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和尚魚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

和尚魚(おしょううお; 拼音: héshàng yú)は、東洋の海の妖怪。人頭亀身で紅赤色。

概要

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和尚魚
和尚魚.和漢三才図会
―寺島良安『和漢三才図会』
和尚魚.三才図会
―王圻、王思義 編『三才図会』

明代類書三才図会』(1609年刊)に記載によれば、東洋の大海の生物とされ、スッポン)のようで、紅赤色をしており、潮に乗ってやってくるという[1][2]

貝原益軒大和本草』(1709年)もこれを引用しており、日本で言う坊主魚ぼうずうおと同じとしているが、後者の性質や味などは未詳だという[3]

和漢三才図会の海坊主

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寺島良安和漢三才図会』(1712年)にも「和尚魚おしょういお」の見出しで転載され、俗に言う「海坊主」と同定している[注 1][4][2]

同書に拠れば西海にいる海坊主は、頭部は名前通り頭髪がない坊主頭の人間で、体はスッポンに似ており、大ぶりのもので体長は5~6尺(約1.5~1.8メートル)に達するという[4][2][5]

漁師がこれを見るのは不祥(不吉)で、漁𦊟(網)が役に立たなくなる。もし捕らえた場合、殺そうとすると、和尚魚は手を合わせて涙を流しつつ命乞いをするので「助けてやるが、その代わり今後いっさい私の漁にあだなしてはならない」と言い含めると、二度と祟らないと承知した合図に、西に向かって天を仰ぐ仕草をするので、それで赦してやって海へ逃がすと良いという[4][2][5]

亀入道

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また、同様にの体に坊主頭の人間の頭部を持つ海坊主として亀入道(かめにゅうどう)があり、若狭湾に出現するといわれる[6]津村淙庵による江戸時代の随筆『譚海』では、これは和尚魚と同じものとされている。この姿を見ると不吉な出来事が起こるとされ、捕えてしまった場合、酒を飲ませて海へ放したという[7]

考察

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妖怪譚の郷里探訪家、村上健司は、この和尚魚や亀入道は、海亀を妖怪視したものと推測している[5]

脚注

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注釈

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  1. ^ 「和尚魚」に二行のルビを振っており、これを「うみぼうず」とも訓じている。また中国語発音を「ホウシャンイユイ」と表記する。

出典

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  1. ^ 王圻、王思義 編「鳥獸六巻 鱗介類 和尚魚」『三才圖會 106卷中第94卷』N. p.、1609年、第3葉裏頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2574392/52 。異なる版本に『三才圖會』第十三函 「鳥獸圖會 一巻至六巻」「鳥獸六巻 鱗介類 和尚魚」、槐陰草堂、1609年刊行があり、潭濱黄・晟東曙(重校)とある。
  2. ^ a b c d 寺島良安「和尚魚(おしょういお) ・海坊主 」『和漢三才図会』 7巻、島田勇雄; 樋口元巳; 竹島淳夫(訳注)、平凡社、1985年、148–149頁https://books.google.com/books?id=ft4EAAAAMAAJ&q=和尚魚。「『三才図会』に、「東洋の大海中に和尚魚というのがいる。状は鼈に似ていて、身体は紅赤色である。潮汐(水)に乗ってやってくる」(鳥獣六巻)とある。」 
  3. ^ 貝原益軒和尚魚」『大和本草』《13之下》永田調兵衛、1709年。NDLJP:2557359/47https://books.google.com/books?id=TrhZAAAAcAAJ&pg=PP34 
  4. ^ a b c 寺島良安「介甲部:龜類・鼈類・蟹類」『和漢三才図会 : 105巻首1巻尾1巻』 32巻、1712年、巻46、07葉裏https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2596379/27 
  5. ^ a b c 村上健司編著 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、48頁。ISBN 978-4-6203-1428-0
  6. ^ 人文社編集部 『ものしりミニシリーズ 日本の謎と不思議大全 東日本編』 人文社、2006年、121頁。ISBN 978-4-7959-1986-0
  7. ^ 『妖怪事典』 80頁。

関連項目

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