2]。この事例は,導入反対意見として日本のマスコミで大きく取り上げられた。

日本における状況[編集]

日本では何度か電波オークションの導入が試みられたが,実際に導入された事例はない。

出典[編集]

  1. ^ ノーベル経済学賞に米スタンフォード大の2教授…「オークション理論」発展に貢献 : 経済 : ニュース”. 読売新聞オンライン (2020年10月12日). 2021年8月1日閲覧。
  2. ^ マリア, バケロ; 敏史, 黒田 (2011). “3gオークションの政策効果に関する分析”. 情報通信学会誌 29 (3): 3_49–3_59. doi:10.11430/jsicr.29.3_49. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicr/29/3/29_3_3_49/_article/-char/ja/.