労働ビッグバン
労働ビッグバン(ろうどうビッグバン)とは、第1次安倍内閣において提唱された、労働市場改革の総称である。
多くは第1次安倍内閣では実現できなかったが、いくつかは後の内閣において実現された。
ビジョン
[編集]小泉内閣で構造改革を主導した竹中平蔵は、第1次安倍内閣発足に際し、労働市場の構造改革「日本版オランダ革命」を安倍晋三首相に提言[1]。これを受け、内閣府経済財政諮問会議において、再チャレンジ政策の一環として「労働ビッグバン」が提唱された[1]。
改革の主導者であった労働経済学者・八代尚宏は、2006年12月18日に行われた内閣府の労働市場改革などに関するシンポジウムで、「正社員と非正規社員(派遣社員・契約社員・嘱託社員等)の格差是正のため、年功賃金の見直し等、正社員と非正規社員の賃金水準の均衡化に向けた方向での検討も必要」「既得権を持っている大企業の労働者が、(下請け企業の労働者や非正規社員など)弱者をだしにしている面がかなりある」と述べ、「同一労働同一賃金」の徹底を訴えた[2]。
改革の骨子は以下のようなものである。
結果
[編集]内閣は後に年金記録問題に追われることとなったため、提出された法案は第1次安倍内閣においては成立させることはできなかった。
竹中平蔵は、著書の中で「既得権益を失う労働組合や、保険や年金の負担増を嫌う財界の反対で頓挫した」と述べている[8]。
その後
[編集]2007年の福田康夫内閣では労働契約法が改正され、以下が立法化された。
- 有期労働契約が5年を超える場合、これを期間の定めのない労働契約に転換できる権利を得る(無期転換申込権)。
2012年の民主党政権下では、以下が立法化された。
2014年には、過労死等防止対策推進法が議員立法で成立。
- 労働時間短縮、年休取得、産業精神保健対策について数値目標を掲げた。
- 国は、過労死等に関する情報の収集・整理・分析・提供を行うとされた。
2017年の第4次安倍内閣では働き方改革関連法が成立し、それにより以下の政策が立法化された。
- 同一労働同一賃金の推進
- 高度プロフェッショナル制度の導入
- 時間外労働の上限規制
- 有給休暇の消化義務
脚注
[編集]- ^ a b c 竹中平蔵『「改革」はどこへ行った?―民主党政権にチャンスはあるか―』(東洋経済新報社、2009年)
- ^ 『毎日新聞』2006年12月19日付
- ^ 経済財政諮問会議 2007.
- ^ a b c d 八代尚宏『労働市場改革の経済学 正社員「保護主義」の終わり』(東洋経済新報社、2009年)
- ^ 言論NPO 竹中平蔵氏 第4話:「社会主義を目指して改革を進めているのではない」
- ^ 「改革の配当」を活用して持続可能な経済システムの構築を
- ^ “いまこそ小泉構造改革に学ぶとき―八代尚宏(国際基督教大学客員教授)”. 月刊誌『Voice』 (2012年9月18日). 2012年11月28日閲覧。
- ^ 竹中平蔵、幸田真音『ニッポン経済の「ここ」が危ない!―最新版・わかりやすい経済学教室』(文藝春秋社、2008年)
関連項目
[編集]- ワッセナー合意
- 働き方改革関連法
- 格差社会
- 同一労働同一賃金
- ワークシェアリング
- フレキシキュリティ
- 金融ビッグバン
- 正規社員の解雇規制緩和論
- 規制改革会議#労働分野
- 日本の経済
- 日本の職場環境
- 日本的経営
- 終身雇用
- 新卒一括採用
- 年功序列
- 日本の労働運動史
- 労働三法
- サラリーマン
- 日本のブルーカラー労働者
- 非正規雇用
- 景気後退
- 日本型社会主義
- 就職活動
- 長時間労働
- 過労死
- 格差社会
- 働き方改革実現会議
- 日本経済団体連合会
- ホワイトカラーエグゼンプション
- 裁量労働制
- 45歳定年制
- ジョブ型雇用