コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

利用者:Urusine/sandbox

ニヴフ祖語(ニヴフそご、英語: Proto-Nivkh)または アムール祖語(アムールそご、英語: Proto-Amuric、古くはギリヤーク祖語(ギリヤークそご、英語: Proto-Ghilyak)は、言語学的に再建される、ニヴフ語族のすべての言語の共通祖先。

音韻

[編集]

母音

[編集]

ニヴフ語族のすべての現代語は、ツングース語族のナナイ語派、とくにナナイ語ウリチ語に似た、比較的単純で対称的な6母音体系を有する。一方で、ニヴフ語族と最も近接するウィルタ語は、/ɵ/ をもつため、母音体系が大きく異なる。

現代ニヴフ語の母音
u ə i
o a e

母音消失

[編集]

ツングース祖語の二音節語根は、現代のニヴフ語で語頭母音以外を失って現れる。また条件は不明であるが、とくにアイヌ語との接触において、語頭母音が失われる場合もある。以上から、ニヴフ祖語の子音連結は、語頭や語末の母音脱落によって生じたと考えられている[1]

周辺言語に残る母音消失の痕跡
周辺言語 先ニヴフ祖語 アムール方言 樺太方言 グロス
ツ祖*kala *kala-ŋ qal qalŋ 氏族・係累[2]
ツ祖*laamos *lamos lams [2]
ツ祖*kalïmV *kalïmV qalm [3]
tanggu *ńe-taŋku または *ni-taŋku nyrhangk 1-100[4]

先ニヴフ祖語の *ay は、少なくとも語末において、ニヴフ祖語の *i に変化している。

周辺言語に残る *ay > *i の痕跡
周辺言語 先ニヴフ祖語 アムール方言 樺太方言 グロス
樺太アイヌ語tunakay *tVla-ŋa-y tlangi トナカイ[4]
アイヌ語opokay *obo-ŋa-y vongi シベリアジャコウジカ[5]

子音

[編集]

先ニヴフ祖語の *n は、ニヴフ祖語において語末で *ŋ に変化していると考えられている。

無標語末鼻音の軟口蓋化の痕跡
周辺言語 先ニヴフ祖語 アムール方言 樺太方言 グロス
モ祖*morï/n ~ *murï/n→ツ祖*murï/n *murin mur/ng murng [6]
aisin<*aysïn *aysïn ays/ng, ays aysng > ayzng [7]

先ニヴフ祖語の *t, *d は、それぞれ対応する R 音である rh, r へのロータシズムを経験していると考えられている。

歯茎閉鎖音のR音化の痕跡
周辺言語 先ニヴフ祖語 アムール方言 樺太方言 グロス
*urangka-ta, 樺アorakata *uraŋata > *oran-gata > *orŋar̥ orngerウィルタウリチ orngarh ウリャンカイ[8]

ニヴフ祖語は流音 *r も再建できると考えられる。

*r の証拠
周辺言語 先ニヴフ祖語 アムール方言 樺太方言 グロス
ツ祖*oro-g-ta *orota ororh チョウセンニンジン[9]

言語考古学

[編集]

冶金

[編集]

アムール語族の冶金語彙には本来語とみられるものが豊富に存在し、アムール祖語はおそらく「銀」「銅」「錫」などを一つの本来語で表すことができる。このことから、ユハ・ヤンフネンは、アムール祖族は金属の生産・加工にかかわる独自の知識を有していたと推測している[10]

言語接触

[編集]

先アムール祖語は周辺諸言語とさまざまな借用語をやり取りしているが、借用方向は決定しがたいことも多く、また、どのような言語接触のために借用が発生したのか不明瞭なことも多い[1]

ツングース語族

[編集]

先アムール祖語は、とくにツングース語族と強い言語接触を行っており、借用語に規則的な音対応を与えることができる。 ツングース祖語とアムール語族の接触に関する初期の研究は、E.A. Kreinovich, V.Z. Panfilov, そしてゲルハルト・デルファー英語版と Alexandr Pevnov によるものである。

モンゴル語族

[編集]

先アムール祖語はモンゴル語族とも言語接触を行っている。

アイヌ語族

[編集]

アムール語族はアイヌ語族とも言語接触を行っている。このことから、アレキサンダー・ヴォヴィンはアムール語族がオホーツク文化とともに北海道にまで進出した可能性があるとしており[11]、ユハ・ヤンフネンもその可能性を認めている[10]

出典

[編集]

注釈

[編集]

脚注

[編集]

参考文献

[編集]
  • Juha, Janhunen (2016), “Reconstructio externa linguae ghiliacorum”, Studia Orientalia, p. 3ー27 
  • Austerlitz, Robert (1972), “Reconstructio interna linguae ghiliacorum” 
  • Vovin, Alenxander (2016), “The linguistic prehistory of Hokkaido” 

1980 1982 1984a 1984b 1990 1994 体系A 1976 1989 借用A 2008 2014 借用J