利用者:ProfessorPine/Essay/たい焼き論争
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たい焼き論争とは、たい焼きのしっぽに餡が入っているべきか否かを巡って、著名人が繰り広げた昭和時代の舌戦です。これに倣って「主観で対立し、和解が困難な争点」全般を「たい焼き論争」と呼ぶことにします。Wikipedia上でも編集の方向性や記事の評価を巡って対立することはありますが、議論に熱が入りすぎてたい焼き論争に陥っていないか、冷静になって見つめ直して下さい。そして本項では、このような状況の回避策についても言及します。
元祖・たい焼き論争
[編集]たい焼きのしっぽに餡が入っていると「誠実」なのか?
直木賞受賞作家で演芸評論家の安藤鶴夫が昭和30年代[1]に新聞に寄稿したコラムが、たい焼き論争のきっかけとされます[2]。東京・四谷に店を構えるたい焼きの「たいやき わかば」(創業は昭和28年 (1953年[3])) は、たい焼きのしっぽまでぎっしり餡が詰まっています。これを食して感動した安藤は、その細部に宿る職人の心意気を高く評価し[2]、しっぽまで餡が入っているのは「誠実」だと主張します[1]。
ところが、食通・博学で知られる映画監督の山本嘉次郎 (黒澤明監督の師匠) は、この新聞コラムを読んで猛反発します[2]。山本が支持するのは東京・麻布十番の「浪花家総本店」 (創業は明治42年 (1909年)[4]) のたい焼きであり、しっぽに餡が入っていません[2]。山本にとってのしっぽは「箸休め」の位置づけであることから、甘い餡がしっぽにまで入っているのは「しつこい」と主張したのです[2]。ちなみに山本の著述には『日本三大洋食考』(1973年) なんてものも後年に出版しており[5]、食に対する強いこだわりがあります。
四谷・わかば、麻布十番・浪花家とも人気店。どっちの流派が正当なたい焼きであるべきか、マスコミまでも巻き込んで大論争に発展しました[2]。
不確定な情報ではありますが、どうも最終的には落語家の5代目・古今亭志ん生が仲裁に入って、何とか収まった模様です[3]。5代目・志ん生といえば、2019年NHK大河ドラマ『いだてん』に登場して、令和の時代に密かに再ブームを湧き起こした人物です[6]。酒飲みで女房に迷惑をかけてばかり。長男が生まれた時には金欠で祝うこともできず、本物の尾頭付きの鯛の代わりにたい焼きで祝ったとの逸話もあります[7]。
教訓
[編集]当然ですが、たい焼き論争はどちらが正しいとは言えず、両派の主張とも完全なる個人の価値観です。この論争から言えることは
- 能力のある者ほど、強い持論やこだわりがあり、論争が長期化する
- 餡アリ派と餡ナシ派では論拠のベースとなっているたい焼き全体が異なっているにも拘らず、論点を部分化・単純化してしまう
- 一見するといい加減で専門外の者でも、うまく仲裁できる可能性がある
わかば (餡アリ派) も浪花家 (餡ナシ派) も、論争から半世紀以上経過しても繁盛しています。つまり、どちらも美味いし消費者に支持され続けているのです。
わかばのたい焼きの皮に浪花家の餡を使ったら、甘すぎてしっぽまで入れないで欲しいと思うかもしれません。逆も然りで、浪花家の皮にわかばの餡を使ったら、しっぽに物足りなさを感じるかもしれません。つまり、餡を入れるか入れないか、という普遍的なルールを押し付けようとしても、個別性が高くて難しいのです。
ただし、このたい焼き論争をWikipediaの編集に当てはめると、特有の難しい問題が別途浮上します。それは、たい焼き屋は流派で店を分けることができても、Wikipediaの記事は編集方針の違いで2ページに分割できない、ということです。つまり「Wikipedia:記事の所有権」の問題が出てきます。棲み分けすることができず、必ず最後は1つに共有化しなければなりません。どこかで妥協が必要なのです。
対立の回避策
[編集]もしこれが記事の内容執筆ならば、加筆あるいは除去したいパートだけを取り上げて部分的に論じるのは建設的ではありません。両派とも、自分の主張を折り込んで記事全体の改稿案を下書きし、それぞれ提示してどちらが良いか議論してみて下さい。これはたい焼き論争に当てはめれば、しっぽだけを取り上げて餡を入れるか入れないか空中戦を繰り広げるのではなく、頭からしっぽまで全体を食べてみて、どちらのたい焼きがより良いのか投票すれば良い話なのです。
仮にあなたの主張に沿った改稿案が否決されたとして、どうしても納得いかなかった場合はどうすべきでしょうか。出典を追加で集めてくる、全体構成を組み直す、などしてあなたの改稿案をさらに発展させて下さい。もしかしたらその改良後であれば、再投票で結論が覆されるかもしれません。覆らなかったとしても、部分的にあなたの再提案は記事に取り込まれるかもしれません。
また議論が白熱して長期化した時、それが本当に自分にとって譲れないほどの論点なのか、時間の投資効率も考えてみて下さい。問題となっている記事の周辺 (関連記事) がスタブ状態なら、そちらの加筆・修正に熱意と労力を注いだ方が良いとも言えます。意外と周辺記事が育ってきたら、あなたの主張の方が正しかったと判断が後日覆るかもしれません。
いずれにしても、持論の主張には細心の注意を払って言葉を選んで下さい。上述のたいやき論争であれば、安藤は餡アリを「誠実」と評しましたが、これは裏を返せば餡ナシの浪花家系を「不誠実」と酷評しているようなものです。山本はこれに対して直截的に、餡アシは「しつこい」と反論しています。このような言葉の応酬は、評論家がやれば良いのです。Wikipediaでは評論家ではなく「編集者」が求められています。「不誠実」や「しつこい」との言葉を発する必要はなく、純粋に改稿案を下書きすることに注力して下さい。
最後に、論争の仲裁に途中から入ってきた他の編集者に対し「お前は専門知識もなければ、これまでの議論の経緯も分かってない。黙ってろ」との態度は禁物です。無論、このような議論の足しにならず、むしろ混乱状況を悪化させる人がいるのも事実です。ですが意外と他の事例を知っていて、外部からの新たな視点を中立的に持ち込んでくれる人というのもいるはずです。
脚注
[編集]私論のため、たい焼き論争の経緯説明に用いた出典の一部には「Wikipedia:信頼できる情報源」に合致しないものが含まれています。たい焼き論争に関するより信頼性の高い情報源をお持ちの方は、「たい焼き#たい焼きのしっぽの餡」への出典追加と加筆をお願いします。
- ^ a b “Qさんぽ 第52号”. 株式会社エルグ. 2020年8月28日閲覧。
- ^ a b c d e f “たい焼きにも“養殖”“天然”がある? 明治時代から愛され続ける魅力の和菓子!”. レタスクラブ (料理雑誌). 株式会社KADOKAWA (2018年12月16日). 2020年8月28日閲覧。
- ^ a b けやぽん. “たいやき わかば 徹底レビュー!予約情報、温め方にいたるまで大特集”. 2020年8月28日閲覧。
- ^ “お店紹介 浪花家総本店”. 麻布十番商店街. 2020年8月28日閲覧。
- ^ “図書館(蔵書検索)日本三大洋食考”. 公益財団法人 味の素食の文化センター. 2020年8月28日閲覧。
- ^ 広尾晃 (2019年8月4日). “古今亭菊之丞が「志ん生」に紡ぐ古典落語の魅力 まさに「上質な芝居」、いだてんの落語指導も”. 東洋経済新報社. 2020年8月28日閲覧。
- ^ “『いだてん』で再注目!落語界のスーパースター・古今亭志ん生を知るための本”. honto. 大日本印刷株式会社. 2020年8月28日閲覧。 “「長男が産まれた時に鯛焼きでお祝いした」”