大橋薫 (社会学者)
大橋 薫 | |
---|---|
生誕 |
1922年4月29日(102歳) 福島県南会津郡田島町 [1] |
居住 | 日本 |
研究分野 | 社会学 |
研究機関 |
大阪市立大学 明治学院大学 聖徳大学 科学警察研究所 [1] 東京都精神医学総合研究所 [1]など |
出身校 |
福島県立会津中学校 浦和高等学校 東京帝国大学文学部社会学科 東京大学大学院社会学研究科 |
主な業績 | 社会病理学 |
主な受賞歴 | 社会事業文献賞[2] |
プロジェクト:人物伝 |
大橋 薫(おおはし かおる、1922年(大正11年)4月29日 – ) は、日本の社会学者。明治学院大学名誉教授。社会病理学、都市社会学を主たる専門とする。明治学院大学社会学部長、日本社会病理学会、家族問題研究会の各会長などを歴任。
来歴
[編集]- 研究者として
社会病理学では社会解体論的、社会偏倚論的方針に立脚し[3][* 1]、家族病理、社会病理の視点から研究を行う。また都市社会学においてはシカゴ学派の影響を受ける[2]。
研究対象は家族、アルコール中毒、被差別部落、売春婦、やくざ[4]など多岐にわたり、高知市や大阪市で行った調査活動への評価は高い[5][3]。一方その社会病理学の方法については、学問領域としての社会病理学それ自体と併せて批判もある[3]。
- 経歴[1]
福島県田島町出身で、会津中学、浦和高校を経て1942年(昭和17年)に東京帝大へ進む。翌年に学徒出陣し、石垣島で終戦を迎える。階級は陸軍少尉。
復学後東京大学文学部、同大学院で社会学を専攻し、大学院退学後大阪市立大学に講師として採用され、家政学部助教授に進む。明治学院大学の社会福祉学系大学院開設に際して招聘を受け[6]、文学部助教授、教授を経て1966年(昭和41年)に社会学部教授となる。担当は社会病理学。大学闘争(大学紛争)時には学部長として事態収拾に努める。研究者生活の晩年は聖徳大学設置準備委員を経て同教授。講義を行った大学、短大は東京大学、大阪大学、東北大学ほか30以上を数える。
学会では 日本社会病理学会、家族問題研究会の各会長のほか、 日本社会学会、日本都市学会、日本教育社会学会、日本犯罪社会学会、自殺予防学会などで理事、評議員[7]を、政府組織にあっては、総理府同和対策審議会、文部省学術審議会、法務省矯正保護審議会の各専門委員、委員を歴任。地方自治体では東京都、茨城県、山梨県、尼崎市、川崎市などで社会福祉委員会、同和対策審議会などの委員であった[8]。
著書
[編集]- 単著
- 『都市の社会病理』高知市、1959年(誠信書房 1960年)[* 2]
- 『都市の下層社会』誠信書房、1962年(改訂増補版 1965年)
- 『改訂増補 都市の社会病理』誠信書房、1965年
- 『家族社会学』川島書店、1966年
- 『都市の社会病理』誠信書房、1966年
- 『都市病理の構造』川島書店、1972年[* 3]
- 『都市生活の社会学』川島書店、1973年
- 『家族病理学 – 基本テキスト』有斐閣双書、1975年
- 『社会病理学研究』誠信書房、1976年
- 『都市病理の社会学』垣内出版、1976年
- 『社会病理学 基本的テキスト』有斐閣双書、1979年
- 『都市病理の社会学』垣内出版、1980年
- 『地方中核都市の社会病理』川島書店、1982年
- 『家族病理の社会学』垣内出版、1983年
- 共著
- 『社会病理学』誠信書房、1966年(大藪寿一)
- 『都市社会学』川島書店、1972年(近江哲男)
- 『現代社会病理学』川島書店、1973年(大藪寿一、四方寿雄)
- 『家族病理学』有斐閣、1974年(四方寿雄,光川晴之)
- 『現代教育社会学講座1 現代教育の診断』東京大学出版会、1975年(清水義弘、山村健)
- 『家族社会学 現代家族の実態と病理』川島書店、1976年(増田光吉)
- 『概説社会病理学』川島書店、1977年(四方寿雄、大藪寿一)
- 『都市病理研究 – 複合都市北九州市を中心に』川島書店、1978年(近沢敬一)
- 『都市社会学 都市の社会と病理入門』川島書店、1980年(近江哲男)
- 『片親家族における児童福祉に関する国際比較研究』資生堂社会福祉事業財団、1981年(福田垂穂、西村洋子)
- 『地方都市の社会病理 福岡市を対象として』垣内出版、1985年(内海洋一)
- 『戦後沖縄の社会変動と家族問題』アテネ書房、1989年(新崎盛暉)
- 『現代の社会病理 1』日本社会病理学会編集委員会、1991年
- 『戦後広島の都市診断 社会学的・社会病理学的立場から』ミネルヴァ書房、1991年(林雅孝、八木佐市)
- 『地方大都市の都市問題 10年後にみる北九州市の変容と条件』多賀出版、1991年(保井田進)
- 『海女部落の変貌 地域社会学的研究』森幸雄、田上喜美、大橋純一、下山昭夫共著 垣内出版、1994年
- 『旧産炭地の都市問題 筑豊・飯塚市の場合』多賀出版、1998年(平兮元章、内海洋一)
- 編纂
- 『社会病理学事典』誠信書房、1968年(那須宗一、大藪寿一、仲村祥一)
- 『社会病理学用語辞典』四方寿雄・大薮寿一・中久郎共編 学文社、1973年
- 『社会病理学入門』細井洋子,高橋均共編 学文社、1978年 有斐閣双書、1986
- 『アルコール依存の社会病理』星和書店、1980年[* 4]
- 『福祉国家にみる都市化問題』垣内出版、1984年
脚注
[編集]- 注釈
- ^ 理論的に社会解体論に拠っていることは桑畑勇吉奈良女子大学教授も『書評 大橋薫著「都市病理の構造」』で指摘している。
- ^ 関西学院大学教授大道安次郎は「地方都市の社会病理を社会学的に研究した最初の書物としてのパイオニア的なドキュメント」と評している(『大橋薫著「都市の社会病理」--稀れに見る輝かしい業績』)。
- ^ 『都市の社会病理』、『改訂増補 都市の社会病理』に続き、高知市の社会病理を10年間にわたり分析した著作。
- ^ 大橋を含む18人の論文集で、埼玉県立衛生短期大学教授佐久間淳()は「現実の保健福祉問題に肉薄する学際的好著」と評価している『書評 大橋薫編「アルコール依存の社会病理」』(社会学評論、掲載巻32掲載号1)。
- 出典
- ^ a b c d 『大橋薫教授退任記念論文集』「大橋薫教授 年譜」
- ^ a b 大道安次郎(関西学院大学教授)『大橋薫著「都市の社会病理」--稀れに見る輝かしい業績』(都市問題研究、掲載巻12掲載号2)
- ^ a b c 大藪寿一(大阪市立大学助教授、のち教授)『大橋薫著 都市の下層社会』(社会学評論、掲載巻13掲載号4)
- ^ 『大橋教授退任記念論文集』福田垂穂(明治学院教授)「大橋薫先生を送る」
- ^ 桑畑勇吉(奈良女子大学教授)『書評 大橋薫著「都市病理の構造」』(社会学評論、掲載巻24掲載号4)
- ^ 『大橋薫教授退任記念論文集』渡辺栄(明治学院教授)「大橋先生のこと」
- ^ 『大橋薫教授退任記念論文集』「学会活動」
- ^ 『大橋薫教授退任記念論文集』「社会活動」
参考文献
[編集]- 「大橋薫教授退任記念論文集」『明治学院論叢』(第475号)
- 大橋薫「社会病理学研究の立場」国立社会保障・人口問題研究所、『季刊社会保障研究』(第1巻第3号)
- 真田是「大橋薫編 『社会病理学』」国立社会保障・人口問題研究所、『季刊社会保障研究』(第2巻第4号)