外治法
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外治法(がいちほう)とは、中国やインドなどアジア地域の伝統医学において、薬浴、鍼灸、指圧など皮膚に対するアプローチを内容とする治療法を指す概念[1]。製剤(中医薬、漢方薬)の内服、薬膳などの食養法による内治法に対する概念である[1][2]。
概説
[編集]東洋医学には証に基づく治療を意味する「弁証論治」の考え方があり、望診、聞診、問診、切診(脈診、腹診など)から導き出される「証」に基づき漢方や薬膳(内治法)、鍼灸(外治法)などの治療方針が決定される[3]。
外治法には、治療開始後の作用出現あるいは治療中止時の消退が迅速であるため、治療の調節性に優れる特徴がある[1]。
内治法や外治法には一定の地域性もあり、モンゴル医学の外治法は硬治法、強治法(強刺激)及び柔治法の三種類に分けられるが、柔治法の中の外部療法などには遊牧生活から発した療法がみられる[4]。
主な外治法
[編集]清代の医学者である呉尚先によれば、主なものとして以下の方法がある。
- 薬物を皮膚に貼り付ける方法
- 貼…餅状で粘り気のある薬物を患部に貼り付ける。
- 塗…希薄な薬物を直接患部に塗布する。
- 敷…比較的濃い薬物を用いて患部を覆う。
- 攤…比較的濃い薬物を布の上に伸ばして患部に貼り付ける。
- 縛…薬物を塗った布を患部に付着させて縛って固定化する。
- 乾渗…粉末状の粉を直接患部に吹き付ける。
- 火を用いて刺激を与える
- 熱を用いて刺激を与える(熨)
- 薬熨…薬物の粉末を炒って熱したものを布袋に入れて皮膚表面を暖める。
- 温熨…薬湯・薬酒で煮て熱した布で皮膚表面を暖める。
- 磚瓦熨…磚瓦(れんが)を熱して布で巻いたものを腹部に当てて暖める。
- 薬物の熱気で治療する方法
- 煎湯燻…煎じた薬物の蒸気を吸入したり、患部に直接当てる。
- 焼煙燻…薬物を焼いた煙で患部を直接燻したり、居室を消毒する。
- 薬物と併用して皮膚表面を擦る
- 抹…布や綿花に薬物を染み込ませ、患部を軽く擦る。
- 搽…粘り気のある薬物で、患部を擦る。
- 刷…刷毛に付いた薬物で、患部を擦る。
- 摩…患部や経穴に薬物を塗布し、その場所に按摩を行う。
- 括痧…患部に油を塗布して、その上を銅貨になどによって擦って発赤させる。
- 薬物を体内に吸い込ませる
- 吹…耳鼻咽頭に対して管状のものに詰めた薬物を吹き付ける。
- 嚏…薬物を鼻孔から吹き込んでくしゃみをさせる(診断に用いる事もある)。また、専ら鼻孔治療のための方法は「㗜(ちく、口偏に畜)」と称した。
- 吸…薬物の煙を咽頭部に直接吸入させる。
- 薬液に体を浸す
- 洗…薬液で患部あるいは全身を直接洗う。
- 浸…薬物を煎じた液の中に患部を一定時間浸す。
- 滴…鼻や耳に薬液を滴らせる。
- 点…目薬による点眼。
- その他
脚注
[編集]- ^ a b c 許鳳浩、王紅兵、上馬場和夫、上岡洋晴、矢崎秀樹「伝統医学の外治法の臨床応用を目指して」 日本補完代替医療学会、2022年7月18日閲覧。
- ^ 上海中医薬大学附属日本校「新中医学入門テキスト 応用編」14-15頁
- ^ 廖世新「東洋医学の真髄となる弁証論治への理解について」 鈴鹿医療科学大学紀要、2022年7月18日閲覧。
- ^ 小松かつ子, 出口鳴美「モンゴル医学と薬物」2009年。
参考文献
[編集]- 傅維康・呉鴻州 著 川井正久・川合重孝・山本恒久 訳『中国医学の歴史』(東洋学術出版社、1997年) ISBN 4924954349