寄集群
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寄集群(きしゅうぐん[1]、英:Collective Group)は、なんらかの属に含めることが明確ではない種、あるいは卵や幼生など特定の発生段階にある生物の集合のこと[1][2]。旧訳語として集合群[1][2]が用いられていたほか、拾遺群[3]といった訳語もある。生物の分類を行う際に用いられる概念だが、「寄せ集め群」の名のとおり、利便を目的として設けられる便宜上の群としての性格がつよい[1]。
国際動物命名規約上の扱い
[編集]国際動物命名規約は寄集群に対して提唱された学名を対象に含んでおり[4]、寄集群に対して提唱された学名(寄集群名)は、基本的に属階級群名として扱うことが定められている[5]。ただし寄集群名に関しては、同名関係にあるものを除いて他の属階級群名との間で先取権を競わないこと[6]、タイプ種の固定を伴う必要がないこと[7][8][9]など、属階級群名とは異なる扱いを求める条項も設けられているため、これらの条項における言明に反しないことが条件となる[10]。
寄集群の例
[編集]- 裂頭条虫科に属する条虫の幼虫(プレロセルコイド)のうち、対応する成虫が同定されていないものを暫定的に含めるために用いられる[11]。現在も成虫が同定されていない芽殖孤虫 Sparganum proliferum のほか、幼虫移行症に関連するマンソン裂頭条虫の幼虫についてマンソン孤虫 S. mansoni の名が用いられる場合がある[12]。
- Diversibipalium Kawakatsu, Ogren, Froehlich & Sasaki, 2002 [13]
- コウガイビル類は歴史的に外部形態による記載・分類が行われてきた分類群であり、交接器官の構造が不明の種も多く知られる。近年は交接器官の解剖学的および組織学的特徴を基準にした新たな分類が行われているため、古い時代に記載された種がどの属に含まれるべきかの判断ができない例も多く発生しており、そのような種を所属させる寄集群として設立されたのが本群である。タスジコウガイビル Diversibipalium multilineatum など多くの種がこの属名の下に暫定的に置かれている[14][15]。
出典
[編集]- ^ a b c d 伊藤 1989.
- ^ a b 動物命名法国際審議会 2005, p. 91, 用語集.
- ^ 大山 1965.
- ^ 動物命名法国際審議会 2005, p. 2, 条1.2.
- ^ 動物命名法国際審議会 2005, p. 8, 条10.3.
- ^ 動物命名法国際審議会 2005, p. 24, 条23.7.
- ^ 動物命名法国際審議会 2005, p. 16, 条13.3.2.
- ^ 動物命名法国際審議会 2005, p. 42, 条42.3.1.
- ^ 動物命名法国際審議会 2005, pp. 61–62, 条67.14.
- ^ 動物命名法国際審議会 2005, p. 42, 条42.2.
- ^ Scholz, Kuchta & Brabec 2019.
- ^ 田中 et al. 1967.
- ^ Kawakatsu et al. 2002.
- ^ 久保田 & 川勝 2010.
- ^ 伊藤 1955.
参考文献
[編集]- 動物命名法国際審議会 野田泰一; 西川輝昭訳 (2005), 国際動物命名規約 第4版 日本語版 〔追補〕, 日本分類学連合, ISBN 4998089501
- 伊藤, 立則 (1989). “<研究・技術報告>国際動物学命名規約第3版について”. 瀬戸臨海実験所年報 3: 24-34. NAID 120005327069 .
- 大山, 桂 (1965). “第15回国際動物学会議で改訂された国際動物命名規約の解説 : その6”. 動物分類学会会報 33: 1-13. doi:10.19004/jsszc.33.0_1. ISSN 2189-7271. NAID 110002337241 .
- Scholz, Tomáš; Kuchta, Roman; Brabec, Jan (2019). “Broad tapeworms (Diphyllobothriidae), parasites of wildlife and humans: Recent progress and future challenges”. International Journal for Parasitology: Parasites and Wildlife 9: 359-369. doi:10.1016/j.ijppaw.2019.02.001. PMID 31341771 .
- 田中, 寛; 山科, 正平; 遠藤, 仁; 加納, 六郎; 小松崎, 鴻; 川島, 恂二 (1967). “眼孤虫症の2例 特に分岐した孤虫について” (PDF). 寄生虫学雑誌 (日本寄生虫学会) 16 (5): 319-323. ISSN 00215171. NAID 40017623204 .
- 久保田, 信; 川勝, 正治 (2010). “和歌山県産コウガイビル類(扁形動物門, 三岐腸目, 結合三岐腸亜目, リクウズムシ科, コウガイビル亜科)の続報と本動物群の高次分類体系に関する注記”. 南紀生物 (南紀生物同好会) 52 (2): 97-101. ISSN 0389-7842. NAID 120005439972 .
- Kawakatsu, Masaharu; Ogren, Robert, E.; Froehlich, Eudoxia Maria; Sasaki, Gen-Yu (2002). “Misclellaneous papers on turbellarians. Article II. Additions and corrections of the previous land planarian indices of the world - 10” (pdf). The Bulletin of Fuji Women's University 藤女子大学紀要 (40): Ser. II: 162-177 ( pdf. p. 3) .