四畳半王国見聞録
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四畳半王国見聞録 | ||
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著者 | 森見登美彦 | |
イラスト | 古屋兎丸 | |
発行日 | 2011年 | |
発行元 | 新潮社 | |
ジャンル | 青春小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
コード |
ISBN 978-4-10-464503-9 ISBN 978-4-10-129053-9(文庫本) | |
ウィキポータル 文学 | ||
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『四畳半王国見聞録』(よじょうはんおうこくけんぶんろく)は、日本の小説家・森見登美彦による短編小説集。新潮社より2011年1月28日に刊行され、2013年6月26日に新潮文庫より文庫版も刊行された。
概要
[編集]本作は、京都市を舞台にした七編の短編小説で構成されている。森見登美彦作品に頻出する四畳半を軸に展開し、作中には別作品の登場人物が多くあらわれるため、森見登美彦の四畳半並行世界の真骨頂ともいえる作品である。タイトルから「四畳半神話大系」の続編であるように思われるが、森見によると「『四畳半神話大系』の活動漫画化に伴う知名度上昇を有利に活用しようとしているのだ。四畳半がしきりに出てくる以外、ほとんど関連はない」とのことである[1]。
収録作
[編集]- 四畳半王国建国史
- 蝸牛の角
- 真夏のブリーフ
- 大日本凡人會
- 四畳半統括委員会
- グッド・バイ
- 四畳半王国開国史
登場人物
[編集]- 余
- 《四畳半王国建国史》と《四畳半王国開国史》の語り部。四畳半王国に君臨する主。法然院学生ハイツの一階、「コ」の字の上辺中の部屋に住む。シュレディンガー方程式に対する挫折から、大学生活をこじらせて四畳半王国の建国に至った。国土である四畳半の壁や天井をはじめとした拡張に取り組み続け、豊饒な己の世界を手にしようと奮闘している。
他作品の登場人物
[編集]- 浴衣の男(樋口)
- 《蝸牛の角》に登場する。『四畳半神話大系』の登場人物とおぼしき人物。下鴨幽水荘に暮らす、薄汚れた浴衣を着て無精髭を生やした正体不明の男。
- ぬらりひょん(小津)
- 《蝸牛の角》と《四畳半統括委員会》に登場する。『四畳半神話大系』の登場人物とおぼしき人物。万物を小ばかにするような妖怪めいた薄笑いを浮かべた青年。図書館警察・個人情報企画室長として会議を取り仕切る一面もある。
- 文学青年風の男
- 《蝸牛の角》に登場する。四畳半神話大系の登場人物とおぼしき人物。親不知の痛みを訴えながらも、小津と饅頭を口に詰め込みあっている。
- 乙女
- 《蝸牛の角》に登場する。四畳半神話大系の登場人物とおぼしき人物。理性的な眉をした黒髪の乙女。雑多な四畳半空間で妖怪のような男に囲まれながらも、黙々と饅頭をほおばっている。
- 芽野士郎
- 《蝸牛の角》に登場する。『【新釈】走れメロス 他四篇』の登場人物とおぼしき人物。詭弁論部に所属する。丹波の助言を受け鞍馬山へと修行に繰り出すが、あえなく遭難する。
- 芹名
- 《真夏のブリーフ》と《四畳半統括委員会》に登場。『【新釈】走れメロス 他四篇』の登場人物とおぼしき人物。芽野と同じく詭弁論部に所属する。詭弁論部で共有している連絡用の掲示板への書き込みと、ラテン語を弄することを趣味としている。
- 淀川教授
- 《蝸牛の角》に登場する。『有頂天家族』の登場人物とおぼしき人物。大学で栄養学を教えるかたわら、世界各地の美味いもの探しの調査を遂行する。異様な狸好きで「狸教授」との異名をとる。爬虫類が苦手。
大日本凡人會
[編集]大日本凡人會とは、凡人を目指す非凡人の集いである。特殊能力を持ちながらも、その能力を決して世のため人のために使わない、という信条のもと法然院学生ハイツにて定期的に会合を開く集団である。〈大日本凡人會〉の章は「或る学生による自主制作映画の原案」と銘打って語られているため、他章との関連は不明である。本作とは無関係であるが、『恋文の技術』に「大日本乙女會」なる組織が登場する。
- 丹波
- 《蝸牛の角》と《大日本凡人會》と《グッド・バイ》に登場する。マンドリン辻説法と称し、鴨川デルタの突端で人生論を説く。この説法を通して相手の心中を見抜くことができる特技があり、迷える学生たちを更に迷わせる。『恋文の技術』に登場する谷口と同じく、般若心経の張られたマンドリンを所持している。
- 数学氏
- 《大日本凡人會》に登場する。数学をこよなく愛し、独自の妄想的数学証明によって物質を出現させる能力を持つ。その証明はもはや魔境の地に達しており、「プロジェクトSHIBA」により百万遍交差点北東角に柴犬を出現させることを成功させた。その証明の集大成として、ついに彼女の存在証明に成功したと思われたが、事態は予想だにしない方向に進む。
- モザイク氏
- 《大日本凡人會》に登場する。大日本凡人會の最年長で、大学院生。アダルトビデオのモザイクを自由自在に操る能力を持つ。
- 凹氏
- 《大日本凡人會》に登場する。精神的に落ち込んだ時に、近くにあるものを物理的に凹ませる能力を持つ。
- 無名君
- 《大日本凡人會》に登場する。大日本凡人會の最年少で新入り。どんな集団に交じっても、その存在に気づいてもらえないという能力を持ち、すべての卒業写真に写り損ねた。彼が映りこんだ学生自主制作映画がきっかけで、大日本凡人會に不和が訪れる。
その他
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- 図書館警察忘年会幹事
- 《蝸牛の角》に登場する。黒谷の四畳半アパートに住む。図書館警察忘年会の幹事を押し付けられ途方に暮れる。
- 三浦
- 《真夏のブリーフ》と《四畳半統括委員会》に登場する。人間関係研究会に所属している。研究室は淀川研究室で鈴木と同じ。一乗寺月見荘の裏手にあるマンションに住む。雑誌の写真をスクラップ帳にまとめるのが趣味。
- 鈴木
- 《真夏のブリーフ》と《四畳半統括委員会》に登場する。詭弁論部に所属している。芽野や芹名の先輩。はっきりした自覚はないが、同じ研究室の三浦さんが気になっている。しかし、詭弁論部の後輩からは彼女の奴隷と言われている。
- 楓
- 《真夏のブリーフ》に登場する。人間関係研究会に所属しており、三浦さんの後輩。物静かでおしとやかなお嬢様風の学生だが、血みどろ恐怖映画に詳しい。柊と付き合っている。
- 柊
- 《真夏のブリーフ》に登場する。詭弁論部に所属しており、芽野や芹名の後輩。楓さんと付き合っている。三浦さんと同じマンションに住む。
- 桃谷
- 《真夏のブリーフ》に登場する。淀川研究室に在籍しており、博士課程まで修了している。一乗寺月見荘の住人の中でも最古参。
- 初音
- 《大日本凡人會》に登場する。映画サークルに所属している。日頃からあちこちで撮影を行っているが、彼女の映画を見た観客は全員眠り込んでしまう。
用語など
[編集]- 法然院学生ハイツ
- 京都府東山のふもとに位置する、巨大な「コ」の字形をした鉄筋コンクリート三階建ての建物。学生紛争時代に建造されたとされ、廃墟のごとく暗く、荒涼とした雰囲気になっている。玄関を出てすぐに、哲学の道が広がっていることがうかがえる。各部屋は太い鉄管によって貫かれており、ときどきカンカンと何者かが叩く音が建物中に響き渡ったり、夜な夜などこかの住民が彷徨する声が響いたりする。また、屋上には阿呆神を祀る祠があり、さまざまな阿呆学生たちが日々供物をささげている。
- 阿呆神
- 全宇宙の四畳半を遍く支配する存在であり、すべての阿呆学生を統べる神。黄色地に紫色の水玉模様のブリーフ一丁の姿で、へんてこな踊りを繰り返す。
- 四畳半統括委員会
- 「世界を四畳半化すること」や「阿呆神の信仰」を目的とした大学を母体とした組織。委員たちは「四畳半手帳」と呼ばれる正方形の手帳を持ち歩く。「もんどりダンス」「ペコちゃんの憂鬱」といった謎のネーミングの儀式が存在するといった情報があるが、その組織の実在の真偽すら定かではなく、その実態は謎に包まれている。
- 下鴨幽水荘
- 下鴨神社の東に位置する、築年数も定かではないほどの古アパート。『四畳半神話大系』にも登場する。
脚注
[編集]- ^ 森見登美彦 (2011年1月22日). “この門をくぐるものは一切の高望みを捨てよ”. 森見登美彦日誌. 2017年11月29日閲覧。