合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク
合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク | |
---|---|
Combining Diacritical Marks for Symbols | |
範囲 |
U+20D0..U+20FF (48 個の符号位置) |
面 | 基本多言語面 |
用字 | Inherited |
主な言語・文字体系 | |
割当済 | 33 個の符号位置 |
未使用 | 15 個の保留 |
Unicodeのバージョン履歴 | |
1.0.0 | 18 (+18) |
3.0 | 20 (+2) |
3.2 | 27 (+7) |
4.1 | 28 (+1) |
5.0 | 32 (+4) |
5.1 | 33 (+1) |
公式ページ | |
コード表 ∣ ウェブページ |
合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク(ごうせいかのうなダイアクリティカルマーク、英語: Combining Diacritical Marks for Symbols)は、Unicodeの76個目のブロック。
解説
[編集]ダイアクリティカルマークのうち、数学記号などの記号に付けられたり、囲み文字などのように文字と結合して記号を形成するものが収録されている。
本ブロックに含まれる文字は全てダイアクリティカルマークのため、文字幅を持たない結合文字である。
Unicodeのバージョン1.0においては単に「記号用ダイアクリティカルマーク(Diacritical Marks for Symbols)」というブロック名で制定されていた[1]。
収録文字
[編集]コード | 文字 | 文字名(英語) | 用例・説明 |
---|---|---|---|
合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク | |||
U+20D0 | ⃐ | COMBINING LEFT HARPOON ABOVE | |
U+20D1 | ⃑ | COMBINING RIGHT HARPOON ABOVE | 数学や物理学においてベクトル[2]の表記に用いられる。
手書き文書などで見られる字形で、U+20D7 ⃗ COMBINING RIGHT ARROW ABOVEがより正式な字形である。 |
U+20D2 | ⃒ | COMBINING LONG VERTICAL LINE OVERLAY | 数学記号と共に用いられ、否定[2]を表す。
国際標準では数学記号の否定にはこの記号が用いられ、例えば含有を表す∈の否定は∉と表されるが、日本においてはしばしばこの記号の代わりにU+0338 ̸ COMBINING LONG SOLIDUS OVERLAYが用いられる。 |
U+20D3 | ⃓ | COMBINING SHORT VERTICAL LINE OVERLAY | 否定を表すU+20D2のまれな異体字[2]。 |
U+20D4 | ⃔ | COMBINING ANTICLOCKWISE ARROW ABOVE | |
U+20D5 | ⃕ | COMBINING CLOCKWISE ARROW ABOVE | 回転を表す[2]。 |
U+20D6 | ⃖ | COMBINING LEFT ARROW ABOVE | |
U+20D7 | ⃗ | COMBINING RIGHT ARROW ABOVE | 数学や物理学においてベクトル[2]の表記に用いられる。 |
U+20D8 | ⃘ | COMBINING RING OVERLAY | 積分記号(∫)に結合して線積分や面積分を表す。 |
U+20D9 | ⃙ | COMBINING CLOCKWISE RING OVERLAY | U+20D8について線積分の回転方向を指定する場合に用いられる。 |
U+20DA | ⃚ | COMBINING ANTICLOCKWISE RING OVERLAY | |
U+20DB | ⃛ | COMBINING THREE DOTS ABOVE | ニュートン力学において3階の微分[2]を表す。 |
U+20DC | ⃜ | COMBINING FOUR DOTS ABOVE | ニュートン力学において4階の微分[2]を表す。 |
囲み文字用ダイアクリティカルマーク | |||
U+20DD | ⃝ | COMBINING ENCLOSING CIRCLE | 丸囲み文字を形成するために用いられる。
丸囲み文字は主に手順の順序や、教育における問題の小問を表すのに用いられる。 拡張IPAでは不明瞭な音素を表すのに用いられ、例えばⒸであれば不明瞭な子音(consonant)を、Ⓝであれば不明瞭な鼻音(nasal)を表す。 ジョン・ドルトンの元素記号ではいくつかの元素が丸囲み文字で表される。 漢字に付けられるとしばしば書類などの分類のための略号として用いられることがある。 |
U+20DE | ⃞ | COMBINING ENCLOSING SQUARE | 四角囲み文字を形成するために用いられる。 |
U+20DF | ⃟ | COMBINING ENCLOSING DIAMOND | 菱形囲み文字を形成するために用いられる。
菱形囲み文字は主に警告を表すシンボルとして用いられる。 |
U+20E0 | ⃠ | COMBINING ENCLOSING CIRCLE BACKSLASH | 禁止[2]を表すシンボルを形成するために用いられる。 |
追加の記号用ダイアクリティカルマーク | |||
U+20E1 | ⃡ | COMBINING LEFT RIGHT ARROW ABOVE | 数学においてテンソルを表す[2]。 |
追加の囲み文字用ダイアクリティカルマーク | |||
U+20E2 | ⃢ | COMBINING ENCLOSING SCREEN | コンピュータのUIなどにおいて、複数のディスプレイなどのスクリーン装置がある場合に数字と結合して何番の画面であるかを表すために用いられる。 |
U+20E3 | ⃣ | COMBINING ENCLOSING KEYCAP | コンピュータのキーボードについてどのキーであるかを表現するために用いられる。 |
U+20E4 | ⃤ | COMBINING ENCLOSING UPWARD POINTING TRIANGLE | 三角囲み文字を形成するために用いられる。
三角囲み文字は主に注意を表すシンボルとして用いられる。 元々欧州の道路標識で警告の表示は三角形の看板で行われており、そこから派生して感嘆符(!)を三角形で囲んだ記号が一般的に注意が必要であることを意味するようになった。様々なものについての注意を表すため、感嘆符以外にも色々な記号と結合できるように結合記号として符号化されることとなった[3]。(例えばハザードシンボルのように) 但し、現在三角囲みの感嘆符は26A0 ⚠ WARNING SIGNとして個別の文字としても符号化されている。 Adobe Korea 1-2には漢字の「補」を三角で囲った補⃤という文字が含まれている。 |
追加の記号用ダイアクリティカルマーク | |||
U+20E5 | ⃥ | COMBINING REVERSE SOLIDUS OVERLAY | |
U+20E6 | ⃦ | COMBINING DOUBLE VERTICAL STROKE OVERLAY | Z言語において有限関数を表す[2]。 |
U+20E7 | ⃧ | COMBINING ANNUITY SYMBOL | 保険数理学において年金を表すのに用いられる[2]。 |
U+20E8 | ⃨ | COMBINING TRIPLE UNDERDOT | |
U+20E9 | ⃩ | COMBINING WIDE BRIDGE ABOVE | 縮約演算子[2]。
基字の幅全体に橫に広がって付けられる[2]。 |
U+20EA | ⃪ | COMBINING LEFTWARDS ARROW OVERLAY | |
U+20EB | ⃫ | COMBINING LONG DOUBLE SOLIDUS OVERLAY | |
U+20EC | ⃬ | COMBINING RIGHTWARDS HARPOON WITH BARB DOWNWARDS | |
U+20ED | ⃭ | COMBINING LEFTWARDS HARPOON WITH BARB DOWNWARDS | |
U+20EE | ⃮ | COMBINING LEFT ARROW BELOW | |
U+20EF | ⃯ | COMBINING RIGHT ARROW BELOW | |
U+20F0 | ⃰ | COMBINING ASTERISK ABOVE |
小分類
[編集]このブロックの小分類は「合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク」(Combining diacritical marks for symbols)、「囲み文字用ダイアクリティカルマーク」(Enclosing diacritics)、「追加の記号用ダイアクリティカルマーク」(Additional diacritical mark for symbols)、「追加の囲み文字用ダイアクリティカルマーク」(Additional enclosing diacritics)の4つとなっている[2]。本ブロックでは、Unicodeのバージョン更新時の文字追加が隙間を埋める形で行われた影響で、同一の小分類に属する文字が飛び飛びの符号位置に割り当てられていることがある。また、収録文字が1文字しかない小分類については小分類名が単数形で表現されているが、本記事では単数形か複数形かによる小分類名の表記ゆれについては別の小分類として扱わず、同一の小分類として扱うこととする。
合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク(Combining diacritical marks for symbols)
[編集]この小分類には主に数学や物理学、Z言語などで用いられる、記号に結合するダイアクリティカルマークが収録されている。
囲み文字用ダイアクリティカルマーク(Enclosing diacritics)
[編集]この小分類には数字やラテン文字などに結合して囲み文字を形成するために用いられるダイアクリティカルマークが収録されている。
追加の記号用ダイアクリティカルマーク(Additional diacritical mark for symbols)
[編集]この小分類には数学や物理学、Z言語などで用いられる、記号に結合するダイアクリティカルマークが収録されている。
追加の囲み文字用ダイアクリティカルマーク(Additional enclosing diacritics)
[編集]この小分類には数字やラテン文字などに結合して囲み文字を形成するために用いられるダイアクリティカルマークが収録されている。
文字コード
[編集]合成可能な記号用ダイアクリティカルマーク(Combining Diacritical Marks for Symbols)[1] Official Unicode Consortium code chart (PDF) | ||||||||||||||||
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | A | B | C | D | E | F | |
U+20Dx | ⃐ | ⃑ | ⃒ | ⃓ | ⃔ | ⃕ | ⃖ | ⃗ | ⃘ | ⃙ | ⃚ | ⃛ | ⃜ | ⃝ | ⃞ | ⃟ |
U+20Ex | ⃠ | ⃡ | ⃢ | ⃣ | ⃤ | ⃥ | ⃦ | ⃧ | ⃨ | ⃩ | ⃪ | ⃫ | ⃬ | ⃭ | ⃮ | ⃯ |
U+20Fx | ⃰ | |||||||||||||||
注釈
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履歴
[編集]以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。
バージョン | コードポイント[a] | 文字数 | L2 ID | ドキュメント |
---|---|---|---|---|
1.0 | U+20D0..20E1 | 18 | ||
3.0 | U+20E2..20E3 | 2 | L2/97-206 | Unicode (5 August 1997), Proposal to encode two symbols (create combining screen and combining keycap) (英語) |
3.2 | U+20E4 | 1 | L2/98-056 | McGowan & Geoffrey Sampson (24 February 1998), Proposal Triangular Overlay Character (英語) |
U+20E5..20E8 | 4 | L2/00-119 | SC2/WG2 N2191R (19 April 2000), Proposal for mathematical symbols in 10646 (英語) | |
U+20E9..20EA | 2 | L2/01-142 | Barbara Beeton; Asmus Freytag (2 April 2001), Additional Mathematical Symbols (replaces L2/01-088 == SC2/WG2 N2318) (英語) | |
4.1 | U+20EB | 1 | L2/03-194 | Asmus Freytag (9 June 2003), Additional Mathematical and Letterlike Characters (英語) |
5.0 | U+20EC..20EF | 4 | L2/04-406 | Asmus Freytag (15 November 2004), Progress report on Mathematical Symbols (英語) |
5.1 | U+20F0 | 1 | L2/07-011 | Asmus Freytag; Barbara Beeton (15 January 2007), 29 Additional Mathematical and Symbol Characters (WG2 N3198) (英語) |
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出典
[編集]- ^ “3.8: Block-by-Block Charts”. The Unicode Standard. Unicode Consortium. 2024年11月13日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o "The Unicode Standard, Version 15.1 - U20D0.pdf" (PDF). The Unicode Standard (英語). 2024年11月13日閲覧。
- ^ McGowan & Geoffrey Sampson (1998年2月24日). “Proposal Triangular Overlay Character” (英語). Unicode. 2024年11月13日閲覧。