南海8200系電車
南海8200系電車 南海6200系電車(50番台) | |
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基本情報 | |
製造所 | 東急車輛製造 |
製造年 | 1982年 - 1985年 |
製造数 | 18両 |
改造所 | 南海電鉄千代田工場 |
改造年 | 2013年 - 2015年 |
改造数 | 18両 |
消滅 | 2015年(8200系) |
主要諸元 | |
編成 | 6両編成 |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 |
直流1,500 V (架空電車線方式)[1] |
最高運転速度 | 100 km/h |
設計最高速度 | 115 km/h(8200系)[1] |
起動加速度 |
2.5 km/h/s (乗車率 200 % まで一定)[1] |
減速度(常用) |
3.7 km/h/s (乗車率 200 % まで一定)[1] |
減速度(非常) |
4.0 km/h/s (乗車率 200 % まで一定)[1] |
車両定員 |
160人(先頭車)[1] 170人(中間車)[1] |
車両重量 |
26 t(先頭車・8200系)[1] 38 t(中間車・8200系)[1] |
最大寸法 (長・幅・高) |
20,825 mm × 2,740 mm × 4,000 mm(先頭車)[1] 20,725 mm × 2,740 mm × 4,130 mm(集電装置付き中間車)[1] 20,725 mm × 2,740 mm × 4,000 mm(集電装置なし中間車)[1] |
車体 | ステンレス鋼 |
台車 |
S形ミンデン式ダイレクトマウント空気ばね台車 FS-392B・FS-092[1][2] |
主電動機 |
直流複巻電動機 MB-3280-AC[1] かご形三相誘導電動機 TDK-6314-A(6200系50番台)[2] |
主電動機出力 |
160 kW[1] 200 kW(6200系50番台)[2] |
駆動方式 | WNドライブ[1] |
歯車比 | 85:16(5.31)[1] |
編成出力 |
2,560 kW 2,400 kW(6200系50番台) |
制御方式 |
界磁チョッパ制御[1] IGBT素子VVVFインバータ制御(6200系50番台)[3] |
制御装置 |
FCM-218-15MRDH[1] VFI-HR1421A(6200系50番台)[2] |
制動装置 |
回生・発電ブレーキ併用 電磁直通ブレーキHSC-R (応荷重装置付)[1] 回生ブレーキ併用 電磁直通ブレーキHSC-R(応荷重装置・遅れ込め制御付) 全電気ブレーキ(6200系50番台)[2] |
保安装置 | 南海型ATS |
南海8200系電車(なんかい8200けいでんしゃ)とは、南海電気鉄道が保有する一般車両(通勤形電車)の一系列である。1982年に営業運転を開始した。
本項では、更新車である南海6200系電車50番台(なんかい6200けいでんしゃ50ばんだい)についても記述する。
以下では、難波方先頭車の車両番号 +F(Formation=編成の略)を編成名として表記する。
概要
高野線区間運転用として開発された、20m級4扉オールステンレス車体の一般車両である。三日市町駅 - 橋本駅間の複線化工事の進展に合わせ、1982年から1985年にかけて6両編成3本が東急車輛製造で製造された。
1975年に試作された電機子チョッパ制御車である8000系の使用実績を踏まえた上で、8000系と同様に電機子チョッパ制御を採用した車両を導入するか、界磁チョッパ制御を採用した車両を導入するかが検討された。製造費、電力費、勾配線における回生効率、平坦区間での高速走行特性等を考慮して、総合的に低コストな界磁チョッパ制御が南海で初めて採用された。
全ての編成が登場時より6両固定編成だが、導入当時は基本組成を2M2Tの4両または4M2Tの6両とし、それらの組み合わせで4・6・8・10両と多様な編成を組めることを目指していた[4][注 1]。
2013年以降、更新工事(後述)を受け、現在は製造された18両すべてが6200系50番台へ編入されている。
車体
外観の基本的なスタイルは6200系を踏襲するが、有限要素法による軽量ステンレス構造を採用したため、内部構体が全面的に見直されている。これにより6200系と同等の強度、剛性を保ちながら一段と軽量化が進められている。車体断面は屋根肩部に丸みを出し、柔らかさが感じられるよう工夫している。
窓配置は6200系と同様で、制御車がd1D2D2D2D1、中間電動車が1D2D2D2D2(d:乗務員室扉、D:側引戸)、中間電動車は車端部の窓が1枚の方が難波寄りとなる。側面のコルゲーションも6200系と同一である。
前面は6200系の三面切妻構造を基本に、外周部にFRP製の縁飾りを取り付けて、俗に額縁スタイルと呼ばれる正面形状にしている。また前面窓は下辺を引き下げて大型化したため、前照灯の位置もその分低く取られており、部品構成は変わらないものの全体的に6200系とは印象の異なる前面デザインとなった。貫通扉の下部には初めて車号板を設置し、編成の判別を容易にしている。なお、最終増備の8705Fでは9000系の意匠が細部に取り入れられ、前面縁飾りが9000系同様シャープな形状となっている[6][注 2]。
竣工当初は各編成とも無塗装仕上げであったが、関西新空港開港に伴うCI戦略によりオレンジと青のストライプを貼付した現行塗装に変更されている。
客室
アコモデーションも6200系に準じたシンプルなオールロングシートであるが、車内各部の金属面や小ネジ類の露出を極力少なくして細部の見付け向上を図っている。また出入口部の床材には滑り止めを設け、乗降時の安全性に配慮している。8703Fからは吊り手棒受けの形状が変更されている[7]。
戸閉機は、単気筒複動Vベルト方式で小型軽量化された東洋電機製造製Y1-E-M形を採用し、従来の左右独立差動方式から大幅な低騒音化を実現した。
冷房装置は従来通り冷凍能力10,500 kcal/h (12.2 kW)の三菱電機製CU-191A形集約分散式を各車4基ずつ搭載[1]し、客室天井には混雑時の冷房効率を高めるため、三菱電機開発のラインデリアを新たに4台設けている[1]。なお、8705Fはロータリーコンプレッサー搭載のCU-191B形に変更されている[6]。
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無塗装時代の8200系
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8200系 車内
主要機器
制御装置
制御装置は三菱電機製FCM-218-15MRDH形[1]で、モハ8201形奇数車に2基の東洋電機製造製PT-4803-A-M形下枠交差式パンタグラフ[1]とともに搭載する。この制御装置は通常の電動カム軸式抵抗制御器とGTOサイリスタ素子による界磁チョッパ装置とのペアで構成され、抑速ブレーキ時も含め回生ブレーキに対応する。発生電圧過大等による回生失効時は、車載抵抗器による発電ブレーキに自動的に切り替わる機構を搭載し、非常時のフェイルセーフを確保する設計となっている。
1984年3月竣工の8703Fからは力行直並列切り替え時の前後動ショック防止策がなされた[6]ほか、1987年11月には各編成の界磁チョッパ装置にモニタ装置が追加された[8]。
主電動機
界磁チョッパ装置の動作の関係で、直流複巻電動機の三菱電機製MB-3280-AC形(端子電圧375V時、定格出力160kW)が装架される[1]。駆動装置はWN式平行カルダンドライブ方式[1]、歯数比は85:16(5.31)である[1]。
台車
6200系と同様、2枚の板ばねで軸箱を支持するS形ミンデン台車の住友金属工業製FS-392B形(電動車)・092形(制御車)を装備する[1]。
ブレーキ装置
HSC系電磁直通ブレーキに回生ブレーキとの同期機能を付加したHSC-R形を搭載する[1]。
空気圧縮機
6200系のものと同じ容量ながら、低騒音で保守が比較的容易な新設計の空気圧縮機を採用した。
製造
6両固定編成が3編成、合計18両が製造された。
形式
- クハ8701形 - 制御車。
- モハ8201形 - 中間電動車。奇数車と偶数車でペアを組む1C8M制御。
← 難波 橋本・和泉中央 →
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形式 | クハ8701 (Tc1) |
モハ8201 (M1) |
モハ8201 (M2) |
モハ8201 (M1) |
モハ8201 (M2) |
クハ8701 (Tc2) |
竣工 |
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搭載機器 | CONT, PT×2 | MG, CP | CONT, PT×2 | MG, CP | |||
車両番号 | 8701 | 8201 | 8202 | 8203 | 8204 | 8702 | 1982年3月10日 |
8703 | 8205 | 8206 | 8207 | 8208 | 8704 | 1984年3月12日 | |
8705 | 8209 | 8210 | 8211 | 8212 | 8706 | 1985年8月8日 |
- 凡例
- CONT:制御装置(界磁チョッパ制御)
- MG:電動発電機
- CP:空気圧縮機
- PT:集電装置
6200系50番台
界磁チョッパ装置の交換用部品が需要の減少とともに製造されなくなると、部品調達が徐々に困難な状況になった。そのため、8200系の更新にあたっては界磁チョッパ制御の継続使用を断念し、6200系4両編成と同様のVVVFインバータ制御に変更することになった[9][10][3]。6200系4両編成に続いて2013年から更新工事が開始されたが、この際に他系列との併結制限が解除され6200系6両編成と同等の汎用性を有するようになることから、同時に形式が変更され6200系50番台となった。
更新工事
施工内容は6200系4両編成の更新工事と基本的に同じであるが、種車の関係で一部の内容が見直されている。
- 制御方式を界磁チョッパ制御から8000系 (2代) に準じたIGBT素子VVVFインバータ制御(1C4M方式)に変更
- 主電動機を直流複巻電動機からかご形三相誘導電動機(東洋電機製造TDK-6314-A形・定格出力200 kW)に換装
- 電動発電機(BLMG)を静止形インバータ(SIV)に更新(6200系4両編成より1基あたりの容量増)
- 空気圧縮機を交流駆動に変更(一部は直流駆動の従来品を改修・再用)
- 難波方から2両目の車両につき橋本方の集電装置を撤去
- 難波方から3両目の車両を電装解除し付随車化
- 両先頭車へのスカート・電気連結器設置
- 先頭台車への増粘着剤噴射装置設置
- LED式車内案内表示器・ドアチャイム・開扉誘導鈴・扉開閉警告ランプ・扉開閉予告放送[注 3]の設置
- 座席端の仕切りパイプの形状と化粧板の変更
- 車椅子スペースの設置(各車両の橋本寄り出入口付近)
- 客室灯をLED照明に交換(6553Fのみ。他の更新済み2本は追って改造[10])
なお、戸閉機は既存搭載品を流用しているため、6200系4両編成で採用された戸閉減圧機構は装備していない。
更新工事により6000系・6300系の2両と併結し8両編成を組むことが可能になった[11]。また他車との併結時には自動的に相手車両を識別するとともに、制御方式の違いによる加減速性能の不統一を避けるため、自車の運転特性を併結相手に合わせる機能が搭載された[9]。
2013年11月に8703Fから改造された6551Fが更新工事を終えて出場し、営業運転を開始した[12]。その後2014年10月に6552F(元8705F)が、2015年10月には6553F(元8701F)がそれぞれ更新工事を終えて営業運転に就いている[13]。これにより8200系は形式消滅した。また、8000系 (初代) が既に日立製作所製の制御装置に載せ替えられていたため、南海で三菱電機製の制御装置を使用する車両もこれをもって無くなった。
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6200系50番台 車内
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車椅子スペース
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集電装置の撤去部分
編成表(更新工事後)
← 難波
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形式 | クハ6550 | モハ6270 | サハ6850 | モハ6250 | モハ6260 | クハ6560 |
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形式 | Tc1 | M3 | T | M1 | M2 | Tc2 |
搭載機器 | SIV | CONT, CP, PT×1 | CONT, CP, PT×2 | CONT | SIV | |
車両番号 | 6551 (8703) 6552 (8705) 6553 (8701) |
6271 (8205) 6272 (8209) 6273 (8201) |
6851 (8206) 6852 (8210) 6853 (8202) |
6251 (8207) 6252 (8211) 6253 (8203) |
6261 (8208) 6262 (8212) 6263 (8204) |
6561 (8704) 6562 (8706) 6563 (8702) |
- 凡例
- CONT:制御装置(VVVFインバータ制御)
- SIV:静止形インバータ
- CP:空気圧縮機
- PT:集電装置
※ 括弧内は改番前の車号。
「サハ685X」を名乗る形式は2代目となる[注 4]。なお、6200系50番台以降の新形式車については、系列のなかでの電動車・制御車・付随車等の付番を以前の「xxx1形」標準[注 5]から「xxx0形」標準へ変更している[14][15]。
運用
当初は高野線難波駅 - 三日市町駅間と泉北高速線で使用されていたが、1985年6月16日のダイヤ改正で林間田園都市駅まで、1995年9月1日のダイヤ改正で橋本駅まで入線可能となったため、現在では難波駅 - 橋本駅間と泉北高速線で使用される。
本系列は前述の通り、登場当初は多様な編成を組むことを想定していたが、6両編成3本のみの製造に留まったため、同形式・異形式かかわらず他車との併結は行われなかった。
更新工事により、従来通りの6両編成での単独運転のほか、6000系や6300系2両と併結した8両編成でも運転されるようになった[11]。このためモハ6250形には女性専用車両ステッカーが貼られている[注 6]。なおシステム上は6000系、6300系、6200系(未更新車・更新車とも)の4両と併結した10両編成も組成可能である[10]が、現行ダイヤでは10両編成で運転される列車がないため実績はない。
参考文献
- 花岡徹「南海高野線用8200系概説」『電気車の科学』第412号、電気車研究会、1982年8月、44-51頁。
脚注
注釈
- ^ このため搬入直後は先頭車に電気連結器を装備していた[5]が、運用上不要なため間もなく撤去された。電気連結器は後述の更新工事の際に改めて装備された。
- ^ このほか、車側灯も縦型のものが取り付けられた。なお、先に製造された2本については、後述の更新工事の際に縦型に改造されている。
- ^ 進行方向左側の扉開閉案内は女性の声、右側は男性の声と使い分けられている。8両編成での運転時は、本車両が後部に連結されている場合(下り列車)にのみ使用でき、またこの場合には、前部に連結されている車両(6000系・6300系)に対しても扉開閉が予告放送される。
- ^ 6100系の付随車だったサハ6851形は、6300系に改造された際にサハ64xx形へ改番されたため現存しない。
- ^ ただし11001系・21000系・30000系・31000系には、「xx100形」と付番された車両がある。これらは全て中間車で、初番もxx100番から始まっている。
- ^ 平日朝ラッシュ上り(難波行き)の8両編成の急行・区間急行(泉北高速線からの直通列車を含む)では、前から4両目の車両が女性専用車両となる。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac 『電気車の科学』通巻412号、p.45
- ^ a b c d e 「南海電気鉄道 現有車両主要諸元表」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、278-279頁。
- ^ a b 「南海電気鉄道 現有車両プロフィール2023」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、244頁。
- ^ 『電気車の科学』通巻412号、p.44
- ^ 藤井信夫『車両発達史シリーズ 6 南海電気鉄道 下巻』関西鉄道研究会、1998年、118頁に写真掲載。
- ^ a b c 「私鉄車両めぐり〔153〕南海電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1995年12月臨時増刊号(通巻615号)、電気車研究会、1995年、238-239頁。
- ^ 「私鉄車両めぐり〔130〕南海電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1985年12月臨時増刊号(通巻457号)、電気車研究会、1985年、191頁。
- ^ 「私鉄車両めぐり〔139〕 南海電気鉄道(補遺)」『鉄道ピクトリアル』1990年5月号(通巻527号)、電気車研究会、1990年、107頁。同誌85頁には当該モニタ装置の写真も掲載されている。
- ^ a b 「6200系6251型(旧8200系) 解説」『南海電鉄車両大全第1巻』南海電気鉄道、2017年、31-32頁。
- ^ a b c 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、55-56頁。
- ^ a b “【南海】6551編成、併結運転を開始”. 鉄道ホビダス (2013年12月18日). 2013年12月28日閲覧。
- ^ “南海6551編成が営業運転を開始”. 『鉄道ファン』交友社 railf.jp 鉄道ニュース (2013年11月30日). 2013年12月1日閲覧。
- ^ 「南海電気鉄道 現有車両履歴表」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、288-289頁。
- ^ 「大手私鉄車両ファイル 車両配置表」、『鉄道ファン』2016年8月号特別付録、交友社、2016年。
- ^ 『鉄道ダイヤ情報』第366号、p.44、交通新聞社、2014年10月号。