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利用者:Ruinesan/下書きその2

★ 下書きその2:辞職勧告決議  


辞職勧告決議(じしょくかんこくけつぎ)は、議会が特定公職者に対し「辞職を勧める」決議。

概説[編集]

不祥事などで公職の身分にふさわしくないとされる人物に対して行われる議会の意思表示である。法的拘束力はないため、当該人物は勧告に従わなくても法律上問題はないとされている。

分類として以下の二つがある。

  • 議員辞職勧告決議
  • 首長辞職勧告決議

議員辞職勧告決議[編集]

議員の不祥事に対して、議員の進退問題について個々の議員が判断すべきという意見や、不祥事に対する議会の意思表示という面もある。一方で、法的明文もないのに議会が有権者に選ばれた特定の議員の進退問題を議決することは憲法上問題であると批判する意見もある。これは、議会の除名は「院内の秩序をみだした議員」のみを対象としており、院外の行動における不祥事は対象外のためである。また、勧告対象となった議員が辞職勧告を拒否した場合、議会の権威が低下する懸念も指摘されている。

一方で、議員辞職勧告決議が本会議で採決された場合、議員が辞職勧告が提出されるような理由が存在する事態において、個々議員がどのように考えているのかを知ることができ、次回選挙における指標にできるとする意見がある。また、辞職勧告を無視する議員がいた場合は、当該議員の政治的道義的退廃を示すものであり、有権者の批判が一層強まるとする意見がある。

帝国議会における処決決議[編集]

戦前では辞職を処決という言葉を用い、辞職勧告決議の代わりに処決決議が行われた。戦前の帝国議会では「院議無視」又は「院議不服従」をした議員に対して、院内の秩序を乱す懲罰事犯とする取り扱いが認められており、処決決議を無視した議員に対して除名を含めた処分が可能であった。

帝国議会の本会議における処決決議等採決例
本会議採決日 議院 議員 結果 採決 理由 その後
1904年(明治37年)3月28日 衆議院 秋山定輔 可決 異議なし ロシアスパイ疑惑 翌3月29日に議員辞職。

国会における議員辞職勧告決議[編集]

国会の本会議で議員辞職勧告決議が採決されたことは過去に5例ある。秋山と重政と西村を除く3人は議決時において逮捕勾留されており、議員活動が滞っていた。可決例は4例でいずれも可決された4人は議員辞職を拒否している。

かつては55年体制下では日本社会党など野党が不祥事疑惑がある自由民主党議員に対する辞職勧告決議の本会議採決を要求し、自由民主党は反対するという構図になっており、55年体制下で議員辞職勧告決議が採決されたのは1966年の重政庸徳の1例だけであった。1983年に田中角栄元首相に対して一審有罪判決が出た際には野党が田中角栄議員辞職勧告決議の本会議採決を要求し国会が空転したこともある。

しかし、1997年1月に入ってからは逮捕や起訴を受けても議員辞職しない現職国会議員に対して議員辞職勧告決議が採決される傾向がある。また、民主党は過去には国会議員が逮捕されていない疑惑の段階で議員辞職勧告決議案を提出をし、本会議採決を要求していたことがある(例として鈴木宗男[1]松浪健四郎[2]など)。しかし、民主党は石川知裕(元民主党)については、逮捕・起訴・一審有罪判決が出ても野党の議員辞職勧告決議採決要求を拒否し続けており、逮捕・起訴されて刑事訴訟で有罪判決が下された現職国会議員に対しては議員辞職勧告決議が採決されない状況が続いている。一方で与党時代の自由民主党も収賄罪の有罪が確定した藤波孝生や二審で収賄罪の有罪判決が出た中村喜四郎に対する議員辞職勧告決議の採決を拒否した過去がある。

本会議における国会議員辞職勧告決議等採決例
本会議採決日 議院 議員 結果 採決 理由 その後
1966年(昭和41年)2月2日 参議院 重政庸徳 否決 起立少数 銃刀法違反による秘書の逮捕
(国会内短銃密売事件)
自民党籍離脱し、77日間登院自粛。
1997年(平成9年)4月4日 参議院 友部達夫 可決 起立過半数 詐欺罪による起訴
オレンジ共済事件
辞職拒否。有罪確定まで約4年間議員在職(本文)。
2002年(平成14年)6月21日 衆議院 鈴木宗男 可決 起立総員 収賄罪による逮捕
やまりん事件
辞職拒否。衆議院解散まで約1年4ヶ月間議員在職(本文)。
2003年(平成15年)3月25日 衆議院 坂井隆憲 可決 異議なし 政治資金規正法違反による逮捕 辞職拒否。衆議院解散まで約7ヶ月間議員在職(本文)。
2006年(平成18年)3月17日 衆議院 西村眞悟 可決 起立多数 弁護士法違反による起訴
西村眞悟弁護士法違反事件
辞職拒否。衆議院解散まで約3年4ヶ月間議員在職(本文)。
議院運営委員会における国会議員辞職勧告決議等の質疑終局・即決動議の否決例
委員会採決日 議院 議員 結果 理由
1983年(昭和58年)5月25日 衆議院 佐藤孝行 挙手少数で否決 収賄罪による一審有罪判決
懲役2年執行猶予3年追徴金200万円
ロッキード事件
1983年(昭和58年)5月25日 衆議院 田中角栄 挙手少数で否決 収賄罪による起訴
(ロッキード事件)
1999年(平成11年)11月4日 衆議院 藤波孝生 挙手少数で否決 収賄罪での最高裁有罪判決
懲役3年執行猶予4年追徴金4270万円が確定
リクルート事件
2000年(平成12年)3月28日 衆議院 藤波孝生 挙手少数で否決 収賄罪での最高裁有罪判決
懲役3年執行猶予4年追徴金4270万円が確定
(リクルート事件)
2001年(平成13年)5月18日 衆議院 中村喜四郎 可否同数
委員長決裁[3]で否決
収賄罪での二審有罪判決
懲役1年6ヶ月追徴金1000万円
ゼネコン汚職事件
2002年(平成14年)3月20日 衆議院 鈴木宗男 挙手少数で否決 外務省疑惑
2002年(平成14年)5月14日 衆議院 鈴木宗男 可否同数
委員長決裁[4]で否決
偽計業務妨害罪での秘書の逮捕
(ムネオハウス事件)
2003年(平成15年)6月12日 衆議院 松浪健四郎 挙手少数で否決 暴力団による秘書給与肩がわり

地方議会における議員辞職勧告決議[編集]

地方議会においても議員辞職勧告決議がなされることがある。

過去には福島県須賀川市議会で圓谷年雄須賀川市議に対し、2011年9月18日の飲酒運転が刑事事件になったことを理由に議員辞職勧告決議が4回(2011年10月26日、同年12月1日、2012年2月9日、同年3月1日)可決された例がある。

なお、住民によるリコールという形の解職請求は選挙管理委員会に対して行う強制力のあるものであり、議会による辞職勧告決議とは異なる。

都道府県議会辞職勧告決議の可決例
採決日 議会 議員 理由
1993年(平成5年)6月29日 鹿児島県議会 堀口文雄 贈収賄による起訴
1994年(平成6年)12月15日 徳島県議会 松田一郎 収賄罪による起訴
1997年(平成9年)6月24日 滋賀県議会 西村政之 斡旋収賄罪による逮捕
2001年(平成13年)6月5日 兵庫県議会 萬代正信 図書館建設をめぐる職務強要罪による起訴
2002年(平成14年)2月22日 大阪府議会 奴井和幸 飲酒運転による1審有罪判決
2002年(平成14年)12月11日 東京都議会 福島寿一 婦女暴行致傷罪による逮捕
2003年(平成15年)6月30日 栃木県議会 人見哲 公職選挙法違反による逮捕
2003年(平成15年)7月15日 福岡県議会 吉村元秀 政治資金規正法違反による起訴
2004年(平成14年)9月16日 岐阜県議会 井上一郎 飲酒運転の摘発
2005年(平成17年)12月21日 滋賀県議会 太田正明 加重収賄罪による起訴
2006年(平成18年)3月7日 鹿児島県議会 栄和弘 金銭授受疑惑
2007年(平成19年)5月16日 山形県議会 村山隆 飲酒運転の摘発
2011年(平成23年)6月24日 広島県議会 正木篤 無免許運転の摘発
2011年(平成23年)9月20日 広島県議会 正木篤 無免許運転の有罪判決

首長辞職勧告決議[編集]

議会が首長の資質を問題視して、退陣を勧告する場合に議決される。辞職勧告決議が不信任決議の可決効力と同等の特別議決(議員数の3分の2以上が出席する都道府県または市町村の議会の本会議において4分の3以上の賛成した場合)であり、客観的に首長の不信任と同一視し得る事情があれば、辞職勧告決議を地方自治法上の不信任決議可決として法的効力を有するとみなす判例がある(和歌山地裁昭和27年3月31日判決、青森地裁昭和33年2月27日判決)。

なお、住民によるリコールという形の解職請求は選挙管理委員会に対して行う強制力のあるものであり、議会による辞職勧告決議とは異なる。

都道府県知事に対する辞職勧告決議可決例[編集]

都道府県知事に対する辞職勧告決議
採決日 議会 首長 比率 理由 その後
1949年 埼玉県議会 西村実造 日本シルク疑獄事件 3月28日辞職。
2003年3月7日 青森県議会 木村守男 39 9 30 79.59% セクハラ疑惑 5月17日辞職。
2004年10月8日 高知県議会 橋本大二郎 22 15 7 59.46% 選挙資金問題 当日辞職。知事選に立候補し、当選。
2006年11月29日 宮崎県議会 安藤忠恕 39 0 39 100.00% 宮崎県官製談合事件 12月1日、不信任可決。12月4日辞職。
2006年12月18日 広島県議会 藤田雄山 37 29 8 56.06% 後援会による政治資金不正事件 辞職拒否。

市町村長に対する辞職勧告決議可決例[編集]

市長に対する辞職勧告決議可決例[編集]

採決日 議会 首長 比率 理由 その後
2002年12月11日 北海道旭川市 菅原功一 20 19 1 51.28% 陣営幹部による市長選の選挙違反 辞職拒否。
2004年3月29日 北海道苫小牧市 櫻井忠 21 11 10 65.62% 助役の長期不在問題など 辞職拒否。別の事件で、2006年5月31日辞職。
2006年12月6日 北海道深川市 河野順吉 20 0 20 100.00% 深川官製談合事件 12月7日、辞職。
2007年3月2日 神奈川県厚木市 小林常良 13 12 1 52.00% 陣営幹部による市長選の選挙違反 辞職拒否
2007年3月6日 熊本県人吉市 福永浩介 11 10 1 52.38% 市長の贈賄疑惑(逮捕) 辞職拒否。在職のまま任期満了、引退。
2009年6月23日 愛媛県八幡浜市 大城一郎 13 6 7 68.42% 市長の選挙公約違反 辞職拒否
2009年6月25日 神奈川県鎌倉市 石渡徳一[5] 14 13 1 51.85% 陣中見舞い事件、他
2011年3月17日 京都府向日市 久嶋務[6] 14 9 14 93.75% 市長の行政管理能力の欠如等
2011年10月11日 宮城県名取市 佐々木一十郎[7] 15 1 14 93.75% 市職員の採用を巡る不適切な行為 辞職拒否
2017年5月11日 神奈川県横須賀市 吉田雄人[8] 15 1 14 93.75% 名刺問題 辞職拒否。在職のまま任期満了の見込み。

町長に対する辞職勧告決議可決例[編集]

採決日 議会 首長 比率 理由 その後
2004年6月21日 兵庫県赤穂郡上郡町 安則眞一 15 9 6 62.50% 市長の行政管理能力の欠如
2014年6月20日 沖縄県八重山郡竹富町 川満栄長 7 3 4 62.50% 市長の行政管理能力の欠如等 一度は辞表を提出したが7月22日に撤回。

脚注[編集]

  1. ^ 夕刻に鈴木宗男議員辞職勧告決議案を野党共同で提出
  2. ^ 4野党、松浪議員の議員辞職勧告決議案を提出
  3. ^ 議院運営委員長は藤井孝男
  4. ^ 議院運営委員長は鳩山邦夫
  5. ^ http://www.jcp-kamakura.jp/archives/225
  6. ^ http://www.kyoto-minpo.net/archives/2011/03/17/post_7671.php
  7. ^ https://web.archive.org/web/20111020141851/http://www.kahoku.co.jp/news/2011/10/20111012t11015.htm/
  8. ^ http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201705/CK2017051102000170.html

関連項目[編集]