及川和男
及川 和男(おいかわ かずお、1933年10月13日 - 2019年3月10日)は、日本の作家。小説、ノンフィクション、児童文学など幅広く活動した[1]。日本文芸家協会、日本ペンクラブ、日本児童文学者協会、島崎藤村学会会員[2]。一関市立一関図書館名誉館長[3]。
生涯
[編集]東京府(現・東京都)池袋に生まれ、豊島区立池袋第五小学校入学後、本郷区立駒本国民学校に転校。1945年(昭和20年)の東京大空襲の後に福島県南会津郡檜原村へ疎開。その後、岩手県内を転々とし、1946年(昭和21年)12月から父の郷里である一関市に住むようになる[4]。1949年、一関市立一関中学校卒業。
1952年、岩手県立一関第一高等学校普通科を卒業後、岩手殖産銀行(現:岩手銀行)に入行、銀行員として勤務の傍ら小説を書く[1]。鈴木彦次郎に師事し[1]、1971年、「雛人形」が雑誌『民主文学』に掲載されてから、同誌を中心に活躍。そこに連載した長編『深き流れになりて』で、1975年に多喜二・百合子賞を受賞する。
1976年3月末に岩手銀行を依願退職してからは、作家専業となる[1]。
1980年代からは、岩手の地域に根差した作品も多く、沢内村の医療制度を作品化した『村長ありき』も評判になる。同作はNHKで放送、劇団銅鑼により『燃える雪』の題で劇化[1]、『いのちの山河』の題で映画化もされた。この他の及川の著書では、1993年の『米に生きた男』も『北の米』の題で日中合作ドラマ化されている。
1970年からは日本民主主義文学同盟に参加していたが、政治と文学の関係に深く傷つき、1987年に脱退している[1]。
1995年、一関市文化賞受賞。1998年から『北の文学』編集委員。2013年4月、一関市立一関図書館名誉館長就任。
三好京三とは旧制一関中学校以来の交友があり、1955年頃からは三好らとともに同人誌も出していた[1]。三好の没後、いちのせき文学の蔵の会長職を引き継いだ。
2019年3月10日、多臓器不全のため奥州市内の病院で死去。85歳没[5]。
受賞歴等
[編集]- 第7回多喜二・百合子賞(1975年、『深き流れとなりて』)
- 第39回青少年読書感想文全国コンクール 小学校高学年課題図書選定(1993年、『森は呼んでいる』)
- 第4回農民文化賞(1994年、『米に生きた男 日中友好水稲王=藤原長作』)
- 一関市文化賞(1995年)
- 第15回北の児童文学賞(1999年、『なんでも相談ひきうけます』)
- 第49回青少年読書感想文全国コンクール 小学校低学年課題図書選定(2003年、『いのちは見えるよ』)[6]
- 第1回いのちの灯文化賞(2010年)[2]
著書
[編集]- 「森が動く」の題で日本経済新聞に連載されていたものの書籍化
- 『愛したたかい生きる』(学習の友社) 1979
- 『ちいさな家族』(新日本出版社) 1979
- 『荒野を拓く教師たち 非行ゼロ・退学ゼロにいどむ水沢一高』(あゆみ出版) 1980
- 『希望水系』(新日本出版社) 1982
- 『村長ありき 沢内村深沢晟雄の生涯』(新潮社) 1984 のち文庫、のち改題『「あきらめ」を「希望」に変えた男』(日経ビジネス人文庫)
- 『春の岸辺』(みずち書房( 1984
- 『生命村長 深沢晟雄物語』(童心社、ノンフィクション・ブックス) 1985
- 『若きいのちへの旅 北の文学原風景』(労働旬報社、青春ライブラリー) 1986
- 『あらぐさの記』(青磁社) 1986
- 『わらび座修学旅行』(岩波ジュニア新書) 1987
- 『命見つめ望み抱き』(桐書房) 1987
- 『甲子園への遠い道』(北上書房) 1987
- 『鐘を鳴らして旅立て みどり学園療育記』(新潮社) 1989
- 『看護婦の文章読本』(桐書房) 1989
- 『かあさんは看護婦さん』(岩崎書店) 1989
- 『まぼろしのプレーボール』(岩崎書店) 1990
- 『いいお産、したい 小豆沢病院・立川相互病院産科チームの発信』(桐書房) 1991
- 『イーハトーヴ通信』(新潮社) 1992
- 『森は呼んでいる』(岩崎書店) 1992
- 『米に生きた男 日中友好水稲王 = 藤原長作』(筑波書房) 1993
- 『また来てマック』(岩崎書店) 1995
- 『白い森のふるさと』(岩崎書店) 1995
- 『テル、ごめんね』(岩崎書店) 1996
- 『なんでも相談ひきうけます』(岩崎書店、文学の泉) 1998
- 『佐藤輔子 藤村永遠の恋人』(本の森) 1999
- 『なみだの琥珀のナゾ』(岩崎書店、文学の泉) 2000
- 『いのちは見えるよ』(岩崎書店、いのちのえほん) 2002
- 『命見つめ心起こし 「生命村長」深沢晟雄スタディー』(れんが書房新社) 2010
- 『ザシキボッコの風』(本の泉社) 2011
- 『浜人(はんもうど)の森2011』(小坂修治さし絵、本の泉社) 2013
- 『心の鐘 文学の情景』(岩手日日新聞社) 2015
- 『戊辰幻影 みゆき女口伝』(れんが書房新社) 2015
共編著
[編集]- 『人間として看護婦として <ドキュメント>盛岡赤十字病院・看護改善の十年』(盛岡看護学セミナー共著、あゆみ出版) 1979
- 『誰のための銀行』(平田貞治郎共著、大月書店、大月フォーラムブックス) 1981
- 『リハビリ看護最前線 秋田・中通三院からのレポート』(編著、桐書房、ナーシングブックス) 1987
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g “及川和男さん”. 一関と文学. 2021年8月9日閲覧。
- ^ a b “深澤晟雄の会ニュース 第39号” (PDF). 特定非営利活動法人深澤晟雄の会 (2010年12月15日). 2021年8月9日閲覧。
- ^ “一関市立一関図書館”. PASSION+ (2015年). 2021年8月9日閲覧。
- ^ “一関市大東町摺沢の読書普及講演会” (2013年11月24日). 2021年8月9日閲覧。
- ^ “及川 和男氏”. 岩手日報社. (2019年3月11日) 2019年3月21日閲覧。
- ^ “過去の課題図書 第41回~第50回(1995年度~2004年度)”. 全国学校図書館協議会. 2021年8月9日閲覧。