利用者:TR15336300101/メタニウム
化学において、メタニウムは化学式CH+
5で表される陽イオンであり、1つの炭素原子に5つの水素原子が結合しており、+1の電荷として振る舞う。メタニウムは超酸であり、またオニウムイオンの一種であり、最も単純なカルボニウムイオンでもある。
メタニウムは希薄なガスとして、あるいは超酸中の希薄種として、実験室で合成することができる。 メタニウムは、また1950年に初めて合成され、1952年にVictor Talroseと彼の助手のAnna Konstantinovna Lyubimovaにより論文報告されている[1][2]。メタニウムは化学反応における中間体としても発生する。
メタニウムイオンの名称はメタン(CH4)から命名されており、アンモニア(NH3)から名付けられたアンモニウムイオン(NH+
4)と同様の命名法である。
構造
[編集]メタニウムは、3中心2電子結合内の空軌道と相互作用する水素分子をもつ CH3+ カルバニウムイオン と見なすことができる。 H2分子の結合性電子対は、2つの水素原子と1つの炭素原子の間で共有され、3中心2電子結合を形成する[3]。
H2 分子中の二つの水素原子は、CH3+ イオンの中の3つの水素原子と絶えず入れ替わっている(これは疑似回転、特にベリー機構と呼ばれる立体構造変化である)。したがって、メタニウムイオンは可動性分子である。 その構造変化のエネルギー障壁は非常に低く、非常に低温でも起こり得る[4][5]。
赤外分光法用いるとメタニウムイオンの様々な構造に関する情報が得られる[6][7][8]。通常のメタンのIRスペクトルは、約3000 cm-1 に対称と非対称伸縮振動に由来した二つのC-Hバンド、また約1400 cm-1 に対称と非対称屈曲振動に由来する2つのバンドを示す。 一方、CH5+ のIRスペクトルは、三つの非対称伸縮振動に由来した2800–3000 cm-1、横揺れ振動の1300 cm-1、屈曲振動の1300、1100 cm-1にバンドを示す。
合成
[編集]メタニウムは、メタンに非常に強い酸を作用させることで合成される、フッ化水素酸中の五フッ化アンチモン SbF5 のような超酸が用いられる[9]。
約2Torrの圧力と室温下で、メタンイオン CH+
4 は、中性のメタンと反応し、メタニウムとメチルラジカルを生じる[10]。
- CH+
4 + CH4 → CH+
5 + CH•
3
安定性及び反応
[編集]メタンと超酸( SbF5 + HF)の反応で得られたカチオンのメタニウムイオンは、HF分子との相互作用で安定化されている。
減圧(約1mmHg)、室温下では、メタニウムは中性メタンと反応しない[10]。
参考文献
[編集]- ^ V. L. Talrose and A. K. Lyubimova, Dokl.
- ^ Nikolaev, Eugene (1998). “Victor Talrose: an appreciation”. Journal of Mass Spectrometry 33 (6): 499–501. doi:10.1002/(SICI)1096-9888(199806)33:6<499::AID-JMS684>3.0.CO;2-C. ISSN 1076-5174.
- ^ Golam Rasul, G.K. Surya Prakash, George A. Olah (2011), "Comparative study of the hypercoordinate carbonium ions and their boron analogs: A challenge for spectroscopists".
- ^ Peter R. Schreiner, Seung‐Joon Kim, Henry F. Schaefer, and Paul von Ragué Schleyer (1993), "CH+
5: The never‐ending story or the final word?" - ^ Hendrik Müller, Werner Kutzelnigg, Jozef Noga, and Wim Klopper (1997), "CH5+: The story goes on.
- ^ Edmund T. White, Jian Tang, Takeshi Oka (1999), "CH+
5: The infrared spectrum observed" Science, volume 284, issue=5411, page 135, doi:10.1126/science.284.5411.135 PMID 10102811 - ^ Oskar Asvany, Padma Kumar P, Britta Redlich, Ilka Hegemann, Stephan Schlemmer, Dominik Marx (2005), "Understanding the infrared spectrum of bare CH+
5." - ^ Xinchuan Huang, Anne B. McCoy, Joel M. Bowman, Lindsay M. Johnson, Chandra Savage, Feng Dong, David J. Nesbitt (2006), "Quantum deconstruction of the infrared spectrum of CH+
5." - ^ J. Sommer and R. Jost (2000), "Carbenium and carbonium ions in liquid- and solid-superacid-catalyzed activation of small alkanes".
- ^ a b F. H. Field , M. S. B. Munson (1965), "Reactions of gaseous ions.