宇陀金ごぼう
宇陀金ごぼう(うだきんごぼう)は、キク科の根菜で、奈良県宇陀市特産のゴボウである。
県内で古くから栽培され、親しまれてきた伝統野菜の一つとして、奈良県 により「大和野菜」に認定されている。
歴史
[編集]宇陀では昔からゴボウの生産が盛んに行われており、1891年(明治24年)の『大和国町村誌集』には、宇陀郡の榛原村、伊那佐村、神戸村、政治村〔ママ〕(いずれも現在の宇陀市)の複数の集落で物産として「牛蒡」が挙げられている[1]。
明治初期から、「大和牛蒡」または「宇陀牛蒡」の名で京阪神市場に知られ、高い評価を受けていた。
1924年(大正13年)の『本場に於ける蔬菜栽培秘法』に「宇陀ごぼうの深耕法」の項があり、この頃にはゴボウ生産の本場とされていたことが分かる[2]。それによると、深耕法は人件費がかかるが農閑期なので採算が合うと言われる、と記されている。
収穫時の重労働と後継者不足、労働力不足、連作障害などの理由で、戦後は衰退していたが、掘り取り作業が機械化され、また2005年(平成17年)10月5日に大和野菜に認定されたことで、栽培が増えている。
特徴
[編集]宇陀市の、粘質で保水性に優れ粒子が細かい土壌と、昼夜の温度差が生み出した風土産物であるといえる。
栽培される土壌には雲母が多く含まれ、掘り出したゴボウの表面に付いて、金粉をまぶしたようにきらきらと美しく輝くことから、「金ごぼう」あるいは「金粉ごぼう」と呼ばれ、特に正月の縁起物として珍重された。
長いもので130cmほど、直径は7cmを超えるものもある。
柔らかな肉質でありながら歯ざわりがよく、ゴボウ特有の芳香と風味に優れた、非常に質の高いゴボウである。
産地
[編集]宇陀市榛原(旧榛原町)など宇陀地方でも比較的平坦な口宇陀と呼ばれる地域。
利用法
[編集]太い方が身が柔らかく、細いものはカリカリとした食感を楽しめる。
たたきごぼう、煮しめ、きんぴら、天ぷら、あら炊き等、用途は広い。 地元では、酒と醤油で味付けして炊き上げるごぼう飯としても食べられる。また、パリパリとした食感を活かして漬物にも加工されている。
その他
[編集]脚注
[編集]- ^ 川井景一選編 『大和国町村誌集』第4巻、1891年。
- ^ 三農学士編 『本場に於ける蔬菜栽培秘法』 柴田書房、1924年。
- ^ 大相撲奈良県知事賞副賞「ちゃんこ大和づくし」 奈良県スポーツ振興課。