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利用者:Redgazump/sandbox

記事名:グローバルヘルス技術振興基金 (17:17, 9 February 2015 UTC) より抄訳

公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(Global Health Innovative Technology Fund、GHIT Fund)は開発途上国向けの感染症の治療薬、ワクチン、診断薬の製品開発に対して投資を行う国際的な非営利組織。本部は日本。日本国政府(外務省厚生労働省)、国内の製薬会社6社(アステラス製薬エーザイ塩野義製薬第一三共武田薬品工業中外製薬)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、及び、国際連合開発計画(英:United Nations Development Programme)で構成される官民パートナーシップ。 GHIT Fundの代表理事は黒川清、BT Slingsby氏がCEO兼専務理事を務める[1]

2013年に日本政府が国際保健分野の国際貢献を強化することを外交の重要課題として位置づけ[2]、同2013年4月にGHIT Fundが創設される。GHIT Fundは、日本が有する新薬開発技術を活用し、日本の国際貢献を強化すると共に、新たな資金とイノベーションを創出することで、感染症で苦しんでいる途上国の保健医療問題の解決に貢献する、という信念のもと活動し [3] GHIT Fundは、海外の非営利組織である製品開発パートナーシップ(Product Development Partnerships: PDPs、発展途上国の感染症の製品開発に特化した国際的な非営利組織)と連携し、日本の民間企業や研究機関が保有する化合物ライブラリーを用いて、開発途上国の感染症の治療薬になりうる候補化合物のスクリーニング等を行う[4]

ミッション[編集]

2013年4月の創設以来、「開発途上国の人々が感染症による苦難を乗り越え、先進国と同様に繁栄と長寿社会を享受できる世界」[5]をGHIT Fundの目指すミッションとし、 「先進国と開発途上国間における健康格差是正に向けて、日本が有する医療技術、イノベーション、知見をより直接的に活かすことができる、グローバルな医薬品開発研究の連携を促進」にむけて新薬開発の推進をしている[6]

資金拠出パートナー[編集]

GHIT Fundのパートナーらは設立時から5年間で合わせて100億円規模の資金拠出を表明している。拠出された金額のうち、日本国政府(外務省と厚生労働省)が50%、日本の製薬会社社(アステラス製薬、エーザイ、塩野義製薬、第一三共、武田薬品工業、中外製薬)が25%、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が残りの25%を担う。投資元と製品開発の利益相反を防ぎ、透明かつ公正な評価・選考が行われるよう、投資案件の審査及び選定を行う選考委員会には製薬企業は含まれていない。また投資対象は、GHIT Fund のパートナーとして参加している民間企業に限らず、日本の研究機関と海外の研究機関がパートナーシップを組んでいることが条件となる。[7] [8] [9]

投資活動[編集]

GHIT Fundは日本と海外の製薬企業、研究機関、大学の共同研究開発に投資することで、日本の有する新薬開発技術やイノベーション、情報、知見を、グローバルヘルスに活かすことを目的とする[10] [11]。GHIT Fundは、助成することを「投資」、助成金受領者を「製品開発パートナー」と表現している。GHIT Fund自体は、投資による金銭的なリターンを求めてはいないが、製品開発の進捗や成果を投資のリターンとしており、しいてはグローバルヘルスR&Dの推進と社会経済への貢献を期待している。

途上国の感染症の治療薬、ワクチン、診断薬の研究開発に投資を行う。ヒト免疫不全ウイルスマラリア結核の他、WHO(世界保健機関)により定義されている17種類の顧みられない病気 (NTDs)」の研究開発を推進している[12]。GHIT Fundはまた、TBアライアンス(Global Alliance for Tuberculosis Drug Development)[13]、MMV (Medicines for Malaria Venture)[14]DNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative)などのPDPsと連携している[15]

以下はいくつかの投資案件の一例を通じての締結実績である:

  • 米国PATHマラリアワクチンイニシアティブと愛媛大学の抗マラリア薬候補Pf75の共同研究開発に対して約7660万円を投資[16]
  • 独立行政法人医薬基盤研究所(NIBIO)が有するヒトパラインフルエンザ2型ウイルスベクター技術を利用した、NIBIO、Aeras、及び株式会社クリエイトワクチンの3者間での新規結核ワクチン共同研究開発に対し第一回助成として7千万円を投資[17]
  • DNDiとエーザイ社との新世代トリアゾール系化合物であるE1224とベンズニダゾールを併用したシャーガス病治療のための共同開発に対して約3億8400万円を投資[18]

GHIT Fundの投資案件一覧や詳細についてはホームページで確認できる[19]

投資効果の評価方法[編集]

GHIT Fundが投資する案件は、オープンイノベーション、つまり、企業内外部の知見や技術を組み合わせることで生まれる価値を重視し、また、研究開発の産物となる製品(ワクチン、治療薬、診断薬等)は世界の最貧困層に迅速且つ安価に入手可能にするためのアクセスを優先しながら、中所得国にはライセンス費用としてのロイヤリティを払ってもらうことで投資の損失を防ぐ無利益/無損失を原則としたビジネスモデルとなっている[20][21]

またGHIT Fundのホームページによると、投資案件の評価や進捗は製薬業界やバイオテクノロジー分野で用いられる定量的な指標を用いて行われているとされる。製品開発のマイルストーンやステージゲートといった指標を設定し、社会経済へのインパクトについてはケーススタディーを用いて評価が行われている[22]

脚注[編集]

  1. ^ GHIT Fund 理事会”. 2015年2月24日閲覧。
  2. ^ 国際保健外交戦略の策定について」外務省 平成25年5月17日
  3. ^ The Global Health Innovative Technology (GHIT) Fund: financing medical innovations for neglected populations”.  by BT Slingsby and Kiyoshi Kurokawa, The Lancet: Global Health, October 2013, Volume 1, pp.e184-185. 2015年2月24日閲覧。
  4. ^ “Joining the Fight Against Neglected Diseases”. Science magazine 340 (June 7, 2013): 1148. 
  5. ^ GHIT Fund 組織概要、ミッション&ビジョン”. 2015年2月24日閲覧。
  6. ^ GHIT Fund 組織概要、ミッション&ビジョン”. 2015年2月24日閲覧。
  7. ^ 3大感染症及び顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases, NTDs)”. 製薬協. 2015年2月24日閲覧。
  8. ^ 開発協力トピックス01、新薬開発に力を結集-GHITファンドと『グローバルヘルス』”. 外務省. 2015年2月24日閲覧。
  9. ^ Japanese drugmakers get serious about tackling dengue”. by Daisaku Yamasaki and Sadachika Watanabe, NIKKEI Asian Review. 2015年2月24日閲覧。
  10. ^ “Give and It Shall Be Given unto You”. The Economist (November 16–22, 2013): 72. 
  11. ^ Mullard, Asher (September 2013). “An Audience with … Tachi Yamada”. Nature magazine 12: 658. 
  12. ^ Jack, Andrew. “Japan in pioneering partnership to fund global health research”. Financial Times (May 30, 2013). 
  13. ^ TB Alliance.org Global Alliance for Tuberculosis Drug Development
  14. ^ mmv.org Medicines for Malaria Venture
  15. ^ “Joining the Fight Against Neglected Diseases”. Science magazine 340 (June 7, 2013): 1148. 
  16. ^ 世界初の官民パートナーシップモデルとなる「GHIT Fund」から 本学プロテオサイエンスセンター等への助成金交付が決定!」愛媛大学 平成26年9月11日
  17. ^ 株式会社クリエイトワクチンに対する共同出資について大日住友製薬 2014年5月22日
  18. ^ GHITファンドが助成金‐熱帯病薬開発に約12億円」薬事日報 2014年3月31日
  19. ^ GHIT Fund ポートフォリオ一覧”. 2015年2月24日閲覧。
  20. ^ Jack, Andrew. “Japan in pioneering partnership to fund global health research”. Financial Times (May 30, 2013). 
  21. ^ “Give and It Shall Be Given unto You”. The Economist (November 16–22, 2013): 72. 
  22. ^ GHIT Fund インパクト評価”. 2015年2月24日閲覧。


外部リンク[編集]

ホームページ GHIT Fund