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国際単位系国際文書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

国際単位系 国際文書(こくさいたんいけい こくさいぶんしょ、: Le Système international d'unités: The International System of Units)は、国際度量衡局BIPM)が発行する国際単位系(SI)の規格書である。国際単位系の解釈と運用に当たっての最も権威ある[1]原典である[2]

1970年に第1版が発行され、2022年時点の最新版は2019年の第9版(Ver 2.01[注 1]、2022年12月)である。なお、SIの公式文書はフランス語によるものであり、正式な本文の確認が必要な場合、あるいは、文章の解釈に疑義がある場合は、フランス語版を参照する必要がある[3]

名称

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この国際文書のフランス語による名称は単に“Le Système international d’unités”、英語による名称は単に“The International System of Units”とすることが、第26回CGPM(2018)で決議されている[4]。略称は、SI Brochure である[5]。日本語では、「SI国際文書」と呼ばれることが多い[6]

概要

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国際単位系は1948年に発意され1960年に一応の確立を見たが、その後に様々な改訂がなされてきた。国際単位系国際文書は、この国際単位系(SI)の正しい解釈と運用を記述するものとして、1970年からBIPMにより発行されてきた。原典はフランス語で記述されており、1985年の第5版からは、英語版も発行されている。

各版の経緯

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1970年の第1版以降の経緯は次の通りであり、これらはBIPMのページで閲覧できる[7]

これらの仏語と英語による過去の版および最新版の国際文書は、Creative Commons Attribution 3.0 IGOとなっており、適切なクレジットを付ければ、無制限の利用、配布、すべてのメディアによる複製が許されている[8]

SI国際文書の変遷 [7]
言語1 言語2 ページ数 ISBN NIST英語版 日本語訳版
1970年 第1版 仏語版[9] 12   1971年版[10]
1973年 第2版 仏語版[11] 12 1974年版[12] 1973年版[13][14]
1977年 第3版 仏語版[15] 13  ISBN 92-822-2045-1 1977年版[16] 1977年版[17]
1981年 第4版 仏語版[18] 16 ISBN 92-822-2067-2 1981年版[19] 1981年版[20][21]
1985年 第5版 仏語版[22] 英語版[23] 16 ISBN 92-822-2092-3 1986年版[24] 1985年版[25]
1991年 第6版 仏語版[26] 英語版[27] 16 ISBN 92-822-2112-1 1991年版[28] 1991年版[29]
1998年 第7版 仏語版[30] 英語版[31] 23 ISBN 92-822-2154-7 2001年版[注 2][32] 1998年版[33]
2000年 第7版補遺 仏語版[34] 英語版[35]   4
2006年 第8版 仏語版[36] 英語版[37] 34 ISBN 92-822-2213-6 2008年版[38] 2006年版[39][40]
2014年 第8版補遺 仏語版[41] 英語版[42]  8 
2019年 第9版Ver.1.08 仏語版[43] 英語版[44] 28 ISBN 978-92-822-2272-0 2019年版[45] 2019年版[46][47]
2022年12月 第9版Ver.2.01 仏語版[48] 英語版[49] 28 ISBN 978-92-822-2272-0 存在しない 存在しない

(注)ページ数は、表紙、ノート、BIPM紹介、目次、緒言、付録、索引などを除いた、BIPM 第9版Ver2.01仏語版の本文のみのもの。日本語版や他の言語版のページ数はこれと異なる場合がある。

最新版は、第9版のVer 2.01(2022年12月)である[50]。この2.01版は2022年11月18日に第27回CGPMが承認した4つの新しいSI接頭語ロナクエタ ロントクエクト)を含めたものである。

NIST版

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米国のNISTアメリカ国立標準技術研究所)は、米国での運用のために、BIPM版にわずかの編集[注 3][51]を施して、NIST Special Publication 330: The InternationalSystem of Units (SI)(NIST SP 330)として、別に発行している。最新版は2019年版である[52]

NIST版は、前項の表に示したとおりである。BIPM版との主な相違点は下記の通りである。

  1. 1970-1986年までは、NISTの前身であるNBS、1991-2019年は、NISTが発行元である。
  2. タイトルは、一貫して、Special Publication 330 である。「SP 330」と略称される。
  3. BIPM版とは異なり、版番号をうたっていない。
  4. 1970-2019年版まで一貫して、小数点はBIPM版での「コンマ」に替えて、「ピリオド」を用いている。
  5. 1970-1974年までは、綴りとして、BIPMと同一の、metre, deca, caesium, litre, tonne を用いている。1977年以降は、meter, deka, cesium, liter, metric ton を用いている。
  6. 1970-1991年版までは、イギリスのNPLとの共同訳であることをうたっている。
  7. 1998年版は、2000年6月補遺版を含んでいて、2001年版と称している。
  8. 2008年版には、4.3節を設けて、BIPM版には存在しない表10(curie, roentgen, rad, remの4単位の表)を付け加えている。これは、全ての版を通じて、BIPM版との最も大きな相違点である。
  9. 2008-2019年版では、リットルの記号は「L」のみを掲げている(BIPM版では、1981年版(第4版)以降、l,L の2つを掲げているリットル#記号のゆれ。)

NIST SP 811

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Special Publication 330(SP 330)をベースとして、様々な解説、単位換算表などを付加した、NIST SP 811:Guide for the Use of theInternational System of Units (SI) も発行している。最新版はBIPM版(第8版,2006年)に基づいた2008年版[53]であり、BIPM版(第9版,2019年)に基づいたものは2022年1月現在、未刊行である[54][注 4][55]

日本語版

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産業技術総合研究所 計量標準総合センター(およびその前身)によって、BIPM版(英語版)が日本語に翻訳されてきた。最新版の日本語版は下記である。

第9版までの変遷は下記の通りである。

SI国際文書 日本語訳版の変遷
タイトル ISBN 判型 全ページ数 本文ページ数 訳編など 発行者 出版年月日 pdf版のURL
1991年 第6版 国際単位系 国際文書第6版(1991)日本語版 ISBN 4-542-40144-8 A5版 96 23 訳編:工業技術院計量研究所、(社)日本計量協会 (財)日本規格協会 1992年7月5日第1版第1刷
1998年 第7版 国際文書第7版(1998) 国際単位系(SI) グローバル化社会の共通ルール  日本語版 ISBN 4-542-30135-4 A5版 113 41 訳・監修:工業技術院計量研究所 (財)日本規格協会 1999年11月30日第1版第1刷
2006年 第8版 国際文書第8版(2006)/日本語版 国際単位系(SI) 安心・安全を支える世界共通のものさし ISBN 978-4-542-30182-5 A5版 133 34 訳・監修:(独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター (財)日本規格協会 2007年12月19日第1版第1刷発行 国際文書第8版(2006) 国際単位系(SI)日本語版
2014年 第8版補遺  
2019年 第9版 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 pdf版 103 27 訳・監修:(国研)産業技術総合研究所 計量標準総合センター 2020年3月 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 【正誤表】 2022年7月15日 更新国際単位系(SI)第9版(2019)正誤表』(pdf)産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2022年7月15日https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/si-brochure/pdf/20220714_seigohyo.pdf 

(注)本文ページ数は、表紙、ノート、BIPM紹介、目次、緒言、付録、索引などを除いたもので、BIPM第9版仏語版Ver.1.08の本文と対応している。日本語版は、2023年3月現在、BIPM第9版のVer.2.01には対応しておらず、したがって4つの新しいSI接頭語は含まれていない。

各国語版

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国際単位系(SI)国際文書は、それぞれの国の計量標準に関する文書として重要であり、様々な言語に翻訳されている。例えば、ブルガリア語、中国語、チェコ語、英語、ドイツ語、日本語、韓国語、ポルトガル語、ルーマニア語、スペイン語に翻訳されている[56]

  • スペイン語版[57]

JIS規格など

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SIは日本産業規格にもなっている。NISTのSP811同様に、解説や単位換算表などを付加している。

  • 「国際単位系(SI)とその使い方」(JIS Z 8000-1:2014)

ISO も国際文書をベースにSI単位に関する指針、ガイド、解説書を出版している。

構成

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最新版である第9版(2019年)の日本語版の構成を示す。末尾の数字はページ数である。全体で103ページあるが、1.~5.が本文(全27ページ)である。 付録1 の「CGPMの決定とCIPMの決定」のページ数がもっとも多い。

  • 国際単位系(SI)第 9 版(2019)日本語版について  1
  • 表紙  1             
  • 国際度量衡局 (BIPM) とメートル条約  3
  • 目次  2
  • 第9版への緒言  2
  • 本文に関する注釈  1
  • 付録1:国際度量衡総会(CGPM)および国際度量衡委員会(CIPM)の決定  48
  • 付録2:いくつかの重要な単位の定義の実現方法  1 (電子媒体のみで刊行。入手先は[1]
  • 付録3:光化学的および光生物学的な量の単位  1   (電子媒体のみで刊行。入手先は[2]
  • 付録4: 国際単位系およびその基本単位の発展の歴史  9
  • 略語リスト  2
  • 索引  5

脚注

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注釈

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  1. ^ 2022年11月18日に第27回CGPMが承認した新しいSI接頭語を取り入れた版
  2. ^ 1998年版+2000年6月補遺版としている。
  3. ^ 1)英語のスペル、metre, litre, deca, caesium を meter, liter, deka, cesium に変更している。2)トンの呼称は、tonne ではなく、metric ton である。 3) リットルの記号は、L のみである。 4) 文章の明確化のために、いくつかのEditors’notes が追加されている。 5) 表現をアメリカナイズするために、わずかばかりの編集がなされている。
  4. ^ 米国測量フィートが2022年12月31日限りで廃止されることが決定されており、この廃止の前にSP811の新版が発刊される予定である。

出典

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  1. ^ SIを紹介する最も権威ある文書「SI国際文書第7版」日本語版が完成 櫻井 慧雄、計量新報、2000年1月1日
  2. ^ 理科年表2020、p.367 注記3
  3. ^ #国際単位系(SI)第9版(2019)p.93本文に関する注釈
  4. ^ SI国際文書(仏語、英語) p.92, 26th CGPM, 2018 Résolution 1, "invite le Comité international des poids et mesures (CIPM) à publier une nouvelle édition de la Brochure sur le SI, « Le Système international d’unités », contenant une description complète du SI révisé." p.198, 26th CGPM, 2018 Resolution 1, "The General Conference invites the International Committee to produce a new edition of its Brochure The International System of Units, SI in which a full description of the SI is given." 
  5. ^ SI Brochure: The International System of Units (SI) BIPM
  6. ^ 理科年表2022、p.367、国立天文台、ISBN 978-4-621-30649-9、2021-11-30発行
  7. ^ a b Previous editions of the SI Brochure SI Brochure: The International System of Units (SI), BIPM
  8. ^ The International System of Units - 9th edition - Complete brouchure 英語版、p.116(ページ番号は無印刷)Copyright statement
  9. ^ SI国際文書、第1版(1970)、仏語版、BIPM
  10. ^ NIST SP 330(1971)
  11. ^ SI国際文書、第2版(1973)、仏語版、BIPM
  12. ^ NIST SP 330(1974)
  13. ^ 国際単位系(SI)、計量研究所「国際単位系のまとめ」刊行委員会 翻訳・編集、33ページ、著者 工業技術院計量研究所、注記:原書第2版(1973)の翻訳、日本産業技術振興会、1973年
  14. ^ 国際単位系(SI)の手引、国際単位系(SI)の手引編集委員会 編著、202ページ、編集委員長:松浦四郎、日本規格協会、1975年
  15. ^ SI国際文書、第3版(1977)、仏語版、BIPM
  16. ^ NIST SP 330(1977)
  17. ^ 国際単位系(SI)の手引、国際単位系(SI)の手引編集委員会 編、250ページ、日本規格協会、1978年
  18. ^ SI国際文書、第4版(1981)、仏語版、BIPM
  19. ^ NIST SP 330(1981)
  20. ^ 国際単位系(SI)の手引:国際文書第4版(1981):日本語版、国際単位系(SI)の手引編集委員会 編、250ページ、著者:松浦四郎ほか、日本規格協会、1981年
  21. ^ 国際単位系:日本語版 国際文書第4版(1981)、工業技術院計量研究所 訳編、49ページ、日本計量協会、1982年
  22. ^ SI国際文書、第5版(1985)、仏語版、BIPM
  23. ^ SI国際文書、第5版(1985) pp.58-110、英語版、BIPM
  24. ^ NIST SP 330(1986)
  25. ^ 国際単位系(SI)の手引:国際文書第5版(1985):日本語版、国際単位系(SI)の手引編集委員会 編、ISBN 4542301184、282ページ、執筆:松浦四郎ほか、日本規格協会、1986年2月
  26. ^ SI国際文書、第6版(1991)、仏語版、BIPM
  27. ^ SI国際文書、第6版(1991) pp.63-118 、英語版、BIPM
  28. ^ NIST SP 330(1991)
  29. ^ 国際単位系(SI):国際文書第6版(1991):日本語版、工業技術院計量研究所,日本計量協会訳編、ISBN 4542401448、96ページ、日本規格協会、1992年07月
  30. ^ SI国際文書、第7版(1998)、仏語版、BIPM
  31. ^ SI国際文書、第7版(1998) pp.83-152、英語版、BIPM
  32. ^ NIST SP 330(2001)
  33. ^ 国際単位系(SI):グローバル化社会の共通ルール:国際文書第7版(1998):日本語版、工業技術院計量研究所 訳・監修、ISBN 4542301354、113ページ、日本規格協会、1999年11月発行
  34. ^ SI国際文書、第7版補遺(2000) 第7版(1998)文書の最後の153ページ以降に添付されている。仏語版はpp.1-4、BIPM
  35. ^ SI国際文書、第7版補遺(2000) 第7版(1998)文書の最後の153ページ以降に添付されている。英語版はpp.6-9、BIPM
  36. ^ SI国際文書、第8版(2006)、仏語版、BIPM
  37. ^ SI国際文書、第8版(2006) pp.95-180、英語版、BIPM
  38. ^ NIST SP 330(2008)
  39. ^ 国際文書第8版(2006) 国際単位系(SI)日本語版 訳・監修(独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2006年6月
  40. ^ 国際文書第8版(2006)/日本語版 国際単位系(SI) 安心・安全を支える世界共通のものさし、訳編者 (独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター、ISBN 978-4-542-30182-5、133ページ、日本規格協会、2007年12月19日第1版第1刷発行
  41. ^ SI国際文書、第8版補遺(2014)、仏語版、BIPM
  42. ^ SI国際文書、第8版補遺(2014) pp.10-17、英語版、BIPM
  43. ^ BIPMのHPでは、Ver.2.01に置き換わっており、存在しない。
  44. ^ BIPMのHPでは、Ver.2.01に置き換わっており、存在しない。
  45. ^ NIST SP 330(2019)
  46. ^ [https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/si-brochure/pdf/SI_9th_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E7%89%88_r.pdf 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版] 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
  47. ^ 【正誤表】 2022年7月15日 更新国際単位系(SI)第9版(2019)正誤表』(pdf)産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2022年7月15日https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/si-brochure/pdf/20220714_seigohyo.pdf 
  48. ^ SI国際文書、第9版(2019)Ver.2.01  pp.1-112、仏語版、BIPM]
  49. ^ SI国際文書、第9版(2019)Ver.2.01 pp.117-216、英語版、BIPM
  50. ^ The International System of Units - 9th edition - Complete brochure BIPM (仏語版と英語版との合本)
  51. ^ NIST Special Publication 330 The International System of Units (SI) David B. Newell and Eite Tiesinga, Editors, National Institute of Standards and Technology(NIST), August 2019, pp.iii-iv
  52. ^ NIST Special Publication 330 The International System of Units (SI) David B. Newell and Eite Tiesinga, Editors, National Institute of Standards and Technology(NIST), August 2019
  53. ^ Guide for the Use of the InternationalSystem of Units (SI) 2008Version, NIST
  54. ^ Special Publication811 NIST,
  55. ^ Deprecation of the United States (U.S.) Survey Foot Federal Register, p.85
  56. ^ 国際文書第8版(2006) 国際単位系(SI)日本語版 産業技術総合研究所 計量標準総合センター、p.1 英文テキストの使用における注意
  57. ^ El Sistema Internacional de Unidades(SI) 8ª Edición 2006⎯ 2ª edición en español 2008,Centro Españolde Metrología

関連項目

[編集]

参考文献

[編集]
  • 国際文書第8版(2006)国際単位系(SI) - 安心・安全を支える世界共通のものさし - 、産業技術総合研究所 計量標準総合センター、日本規格協会、ISBN978-4-542-30182-5、2007年12月19日第1版第1刷発行