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利用者:Satoruk/藤川法

藤川法とは、藤川和男によって導入された、場の量子論におけるカイラルアノマリーを計算する方法の一つである。この方法は、カイラル変換に伴う経路積分測度のヤコビアンとしてアノマリーを導出する。

(偶数)-次元ユークリッド空間において、コンパクトリー群の表現に属するディラック場を考える。背景ゲージ場に対するディラック作用素を(ファインマンスラッシュ記法で) と書く。ディラックフェルミオンの作用

を用いて、分配関数を

と定義する。座標に依存する無限小()のカイラル変換

に対して、作用は

と変換する。したがって、古典的には軸性カレントは保存する:。ところが、量子力学的には軸性カレントは保存しない。ローマン・ジャッキウ三角ダイアグラムの計算から非保存性を発見した。一方、藤川法は、軸性カレントの非保存をカイラル変換に伴う経路積分測度のヤコビアンとして導出する。

経路積分測度の変換性を見るには、まず、ディラック場をディラック作用素の固有ベクトルを基底として展開する:

ここにグラスマン数に値をとる係数、はディラック作用素の固有関数である:。ただし、固有関数は-次元積分に関して正規直交にとる。この係数を用いて、経路積分測度は次のように書かれる:

座標に依存する無限小のカイラル変換

に伴う経路積分のヤコビアンは、固有ベクトルの直交性

から、

と計算できる。グラスマン数の積分であるため行列式の逆数が現れることに注意する。

行列式は、微小量について次のように表せる:

特にが無限小の定数であるときを考える。上の積分は紫外発散するため、正則化を要する。藤川法では、ゲージ不変性を破らない正則化の方法として、熱核正則化を用いる:

続いて、固有関数を平面波で展開すると、

を得て、カイラルアノマリーの表式

が導出される。右辺には、次元ユークリッド空間上の-値バンドルのチャーン指標が現れる。

参考文献[編集]

  • K. Fujikawa and H. Suzuki (May 2004). Path Integrals and Quantum Anomalies. Clarendon Press. ISBN 0-19-852913-9.
  • S. Weinberg (2001). The Quantum Theory of Fields. Volume II: Modern Applications.. Cambridge University Press. ISBN 0-521-55002-5.