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利用者:Takenari Higuchi/sandbox11

耽美(ダンメイ[1])は、男性同性愛を描いた中国のフィクションのジャンル。

歴史[編集]

背景[編集]

耽美(ダンメイ)は日本語の耽美(たんび)に由来する。ここでの耽美とは男性同性愛を描いたフィクションのうち特に雑誌『JUNE』に掲載されていたものを指す[2]

中国への輸入と発展[編集]

耽美を描いた日本の漫画は1990年代初頭に台湾を通じて中国本土に輸入された[3]

特徴[編集]

耽美においては日本のやおいやBLにおける攻めと受けにあたる攻(gong[4])と受 (shou[4]) の表現が普遍的に用いられている[5]。耽美同人においては攻と受の組み合わせはCP (カップルを指すcoupleの略)と呼ばれ、キャラクターの名前を一文字ずつ取って組み合わせることでCPを表す。その際には名前の順番が重要視され、先に表される方が攻、後に表される方が受とされる[4]

耽美の初期にあたる2000年代前半の耽美作家は木原音瀬山藍紫姫子といった日本のBL作家に影響を受けていた。木原や山藍の作品では攻めは男性的な外見に描かれ、受けは女性的に描かれていた。こうしたことから初期の耽美作品では力強い攻と弱い受が描かれ、舞台装置としてレイプがよく用いられた[6]

/* Audience[編集]

耽美のほとんどは女性によって制作されている[7]。耽美のファンにも若い女性が多い[3]。耽美小説の投稿サイトである晋江文学城の700万人のユーザーのうち93%が女性で、84%が18歳から35歳だった[7]。こうした耽美のファンは自分たちを腐女と呼んでいる[7]

メディア[編集]

中国国内[編集]

耽美を描いた作品は漫画やアニメ、実写ドラマ、オーディオドラマなど様々なメディアに展開されている[8]

耽美を描いたファンフィクションは耽美同人 (danmei tongren) と呼ばれる[4]。耽美や耽美同人の多くは晋江文学城と呼ばれる耽美小説サイトに投稿されている。しかし、中国共産党による晋江文学城への圧力によって性的な描写が含まれる作品が規制されるようになると、ファンフィクション投稿サイトであるArchive of Our Own英語版も利用されるようになった[7]

中国国外[編集]

耽美作品は中国国外にも輸出されている。アメリカ合衆国の出版社であるセブンシーズ・エンターテインメントは耽美レーベルであるSeven Seas Danmeiから耽美小説の英語訳を出版しており[9]、全3巻で刊行された耽美小説『天官賜福』の英語版はアメリカ合衆国において50万部を売り上げ、いずれの巻も『ニューヨークタイムズ』のベストセラーに選ばれた[7]。また、ドラマ化された耽美作品はNetflixなどで世界中に配信されている[8]

規制[編集]

複数の耽美作家が投獄されている[7]。2014年には一人の耽美作家が禁錮3年半の判決を受け、2018年には別の耽美作家が禁錮10年以上、2019年には8人の耽美作家が逮捕されそのうちの一人に禁固4年の判決が下された[7]

出典[編集]

  1. ^ シュウ & ヤン 2019, p. 29.
  2. ^ 藤本 2020, p. 15.
  3. ^ a b Feng 2009, p. 4.
  4. ^ a b c d Tian 2015, p. 227.
  5. ^ シュウ & ヤン 2019, p. 36.
  6. ^ シュウ & ヤン 2019, p. 39.
  7. ^ a b c d e f g Sullivan, Helen (2023年3月13日). “China’s ‘rotten girls’ are escaping into erotic fiction about gay men”. The Gurdian. 2023年6月20日閲覧。
  8. ^ a b Zhao, Jin (2022年2月24日). “Danmei, a genre of Chinese erotic fiction, goes global”. The China Project. 2023年7月2日閲覧。
  9. ^ https://sevenseasdanmei.com/

参考文献[編集]

  • Feng, Jin (2009). “"Addicted to Beauty": Consuming and Producing Web-based Chinese "Danmei" Fiction at Jinjiang”. Modern Chinese Literature and Culture (Foreign Language Publications) 21 (2): 1-41. JSTOR 41491008. 
  • Tian, Xiaofei (2015). “Slashing Three Kingdoms: A Case Study in Fan Production on the Chinese Web”. Modern Chinese Literature and Culture (Foreign Language Publications) 27 (1): 224-277. JSTOR 24886590. 
  • シュウ・ヤンルイ; ヤン・リン 著、佐藤まな 訳「BLとスラッシュのはざまで:現代中国の「耽美」フィクション、文化越境的媒介、変化するジェンダー規範」、ジェームズ・ウェルカー 編『BLが開く扉:変容するアジアのセクシュアリティとジェンダー』青土社、2019年、29-46頁。ISBN 978-4-7917-7225-4