コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

四宮和夫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

四宮 和夫(しのみや かずお、1914年10月31日 - 1988年4月28日[1])は、日本法学者。専門は民法信託法学位は、法学博士東京大学、1962年)(学位論文「信託法」)。我妻栄門下。弟子に能見善久など。

人物

[編集]

香川県三豊郡観音寺町生まれ。歩く通説と呼ばれた指導教官の我妻に対し、歩く反対説とも呼ばれた[要出典]。四宮の反対説の提示によって初めて論点化された論点も多く[要出典]、日本の民法学に多大な貢献をもたらした。信託法の研究の第一人者であり、その地位は弟子の能見に受け継がれている。

学説

[編集]

後掲『請求権競合論』は、債務不履行不法行為等の請求権競合問題に関する論文で、民事訴訟法学における訴訟物における旧訴訟物理論・実体法説新訴訟物理論・訴訟法説の対立を踏まえた上で、民法学の見地から新訴訟物理論の考え方を取り入れ、債務不履行と不法行為の要件及び効果を利益衡量の上一本化すべきとして新実体法説(のうち、全規範統合説)を主張した。

奥田昌道が提唱した請求権二重構造説と同じ発想に立つ見解であるが、四宮は、奥田説では効果についてのみ規範が統合されるにすぎず不徹底であるとし、要件および効果を含め請求権競合問題全般についてすべての規範を統合すべきと主張した。

利益考量論を主張した星野英一から発想としてはほぼ到達点に達していると評価されている。四宮は、一般論として、星野と同じく利益衡量によって具体的規範を提示するとしながらも、思考と伝達の経済を考慮し、その理由についてはできるかぎり単純な命題に置き換えるべきだと主張してやや我妻に近い立場を表明している[2]

経歴[3]

[編集]

著書

[編集]

体系書

[編集]
  • 『民法総則 第4版』(弘文堂、1986年、初版1972年)(4版補訂版以降は能見善久が共著の形式で加筆)
  • (能見善久共著)『民法総則 第8版』(弘文堂、2010年)
  • 『事務管理・不当利得』(青林書院、1981年)
  • 『不法行為』(青林書院、1987年)
  • 『信託法』(有斐閣法律学全集、新版 1989年)

論文集

[編集]
  • 『戰後における判例不法行爲法』(日本評論社、1956年)
  • 『信託の研究』(有斐閣、1965年)
  • 『請求権競合論』(一粒社、1978年)
  • 『四宮和夫民法論集』(弘文堂、1990年)

脚注

[編集]
  1. ^ a b 『現代物故者事典 1988~1990』(日外アソシエーツ、1993年)p.315
  2. ^ 上掲『民法総則』のはしがき
  3. ^ 加藤一郎、水本浩 編『民法・信託法理論の展開』株式会社弘文堂、1986年、551頁。ISBN 4-335-35074-0