四重積(よんじゅうせき)とは3次元ユークリッド空間における4つのベクトルの積であり、ベクトル解析におけるスカラー四重積とベクトル四重積の総称である。
スカラー四重積は2つのクロス積のドット積である。
ここで a, b, c, d は3次元ユークリッド空間のベクトルである。
幾何学的には a, b で張られた面積ベクトルと c, d で張られた面積ベクトルの重なり具合(射影)を表す。
以下の式 (ビネ・コーシーの恒等式)
が成り立つ。
スカラー三重積の公式およびベクトル三重積の公式を使えば
と導ける。
あるいは線形代数学におけるビネ・コーシーの恒等式
を既知とすれば、n=3の特別な場合として、上記の式が得られる。
また、特別な場合である
も有用な公式でラグランジュの恒等式(英語版)と呼ばれる。
ベクトル四重積は2つのクロス積のクロス積である。
ここで a, b, c, d は3次元ユークリッド空間のベクトルである。
幾何学的には a, b で張られた面と c, d で張られた面の交線に平行なベクトルを表す。
ベクトル三重積の公式を使えば
が得られる。ただし [a, b, c] = a・(b×c) である。
2つの異なる右辺が導かれるのは左辺を X×(c×d) とみて展開したか (a×b)×Y とみて展開したかで異なるからである。幾何学的には、交線はそれぞれの平面に含まれるので、点を表すパラメータ表示が2通りあることを意味する。
2つの右辺が等しいことより恒等式
が得られる。
これは [a, b, c]≠0 の場合、基底 {a, b, c} (正規直交基底とは限らない)における r の成分表示が
であること示す。
あるいは、(a b c)を縦ベクトルを並べてできる3×3行列としたときの連立方程式
に対するクラメルの公式
と同じである。
なお、
が先の公式の特別な場合として導かれるが、この等式は以下のように導くこともできる。
a と b で作られる平面と、 a と c で作られる平面との交線は a に平行であることは自明である。また、a と b と c が一次従属 ([a, b, c ]=0) すなわち共面であるとき、2つの平面は平行なので左辺は0になる。このことから、右辺は [a, b, c ]a の定数倍であることが導かれる。右手系の正規直交基底を代入することで比例定数が1であることがわかるので、等式が得られる。