北川健太郎
北川 健太郎(きたがわ けんたろう[1]、1959年〈昭和34年〉9月14日 - )は、日本の元検察官、弁護士(大阪弁護士会所属)。大阪高等検察庁次席検事や、最高検察庁刑事部長、大阪地方検察庁検事正等を務め、検事時代は「関西検察のエース」として名を馳せた[2]。
来歴
[編集]石川県出身[3][4]。石川県立金沢泉丘高等学校卒業[5]。金沢大学法文学部卒業[3]。1982年に旧司法試験合格[6]。1985年に最高裁判所司法研修所修了(37期)[5]、検察官任官[3][7]。1985年4月、東京地方検察庁検事[8]。
1995年3月、在中国日本国大使館一等書記官(外務省出向)[8]。 2009年10月に大阪地方検察庁刑事部長[6]。2011年に大阪高等検察庁刑事部長[9]。2012年8月に那覇地方検察庁検事正[8][10]。
2013年に最高検察庁検事[11]。2014年1月に大阪地方検察庁次席検事[8][12]。2015年12月に大阪高等検察庁次席検事[8][13]兼法務総合研究所大阪支所長。2017年に最高検察庁監察指導部長・刑事部長[8][14][15]。
2018年2月から2019年11月まで大阪地方検察庁検事正を務めた[3][4][16][17][18]。2019年11月に退官[19][20][注 1]。
2020年に大阪弁護士会に弁護士登録[20]、弁護士法人中央総合法律事務所オブカウンセル[5][21]、ロイヤルホテル[要曖昧さ回避]監査役[22]、NCホールディングス取締役(監査等委員)[6][23]、徳島市専門委員。2023年に国立大学法人神戸大学理事(非常勤)[8]。
2024年、準強制性交の罪で逮捕・起訴される。
人物
[編集]検察官の頃は関西圏での勤務が長い「関西検察のエース」として知られた[24]。
退官後は弁護士登録した。所属する法律事務所のホームページでは、「34年余りにわたる検事として得た捜査・公判、行政、組織マネジメント等の知識・経験を役立てられる業務を開拓してゆきたい」として、取扱業務としては「企業刑事法務、危機管理、コンプライアンス[要曖昧さ回避]」が書かれている[1]。
気さくな人柄で知られ、上下分け隔てなく親しく人に接し、「けんちゃん」と呼ばれ慕われた。その反面、脇の甘いところもあり、2000年高知地検から大阪高検に転勤するとき、地元の担当記者が送別会を催してくれた時、酔って妻が同席しているのをすっかり忘れ、女性記者との馴れ馴れしい姿を見せてしまい、お詫びに妻にブランドバックをプレゼントするなどのエピソードもある[25]。
主な功績
[編集]- 大阪地方検察庁検事正であった2019年3月、犯罪被害者支援を目的に同地検と大阪弁護士会が協力し、犯罪被害者が検察による捜査段階から弁護士のサポートを受けることのできる取組みをスタートさせた[2]。
- 大阪地検検事正在任中、佐川宣寿元国税庁長官らを不起訴処分とした学校法人森友学園への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題などの捜査を指揮した[7]。
不祥事
[編集]2024年6月25日午後、大阪高検が「北川を準強制性交容疑で通常逮捕した」と発表した[7][26][27]。逮捕容疑について、大阪高検の小橋常和・次席検事は「被害者のプライバシーがある。特定につながることは一切差し控える」と繰り返し、時期や場所、被害者との関係性など内容の詳細を公表しなかった[注 2][27]。同日、弁護士法人中央総合法律事務所代表の中務正裕は「本日付で北川健太郎弁護士とのオブカウンセル委嘱を解消した」とウェブサイトで報告した[28]。
同年6月26日、逮捕容疑は「北川が検事正在任中、入居していた大阪市内の官舎で酒に酔った部下の女性に性的暴行をした疑いである」ことが、関係者への取材で分かった[注 3][4][18][29]。同日、NCホールディングスは「6月27日に開催する定時株主総会で提案する予定だった北川を取締役に再任するとの議案を撤回する」と発表した[23]。同日、大阪地裁は7月5日まで10日間の勾留を決めた[20]。同年7月5日、大阪地裁は北川の勾留を10日間延長し、15日までとする決定をした[30]。同年7月12日、大阪高検は北川を準強制性交罪で起訴した[31]。同日に大阪高検の小橋常和が報道陣を集めて説明会を行い、事件概要を説明、捜査の経緯について「今年2月に女性から検察幹部に被害の相談があり、その後に明確な処罰意思が示されたことで4月から捜査を本格化させた。検察として隠蔽と言われるようなことは一切ない」と述べた[18]。
初公判が同年10月25日、大阪地裁で始まり、北川被告は起訴事実を認め、罪状認否で「起訴事実を争うことはいたしません。被害者に深刻な被害を与えたことを反省し、謝罪したい」と述べた[32]。
北川は酒に酔って抵抗できない状態だった部下の女性検事に性的暴行を加えた。事件当日、飲食店で女性らと検事正就任の懇親会を開いた後、酔って歩けない女性をタクシーに押し込んで官舎に連れ込み、性的暴行を加えた。目を覚ました女性に「これで俺の女だ」と述べ、性的暴行を続けたとされる[33]。
同年12月10日、北川が次回公判で一転して無罪を主張することが分かった[34]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 北川は大阪地検検事正を最後に退官したが、定年退職までに数年を残しており、組織内には退官時期を不審に思う声もあったという[4]。『現代ビジネス』の取材に検察幹部は「検事長ポストを目前にした北川が定年を前に辞めざるを得なかったのは、今回の事件に関連した女性問題が理由だった」と述べている[1]。
- ^ 大阪高検が容疑内容を公表しないことについて、ジャーナリストの大谷昭宏は「性犯罪の被害者のプライバシー保護は必要だが、容疑内容を一切公表しないのは公権力の行使として許されない。プライバシーに配慮しつつ、事件の日時などできる限り情報を公開すべきだ」と述べている[27]。
- ^ 北川は大阪高検の逮捕前の調べに対し、「(女性の)同意があったと思った」という趣旨の供述をしていたという[20]。北川は2018年9月12日夜、女性を含む同僚ら数人と飲食店で酒を飲んだ後、官舎に移動した[18]。事件時は女性と2人きりだった[18]。
出典
[編集]- ^ a b c “【独自】女性検事を性的暴行か「大阪地検トップ逮捕」の衝撃…定年前の退職は「女性問題」だった《部下への準強制性交、女性新聞記者との親密すぎる関係》”. 現代ビジネス (2024年6月26日). 2024年6月27日閲覧。
- ^ a b c “「本人で間違いないですか?」〝関西検察エース〟元大阪地検検事正の逮捕に衝撃広がる”. 産経ニュース (2024年6月25日). 2024年6月25日閲覧。
- ^ a b c d “「国民の負託に応えたい」大阪地検検事正が着任会見”. 産経ニュース (2018年3月2日). 2023年2月10日閲覧。
- ^ a b c d “逮捕の元大阪地検検事正、官舎で酒に酔った後輩女性に性的暴行か”. 産経ニュース (2024年6月26日). 2024年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月26日閲覧。
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- ^ a b c “取締役の選任に関するお知らせ” (PDF). NCホールディングス株式会社. IR情報. p. 2 (2020年4月21日). 2020年5月27日閲覧。
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- ^ a b c d e f g “役員・監事 プロフィール”. 国立大学法人 神戸大学 (2023年4月1日). 2023年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月4日閲覧。
- ^ “人事、法務省”. 日本経済新聞 (2011年5月30日). 2018年12月3日閲覧。
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- ^ “2017.6.23付 法務省人事”. 日本法総合オンラインサービス[ウエストロー・ジャパン]. 法曹界人事 (2017年6月23日). 2018年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月3日閲覧。
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- ^ “【速報】元大阪地検のトップで弁護士の北川健太郎容疑者を逮捕 準強制性交の疑い 大阪地検の検事正・最高検察庁の刑事部長など歴任”. TBS NEWS DIG (2024年6月25日). 2024年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月26日閲覧。
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- ^ 北川 健太郎 (きたがわ けんたろう)弁護士法人中央総合法律事務所[リンク切れ]大阪弁護士
- ^ “役員の異動に関するお知らせ” (PDF). ロイヤルホテル. 企業・IR情報. p. 1 (2020年5月13日). 2020年5月27日閲覧。
- ^ a b “元検事正の取締役再任案を撤回 逮捕報道受けベルトコンベヤー大手”. 産経ニュース (2024年6月26日). 2024年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月26日閲覧。
- ^ 「〔ひと&こと〕関西検察立て直したエース 地方大出身の星となるか」『エコノミスト』第95巻第32号(通号4513)、毎日新聞出版、2017年8月22日、111頁、国立国会図書館書誌ID:000000002178-i4822093、 オリジナルの2018年12月3日時点におけるアーカイブ、2018年12月3日閲覧。
- ^ “準強制性交容疑で逮捕の元大阪地検トップ 「えらい高くついた」と検察仲間に漏らした“過去の女性問題””. NEWSポストセブン (2024年6月27日). 2024年8月10日閲覧。
- ^ “【速報】元大阪地検検事正「準強制性交等」の疑いで逮捕 弁護士の北川健太郎容疑者 「誠に遺憾」と高検(関西テレビ)”. Yahoo!ニュース (2024年6月25日). 2024年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月25日閲覧。
- ^ a b c “「関西検察では神」だった元検事正 定年前の退官「早すぎ」との声も”. 朝日新聞 デジタル (2024年6月25日). 2024年6月26日閲覧。
- ^ “最新情報 NEWS”. 弁護士法人中央総合法律事務所 (2024年6月25日). 2024年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月26日閲覧。
- ^ “元大阪地検検事正、官舎で部下に性的暴行か”. 京都新聞 (2024年6月26日). 2024年6月26日閲覧。
- ^ “準強制性交疑い、元検事正の勾留を延長 15日まで”. 産経ニュース (2024年7月5日). 2024年7月12日閲覧。
- ^ “元大阪地検検事正を準強制性交罪で起訴 「関西検察のエース」が刑事裁判の被告人に”. 産経ニュース (2024年7月12日). 2024年7月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月12日閲覧。
- ^ “元大阪地検検事正、部下の女性への暴行認める…「起訴事実を争うことはいたしません」”. 読売新聞オンライン (2024年10月25日). 2024年10月25日閲覧。
- ^ “部下に性的暴行の元大阪地検検事正「深く反省し謝罪したい」…初公判、起訴事実認める”. 読売新聞オンライン (2024年10月25日). 2024年11月2日閲覧。
- ^ “元大阪地検検事正、一転して無罪主張へ 部下に性的暴行”. 日本経済新聞 (2024年12月10日). 2024年12月10日閲覧。
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