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聖職者

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宗教指導者から転送)
左からen:George Carey(カンタベリー大主教 1991–2002), en:Jonathan Sacks(イギリスのラビのリーダー), en:Mustafa Ceric(ボスニアのムフティー), en:Jim Wallis(Sojourners)2009年ダボス会議での様子
ウラジーミル・プーチン大統領と会見するロシア連邦の三宗教の代表者達(2001年2月)。左からダンバ・アユシェエフロシア語版ハンバ・ラマ英語版仏教の指導者)、タルガト・タジュディンロシア語版ムフティーイスラームの指導者)、アレクシイ2世モスクワ総主教正教の指導者)
ダライラマ14世

聖職者(せいしょくしゃ、: κλῆρος: clerus: clergy, cleric)とは、宗教上の聖職に就いている人[1]。(宗教的に)人々を導き、教える役割を果たしている人のことである[2]対義語は、平信徒

概説

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聖職という言葉には「神聖な職」という意味がある[3]。宗教学的には一般信徒から少なくとも機能的に分かれたグループとして位置づけられる[4]

ヤン・ヴァン・ブラフトは、聖職者について、宗教は技能に還元されるものではないが、教えの体得や禅定の工夫など技術の側面もあるとし、「ほとんどの宗教には、宗教的な営みに専修することを許されたか要求された人々が見られる」としている[4]

「聖職者」は宗教によって特有の性質が異なるなど複雑で定義しにくいものと考えられており、その例として仏教の「」を西洋の言葉で訳すことが難しくmonkとすべきかpriestとすべきかという問題がある[4]

ブラフトは「聖職者」には4つの要素があると分析し、それぞれの宗教の性質と構造によってどこにアクセントが置かれるかが異なるとした[4]

  • 聖性の側面
    • Sacerdos(狭義のpriest) - 皆の代表者として聖なるものに接触し宗教的行事を行う者[4]
    • Minister(広義のpriest) - 宗教の教えなど専門的知識をもち、一般信者を聖なるものへ導く者[4]
  • 職種の側面
    • Cleric - 社会的組織としての宗教的組織のリーダーや幹部[4]
    • Religious specialist - 宗教のことを信仰のために研究し、宗教の伝統の特別な担い手となる者[4]

ブラフトはこれら4つの要素をもつ聖職者がすべての宗教にみられるわけではないとし、また、これらの区別は理念型に過ぎず、実際の聖職者はこれらの要素の幾つかが混合した存在としている[4]

キリスト教における聖職者

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キリスト教では、「聖職者」と呼ぶ範囲・対象について、教派ごとに違いがある。

正教会では神品主教司祭輔祭)が聖職者と位置づけられる。神品以外の教衆副輔祭誦経者詠隊堂役等)は教役者には含まれるが、聖職者には含まれない[5]

カトリック教会では司教司祭助祭が聖職者であるとされる[6]。カトリック教会では聖職者と教役者はほぼ同義となっている[7]

聖公会では主教司祭執事が聖職者でありかつ教役者とされる。[8]伝道師等は教役者には含まれるが聖職者には含まれない。聖公会においては各教会の管理責任者は牧師の役職として位置づけられる[9]

プロテスタントでは「万人祭司」の教理から、牧師を聖職者とは呼ばず、「教役者」もしくは「教職者」と呼ぶ。教会での説教など職務の内容や性格は他から見て、カトリックの司祭などと同様に見える部分はあるため、一般的な日本語においては牧師も聖職者と呼ばれる[10]が、牧師が聖職者(司祭)でないというのは、プロテスタントの教義においては重要な点である。

三聖職位
三聖職位の教派別対照表
- 東方教会 西方教会
ギリシア語[11] 英語[12][13] 正教会[14] カトリック教会[15] 聖公会[16] プロテスタント
(一例)[17]
Επίσκοπος Bishop 主教 司教 主教 監督[* 1]
Πρεσβύτερος:聖職位
Πάτερ:呼称
Εφημέριος:役職
Priest:聖職位
Father:呼称
Parson:役職
司祭:聖職位
神父[* 2]:呼称
管轄司祭:役職
司祭:聖職位
神父:呼称
主任司祭:役職
司祭:聖職位
司祭/先生/師[* 3]/神父[* 4]:呼称
牧師(Rector,Vicar):役職[* 5]
(正教師:資格[* 6]
牧師/先生/師[* 3]:呼称
牧師(Pastor):役職[* 7]
Διάκονος Deacon 輔祭 助祭 執事 執事/副牧師/補教師[* 8]
  1. ^ ルーテル教会メソジスト監督教会などにおいて。位置付けは正教会/カトリック教会/聖公会などの主教/司教とは全く異なる。
  2. ^ コンスタンティノープル総主教庁系列などの一部の正教会では輔祭の敬称としても用いられる[18]
  3. ^ a b かしこまった文書において、名前の後に敬称として付加する。
  4. ^ 英語圏では「Father」という敬称は比較的広く使われる[19]が、日本では稀で、修道司祭を神父と呼ぶケースにほぼ限られる[20][21]。同じ漢字文化圏でも、ハイ・チャーチの影響が強い大韓聖公会では「神父(신부)」という敬称が広く使われており[22]、「女性神父(여성 신부)」なる語さえある[23]。(ただし、韓国語では「婦」も「父」と同じ発音・同じハングル表記である。)
  5. ^ 概念および原語はプロテスタントの牧師(Pastor)とは異なり、一箇教会の司牧責任者たる司祭または主教のことを指す。また、大韓聖公会では「牧師(목사)」という語は用いられない[22]
  6. ^ 日本基督教団などにおいて[24]聖職位ではなくあくまで「資格」であり、概念は司祭(Priest)とは全く異なる。
  7. ^ プロテスタントにおける牧師は、正教会、カトリック教会、聖公会における司祭とは位置付けが異なる。
  8. ^ プロテスタントにおける執事・副牧師・補教師の位置付けは多様であるが、いずれにしても正教会における輔祭、カトリック教会における助祭、聖公会における執事とは、位置付けや役割が異なることが多い。特に長老制会衆制を採る教会では、教職者ではない平信徒が執事に任ぜられる[17]

イスラームにおける聖職者

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イスラームにおいて聖職者に当たるのはウラマームッラーと呼ばれる人々である。キリスト教やユダヤ教やイスラームなどのアブラハムの宗教系の一神教においては聖職者(Priest)とは神と人間の間を取り持つという意味がある。イスラームの建前としては神と人との間に仲介役を入れる、あるいは信徒間に階級差を設けることを嫌う傾向があり、ウラマーは聖職者ではない、とか、イスラームには聖職者はいない、と主張される。日本語の「聖職者」はアブラハムの宗教系一神教独特の事情とは関係ない概念であるが、一部のイスラーム教徒がこのような主張をするので意味が通じず誤解が起こっている。

転用や比喩

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学校教師はただ教科を教えるだけでなく、人間としての生き方を教えることを期待されるので、しばしば「聖職者」と形容されるが、これは本来的な用法ではない。

出典

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  1. ^ 大辞泉
  2. ^ 広辞苑
  3. ^ 広辞苑 第五版 p.1470
  4. ^ a b c d e f g h i ヤン・ヴァン・ブラフト. “世界宗教の条件と課題”. 南山宗教文化研究所. 2022年3月28日閲覧。
  5. ^ 聖職者と修道士
  6. ^ キリスト教入門・火曜講座
  7. ^ 喜びと希望(Gaudium et spes)
  8. ^ 日本聖公会東京教区の"more"ページ
  9. ^ 聖アンデレ教会で皆さんをお迎えする聖職者たち
  10. ^ 新村出(編)『広辞苑 第五版』岩波書店、2004年、項目「聖職者」「牧師」頁。 
  11. ^ Ο Επίσκοπος, οι Πρεσβύτεροι και οι Διάκονοι
  12. ^ 聖公会の出典:Anglicans Online | The Catechism or an Outline of the Faith
  13. ^ Clergy Etiquette
  14. ^ 正教会の出典:聖職者と修道士
  15. ^ カトリック東京大司教区 司祭とは
  16. ^ 日本聖公会 北関東教区 - 聖公会とは
  17. ^ a b キリスト教大事典』478頁、教文館、昭和48年9月30日 改訂新版第二版
  18. ^ Etiquette and Protocol”. Greek Orthodox Archdiocese of America. 2009年4月2日時点のオリジナルよりアーカイブ2009年3月21日閲覧。
  19. ^ Clergy & Staff” (英語). St. Aidan's Episcopal Church. 2021年9月21日閲覧。
  20. ^ 信徒の働きを生かす英国の教会”. 日本聖公会 管区事務所 (2003年11月5日). 2021年9月21日閲覧。
  21. ^ 一つの修女会の発展的解消”. 日本聖公会 中部教区 (2014年7月1日). 2021年9月21日閲覧。
  22. ^ a b 성공회, 성직자, 호칭, 복장, 교회 성장(聖公会、聖職者、呼称、服、教会成長)”. 성공회 질문 답변(聖公会質問回答) (2001年1月21日). 2021年10月14日閲覧。
  23. ^ 26일 은퇴하는 ‘첫 여성사제’ 민병옥 신부(26日に引退する「初の女性司祭」閔丙玉神父)”. 서울신문(ソウル新聞) (2011年4月13日). 2021年10月14日閲覧。
  24. ^ 教規 -第5章- - 日本基督教団公式サイト”. 2021年3月6日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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