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南アラビア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
南アラビア

جنوب الجزيرة العربية (アラビア語)
南アラビアの地図
南アラビアの地図
イエメンの旗 イエメン
サウジアラビアの旗 サウジアラビア
オマーンの旗 オマーン

南アラビア(みなみアラビア、アラビア語: جنوب الجزيرة العربية‎)は、現在のイエメン共和国を中心とする西アジアアラビア半島南部地域からなる歴史的地域である。歴史的に見れば現在のサウジアラビアにあるナジュラーンジーザーンバーハアスィール、現在のオマーンドファールも含まれている。

南アラビアには、近年の政治的境界を越えて、独特の言語的、民族的親和性、伝統や文化を持つ人々が住んでいる。現在では使われなくなった古代南アラビア語と、無関係な現代南アラビア語の2つの固有の言語グループがあり、どちらもセム語族に属する。

何千年もの間、インド洋交易ルートの一部として機能しており[1]、南アラビアの範囲内にオマーン帝国が誕生したことから[2]、インドとアフリカ東岸、マダガスカルとの結びつきは強化されるに至った。

イエメンの語源

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南アラビアはイエメンを指して使われることが多い。この節ではイエメンの語源について述べる。

イエメンに対する古くの呼び方に「ヤムナート」がある。この言葉は古代の南アラビアの碑文に、第二次ヒムヤル王国の王の一人であるシャンマル・ヤルアシュ2世の称号として記されており、正確にはアラビア半島の南西部の海岸線と、アデンからハドラマウトにかけての南部の海岸線を指していたのだと思われる[3][4][5][6]。ある語源では、イエメンは「南」を意味するymntに由来し、「右側の土地(𐩺𐩣𐩬)」という概念に大きく関わっている[7]。他の資料では、イエメンは「幸福」や「祝福」を意味するヤムン(yamn)またはユムン(yumn)が元になっているとされる[8][9]。ローマ人はArabia Deserta英語版(砂漠のアラビア)に対してArabia Felix(肥沃な/幸福の アラビア)と呼んだ。古典ラテン語ギリシア語の作家たちは、南アラビア(古代イエメン)のことを「インド」と呼んだ。「インド」という言葉が使われるようになったのは、ペルシア人が南アラビアで接触したアビシニア人を、アビシニア人が生活する地域の隣で住んでいたクシ族、つまりインド人の名前で呼んでいたことに由来する[10]

歴史

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3000年前、南アラビアにはマイーン王国英語版カタバーン王国英語版ハドラマウト王国英語版サバア王国といった古代国家が存在していた[11]有名なマリブのダム英語版国際的な香の貿易ルート英語版、伝説的なシバの女王などがこの時代を象徴するものとなっている[12]。2000年前、ヒムヤル王国が南アラビアの支配者となり、数世紀にわたってこの地域を支配した。エチオピアアクスム王国は3世紀から4世紀にかけて南アラビアを侵略し、その後6世紀にはカレブ王英語版がこの地域を征服した(520年頃)。その後アクスム王国は575年頃、同じく海路でやってきたペルシャサーサーン朝軍に追い払われた[13][14][15][16]。半世紀後のA.H.6年(628年)、この地域はイスラム教により支配された[17]

古代南アラビア

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古代の南アラビア地域の王国と呼称:

イスラーム以前の外国の占領者たち:

南アラビア・イスラーム王朝

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近世・植民地時代の南アラビア

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近現代の南アラビア

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イエメン独立後:

イエメン共和国以外の南アラビア

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脚注

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  1. ^ Indian Ocean Trade Routes”. 2023年8月18日閲覧。
  2. ^ William the Rebel: Musandam: The isolated land of the Shihuh” (19 December 2016). 2023年8月18日閲覧。
  3. ^ Jawād ʻAlī (1968) (アラビア語). [Detailed history of Arabs before Islam]. 1. Dār al-ʻIlm li-l-Malāyīn. p. 171 
  4. ^ Neuwirth, Angelika; Sinai, Nicolai; Marx, Michael (2010) (英語). The Qur??n in Context: Historical and Literary Investigations Into the Qur??nic Milieu. BRILL. ISBN 9789004176881. https://books.google.com/books?id=GcgCErhKGrAC&pg=PA33 
  5. ^ Burrowes (2010), p. 145
  6. ^ Smith, William Robertson. Kinship and Marriage in Early Arabia. p. 193. ISBN 1117531937. "He was worshiped by the Madhij and their allies at Jorash (Asir) in Northern Yemen" 
  7. ^ Beeston, A.F.L.; Ghul, M.A.; Müller, W.W.; Ryckmans, J. (1982). Sabaic Dictionary. University of Sanaa, YAR. p. 168. ISBN 2-8017-0194-7. https://archive.org/stream/mo3sab/Sabaic.Dictionary-pages-OCR#page/n0/mode/2up 
  8. ^ Vladimir Sergeyevich Solovyov (2007). Enemies from the East?: V. S. Soloviev on Paganism, Asian Civilizations, and Islam. Northwestern University Press. p. 149. ISBN 9780810124172. https://books.google.com/books?id=0J6oJjgvefQC&q=yemen+means+blessed&pg=PA149 
  9. ^ Edward Balfour (1873). Cyclopædia of India and of Eastern and Southern Asia, Commercial, Industrial and Scientific: Products of the Mineral, Vegetable and Animal Kingdoms, Useful Arts and Manufactures, Band 5. Printed at the Scottish & Adelphi presses. p. 240. https://books.google.com/books?id=d9UBAAAAYAAJ&q=yemen+means+felicity&pg=RA1-PA240 
  10. ^ Origin Of Islam In Its Christian Environment Bell, Richard p.g 34
  11. ^ Brian Doe, South Arabia (London: Thames & Hudson 1971) at 60–102.
  12. ^ Jean-Francois Breton, Arabia Felix (University of Notre Dame 1999) at 13–20, 23; 53–73; 3–5, 41–43.
  13. ^ al-Tabari, The History of al-Tabari, volume V, The Sasanids, the Byzantines, the Lakmids, and Yemen (S.U.N.Y. 1999), in Yemen: Ethiopian conquest at 179, 182–183, 204–208, 212; Persia over al-Habashah at 159–160, 236–249.
  14. ^ Stuart Munro-Hay, Aksum. An African civilization of late antiquity (Edinburgh Univ. 1991) at 71–74, 76–77 (3rd century), at 78–80 (4th century), at 84–88 (6th century).
  15. ^ Sally Ann Baynard, "Historical Setting" in The Yemens: Country Studies (Washington, D.C.: Foreign Area Studies, The American University, c.1985) 1–89, at 3–14: Ethiopians at 11–12 (4th century for 4 decades, 6th century for about 50 years); Persians at xiii, 12.
  16. ^ Guy Annequin, Little-Known Civilizations of the Red Sea (Geneva: Ferni 1979) at 196–202.
  17. ^ al-Tabari, The History of al-Tabari, volume VIII, The Victory of Islam (S.U.N.Y. 1997) at 114 (became Muslim).