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多項式の展開

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学において多項式の展開(たこうしきのてんかい、: polynomial expansion)とは、複数の多項式の積を一つの多項式で表すことをいう。これは因数分解と逆の操作である。式の見た目として括弧がなくなるため、展開することを俗に「括弧を外す」ということもある。因数分解には統一的な方法論が無いのに対し、展開は分配法則を用いて機械的に行うことができる。この法則は、級数に対するものに自然に拡張される。

概要

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分配法則

a(b + c) = ab + ac

を用いることで、多項式の積を一つの多項式で表すことが可能。まず、帰納法により、第二因子が n 個の項の和である場合の分配法則を得る。

a(b1 + ⋯ + bn) = ab1 + ⋯ + abn

第一因子も複数の項の和である場合、すなわち

(a1 + ⋯ + am)(b1 + ⋯ + bn)

については、次のように計算される。

  1. 第一因子を A とおくと、A(b1 + ⋯ + bn) となる
  2. 分配法則により、これは Ab1 + ⋯ + Abn に等しい
  3. この式の第 i 項は (a1 + ⋯ + am)bi であり、再び分配法則を用いると、これは a1bi + ⋯ + ambi に等しい
  4. よって、全体は (a1b1 + ⋯ + amb1) + ⋯ + (a1bn + ⋯ + ambn) に等しい

この結果を記号 ∑
を用いて書くならば

である。言葉で表現するならば、

第一因子の項と第二因子の項、全ての組み合わせについて積をとり、その和が展開の結果である

ということである。第一因子が m 個の項の和、第二因子が n 個の項の和であれば、第一因子の項と第二因子の項の組み合わせは mn 通りであるから、展開した結果は mn 個の項の和になる。

3つ以上の多項式の積についても同様のことがいえる。すなわち、

それぞれの因子からひとつずつ項を選ぶ、その全ての組み合わせについて積をとり、その和が展開の結果である

ことがしたがう。k 個の多項式の積であって、i 番目の多項式が ni 個の項の和であれば、展開した結果は n1nk 個の項の和になる。

具体例

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(a + b + c)(x + y) を展開すると、ax + ay + bx + by + cx + cy となる。展開の様子は次の表のように表せる。

展開したのち、さらに簡単にできる場合もある。例えば (a + b)(ab) を展開する場合の表は

であるが、ab-ab が打ち消しあうため、a2b2 となる。通常はこのような計算も含めて「多項式の展開」と呼ぶ。数学教育においては、こういう場合の展開式、例えば次のような式を公式として教授することが多い。

  • (a + b)(ab) = a2b2
  • (a + b)(a2ab + b2) = a3 + b3
  • (a + b)2 = a2 + 2ab + b2

右辺を左辺に変形することは因数分解であるから、これらは展開の公式であるとともに因数分解の公式ともみなせる。

冪級数への拡張

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多項式は有限個の項の和であるが、無限個の項の和である(形式的)冪級数に対する積が定義され、多項式の展開の自然な拡張とみなせる。以下、簡単のために1変数の冪級数

についてのみ考える。ふたつの冪級数の積は

と定義される。冪級数をその収束域に対する関数とみなした場合、これは関数の積に対応する。

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指数関数テイラー展開

の右辺の平方を上記の法則で「展開」すると、

となるが、この右辺は (ex)2 すなわち e2x のテイラー展開に等しい。これらの冪級数は、x にいかなる複素数を代入しても収束するが、収束域が限られたものも存在する。例えば、

であるが、1 + x + x2 + x3 + ⋯|x| < 1 の範囲でのみ収束する。表現を変えるならば、複素関数 1 + x + x2 + x3 + ⋯解析接続1/(1 − x) であり、これは x = 1 のみを1位のに持ち、その他の点で正則である。

関連項目

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外部リンク

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