地上デジタルテレビ放送
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地上デジタルテレビ放送(ちじょうデジタルテレビほうそう、英語: Digital Terrestrial Television Broadcasting、略称:地デジ)とは、地上(陸上)のデジタル方式の無線局により行われるテレビ放送である。ただ、実際の報道では地上デジタル放送と略されることもある。
開始時期
[編集]世界各国におけるデジタルテレビジョンへの移行
[編集](世界各国のデジタルテレビの展開状況リスト、英文版「List of digital television deployments by country」も参照)
デジタル放送開始 | 実施国/地域 | アナログ停波 | 方式 |
---|---|---|---|
1998年9月 | イギリス1 | 2012年10月24日 | DVB/T |
1998年11月 | アメリカ2 | 2009年6月12日 | ATSC |
1998年 | アイルランド | 2012年10月24日 | DVB/T |
1999年 | スウェーデン3 | 2007年12月15日 | DVB/T |
2000年 | スペイン | 2010年4月3日 | DVB/T |
2001年 | オーストラリア | 2013年12月10日 | DVB/T |
2001年 | フィンランド | 2007年9月1日 | DVB/T |
2001年 | 韓国4 | 2012年12月31日 | ATSC |
2002年7月 | クロアチア | 2011年1月1日 | DVB/T |
2002年11月 | ドイツ | 2008年11月25日 | DVB/T |
2003年3月 | カナダ | 2011年8月31日 | ATSC |
2003年4月 | オランダ | 2006年12月11日 | DVB/T |
2003年8月 | スイス | 2008年2月25日 | DVB/T |
2003年12月 | 日本5 | 完全停波は2012年3月31日 岩手県・宮城県・福島県以外の地域は2011年7月24日 |
ISDB-T |
2004年 | 台湾(中華民国)6 | 2012年6月30日 | DVB/T |
2004年 | イタリア7 | 2012年7月4日 | DVB/T |
2005年3月 | フランス | 2011年11月28日 | DVB/T |
2005年10月 | チェコ | 2011年11月11日 | DVB/T |
2005年 | スロバキア | 2012年12月31日 | DVB/T |
2006年3月 | デンマーク | 2009年10月31日 | DVB/T |
2006年4月 | ルクセンブルク | 2006年9月30日 | DVB/T |
2006年5月 | シンガポール8 | 2018年1月1日 | DVB/T |
2006年10月 | オーストリア | 2011年6月7日 | DVB/T |
2007年5月 | ニュージーランド | 2013年12月1日 | DVB/T |
2007年9月 | ノルウェー | 2009年11月30日 | DVB/T |
2007年12月 | ブラジル9 | 2018年11月25日[1] | ISDB-Tb |
2007年12月 | 香港10 | 2020年11月30日 | DTMB |
2008年 | 中国11 | 2020年12月31日(特別な状況は2021年3月31日まで) | DTMB |
2008年7月 | マカオ | 2023年6月30日[2] | DTMB |
2008年12月 | ハンガリー[注 1] | 2014年11月[注 2] | DVB-T |
2009年4月 | ポルトガル | 2012年4月26日 | DVB/T |
2010年3月 | ペルー | - | ISDB-Tb |
2010年4月 | アルゼンチン | - | ISDB-Tb |
2010年9月 | チリ | - | ISDB-Tb |
2011年6月 | ボリビア | - | ISDB-T |
2011年8月 | パラグアイ | - | ISDB-T |
2012年3月 | コスタリカ | - | ISDB-T |
2012年8月 | ウルグアイ | - | ISDB-T |
2013年2月 | ベネズエラ | - | ISDB-Tb |
2015年2月 | フィリピン | - | ISDB-T |
- ^1 - 公共放送のBBCがSDTVで多チャンネル放送を開始し続いて11月には商業放送のON Televisionが有料・多チャンネル放送を開始した。段階的にアナログ停波が行なわれ[7]、2012年4月18日には、首都ロンドンでも停波が実施された。
- ^2 - 20都市の42の放送局で地上デジタル放送が開始された。同国では日本と同様、HDTVによる高画質放送を重視している。当初は2009年2月17日に完全移行の予定だったが、低所得者への簡易チューナーの配布が遅れた事などで4ヶ月延期された。
- ^3 - 世界で初めてスウェーデンの一部地域でアナログ停波が実施された。
- ^4 - 慶尚北道蔚珍郡では2010年9月1日、全国より先行して、アナログ停波が実施された[8]。済州特別自治道では2011年6月29日にKBS第一テレビジョン以外の放送がアナログ停波。7月28日にKBS第一テレビジョンがアナログ停波。2012年8月16日に蔚山広域市がアナログ停波。9月24日忠清北道、10月4日慶尚南道、10月9日釜山広域市がアナログ停波。2012年12月31日4:00(日本時間)全アナログ放送停波・完全デジタル化。
- ^5 - 石川県珠洲市の全域では2010年7月24日、長崎県対馬市の一部では2011年1月24日、全国より先行して、アナログ停波が実施された。当初は前述地域を除いて2011年7月24日の停波予定であったが東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で甚大な被害が出た被災3県では、アナログ停波が、2012年3月31日に延期された[注 3]。なお、被災3県を除く44都道府県では当初の予定通り2011年7月24日に停波された。ケーブルテレビ等ではデジアナ変換として、2015年3月31日までアナログテレビで視聴ができた[9][10](「デジアナ変換」の終了はケーブルテレビの会社・地域によって異なる)。
→詳細は「日本の地上デジタルテレビ放送」を参照
- ^6 - 4段階に分けて、アナログ停波を実施。(2012年5月7日に台湾中部、同28日に東部と離島、6月11日に南部、同30日に北部)
- ^7 - 当初は2006年アナログ停波予定だった。
- ^8 - 地上デジタルテレビジョン放送を導入する最初の東南アジアの国。
- ^9 - 日本方式の派生規格にて放送開始。
- ^10 - 当初は2012年アナログ停波予定だった。
- ^11 - 2008年北京オリンピックに合わせて放送を開始した。
放送の方式
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
世界の地上波デジタルテレビ放送は、大きく以下の方式に分けられる。
- ヨーロッパ方式(固定向けDVB-Tと移動体向けDVB-H)
- 第2世代ヨーロッパ方式 (DVB-T2) - DVB-Tの後継規格。帯域の利用効率が向上している。
- 日本方式 (ISDB-T) - 同一の周波数帯でテレビ向けと携帯端末向け(ワンセグ放送)が可能。
- ブラジル方式(ISDB-Tb、ISDB-T International、またはSBTVD) - 日本方式 (ISDB-T) を基礎として採用し、ブラジルの地上波デジタルテレビ放送での要求条件に沿って技術改良を行ったもの。日本・ブラジル方式あるいは日伯方式とも呼ばれ、ブラジル以外の中南米でもISDB-Tと言えばこの方式が採用されている[11]。
- アメリカ方式 (ATSC)
- 韓国方式 (T-DMB) - 韓国では先にATSC方式で放送を開始したため、移動体向けのみに採用されている。
- 中国方式 (DTMB)
これらは多重化にMPEG-2 TSを利用する事、映像符号化にMPEG-2ビデオを利用する事では同じ条件であるものの、以下のような違いがある。
ATSC | DVB-T | DVB-T2 | ISDB-T | T-DMB | DTMB | |
---|---|---|---|---|---|---|
仕様 | ||||||
映像 | MPEG-2 | MPEG-2/H.264 | MPEG-2/H.264/H.265 | MPEG-2/H.264 | H.264 | MPEG-2/H.264/AVS/AVS+ |
音声 | ドルビーデジタル | MPEG-2 BC ドルビーデジタル |
MPEG-2 AAC/MPEG-4 AAC | MPEG-4 BSAC | MPEG-2 BC ドルビーデジタル | |
外符号 | リード・ソロモン符号 R-S (207, 187, 10) |
リード・ソロモン符号 R-S (204, 188, 8) | BCH符号 | リード・ソロモン符号 R-S (204, 188, 8) | ||
外符号インターリーブ | 52セグメント畳み込みバイトインターリーブ | バイト畳み込みインターリーブ(深さ12) | バイト畳み込みインターリーブ(深さ12) | |||
内符号 | トレリス符号 (符号化率:2/3) |
畳み込み符号(符号化率:1/2, 2/3, 3/4, 5/6, 7/8) | 低密度パリティ検査符号(符号化率:1/2, 3/5, 2/3, 3/4, 4/5, 5/6) | 畳み込み符号(符号化率:1/2, 2/3, 3/4, 5/6, 7/8) | ||
内符号インターリーブ | 12トレリス | ビット、周波数 | ビット、周波数、時間 | |||
搬送波 | シングルキャリア | マルチキャリア (COFDM) | マルチキャリア (BST-COFDM) | |||
変調方式 | 8-VSB | QPSK、16QAM、MR-16QAM、64QAM、MR-64QAM | QPSK、16QAM、MR-16QAM、64QAM、MR-64QAM、256QAM、MR-256QAM | DQPSK、QPSK、16QAM、64QAM | ||
機能・特徴 | ||||||
マルチパス耐性 | × | ○ | ○ | |||
同一周波数中継 (SFN) | × | ○ | ○ | |||
移動時の受信 | × | △(携帯機器は不適。DVB-Hで代用) | ○(携帯機器はワンセグが適する) | ○ | ○ | |
インパルスノイズ耐性 | × | ○ | ○ | |||
時間インターリーブ | × | × | ○ | |||
セグメント単位での運用 | × | × | ○1 |
主な採用地域
- ATSC
- DVB-T
- DVB-T2
- ISDB-T
- 日本・ ブラジル・ アルゼンチン・ ペルー・ チリ・ ベネズエラ・ エクアドル・ ボリビア・ ニカラグア・ フィリピン・ モルディブ・ ボツワナ[12]・ ホンジュラス・ パラグアイ・ ウルグアイ・ グアテマラ・ コスタリカ
- T-DMB
- DTMB
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ハンガリーでは2004年に地上デジタルテレビの本格的な試験放送を開始[3]。2007年放送規則・デジタル移行法(Act 74 of 2007 on the rules of broadcasting and digital switchover〈2007. évi LXXIV. törvény a műsorterjesztés és a digitális átállás szabályairól〉)にもとづき、2008年12月から本放送をスタートした[4][3]。方式はDVB-Tを採用した[4]。
- ^ ハンガリーでのアナログ停波は当初、2011年末の予定であった[4][5]。そののち、2012年末、2014年末と二度にわたり期限が延長されたが、2013年3月に至りNMHH(国家メディア・情報通信庁)が予定を前倒して2013年11月でのアナログ放送終了を発表した[6]。
- ^ 2011年4月20日付け3県の延期の総務省案は藤末健三総務委員長が参議院本会議に報告し全会一致で6月8日可決成立した。
出典
[編集]- ^ Soares, Thiago Aguiar (2015年6月17日). “Analog TV Switch-off in Brazil” (pdf) (英語). ANATEL. 2021年1月9日閲覧。
- ^ “澳廣視將關閉模擬電視發射系統” (中国語). 澳廣視新聞. 澳門廣播電視股份有限公司 (2023年6月25日). 2024年1月12日閲覧。
- ^ a b 中, 正樹「ハンガリー民主化革命後のテレビメディアの変遷に対する考察 : ハンガリーのテレビメディア関係者へのインタビュー調査を通して」『静岡大学情報学研究』第17巻、静岡大学情報学部、2012年3月、15頁、CRID 1390290699780408704、doi:10.14945/00006477、ISSN 1342-0909。
- ^ a b c “ハンガリー (より詳細な監督機関・法律・政策等の情報) : 放送” (pdf). 世界情報通信事情. 総務省. pp. 7-9 (2011年10月). 2013年2月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月12日閲覧。 ※最新版pdfの配布ページは総務省「世界情報通信事情」ウェブサイト。
- ^ 海外メディア研究グループ 2009, p. 3.
- ^ 白壁角崇「海外だより〜大使館より〜 : ハンガリーだより〜中欧のアジア、ハンガリー〜」(pdf)『ITU ジャーナル』第43巻第4号、日本ITU協会、2013年4月、60頁、2024年1月12日閲覧。
- ^ UK Free TV: Every mast イギリス国内における地域別アナログ停波のスケジュール
- ^ “アナログ地上波放送 16日から段階的に終了”. KBS WORLD Japanese. KBS韓国放送 (2012年8月17日). 2024年1月12日閲覧。 ※慶尚北道蔚珍でアナログ放送終了、2012年末完全デジタル化。
- ^ 総務省 情報流通行政局 (2010年11月1日). “「デジアナ変換」を実施するケーブルテレビ事業者の決定状況”. 総務省ウェブサイト. 総務省. 2024年1月12日閲覧。
- ^ 総務省 情報流通行政局 (2012年3月). “デジアナ変換サービス実施事業者” (pdf). 総務省ウェブサイト. 総務省. 2024年1月12日閲覧。 ※平成24年3月集計。pdf配布元は総務省「「デジアナ変換」を実施するケーブルテレビ事業者の公表」ページ。
- ^ “南米で進む地デジの日本方式採用 官民一体での売り込み奏功”. 産経新聞 (2010年5月3日). 2010年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年6月12日閲覧。
- ^ 「アフリカ初 日本方式の地デジ採用」『NHKニュース』NHK、2013年2月27日。オリジナルの2013年2月27日時点におけるアーカイブ。2013年2月27日閲覧。
参考文献
[編集]- 海外メディア研究グループ「世界の地上デジタル放送の現在 〜現状・課題・展望〜」『放送研究と調査』2009年1月号、NHK放送文化研究所、2009年1月、2-19頁、ISSN 2433-5622。
関連項目
[編集]- デジタル放送
- 地上波デジタル放送
- デジタルテレビ放送
- 高精細度テレビジョン放送
- ハイビジョン
- コミュニティチャンネル - 地上デジタルテレビ放送の空いているチャンネルを用いて、限られた地域の話題やニュースを集中的に番組制作・編成・放送。いわゆるコミュニティFMのテレビ放送版。現在のところ、電波放送ではなく各社ケーブルTV局により、各地で始められている。
- 世界の放送方式
- 日本の地上デジタルテレビ放送
- NTSC
- PAL
- SECAM
- ウォーターマーク