山下いくと
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山下 いくと(やました いくと、1965年8月23日 - )は、日本の漫画家、メカニックデザイナー[1]。岐阜県出身[1]。現在も岐阜を拠点に活動を続けている[2]。
人物
[編集]名古屋芸術大学美術学部出身を卒業後、漫画家として活動。代表作は『ダークウィスパー』『風の住処』[2]。
『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』『戦闘妖精雪風』『青の6号』など、多くのアニメ作品にメカニックデザインを提供している[1][3]。『戦闘妖精雪風』ではデザインだけでなく、最終巻で絵コンテ・脚本も担当[1]。また、気晴らしで描いたいたずら描きが元で、OVA『戦闘妖精少女 たすけて! メイヴちゃん』が製作された。
小説『エヴァンゲリオン ANIMA』では、執筆、デザイン、イラスト、製作総指揮を兼任した[1][4]。
2015年に日本アニメ(ーター)見本市で発表された短編アニメ「偶像戦域」では監督を務めた[5]。
メカニック描写の斬新さとデザインのセンスについては海外でも高い評価を受けている[3]。
学生時代、地元でSF系の同人誌に漫画を描くようになり、そこで出会った漫画家のきお誠児とは、のちに共に『新世紀エヴァンゲリオン』の制作に参加することになる[2]。またプロになった後も同人サークル「BLUE AND PURPLE」を主宰しており、設定資料集や画集といった作品を発行している[3]。
逸話
[編集]- ふしぎの海のナディア
- ニュー・ノーチラス号のデザインを担当。初期のデザイン案では、西洋の剣を思わせる4枚羽根を持つ前進翼という独特なデザインだったが、庵野秀明監督に「作画がしにくい」ということで外形をリファインされている。そのリファインがあまりにも原型を残していなかったため「名前のクレジットはいらない」といったところ、本当にナディアではクレジットがなくなってしまった。艦橋など船内のデザインは、原案から変更されずに使われ、配色のみ原色系のカラフルな色に変えられた。
- 新世紀エヴァンゲリオン
- 企画には途中から参加し、メカニックデザインと設定を担当[6]。最初は別に主役メカを担当する人間がおり、オファーはその周辺メカのデザインだったために断った。しかしその後、改めて主役メカのオファーが来たので引き受けることにした[7]。ガイナックスから伝わる断片的な情報でデザインを始め、設定を含めて全体をデザインした[6][注 1]。庵野秀明監督からの「コックピットは胸にあること」「胸板を薄くすること」という条件に対し、個人の判断でコックピットは脊椎を通すデザインにすることに決め、庵野監督からは事後承諾を得た。また「エントリープラグ」などの名称も決めた[9]。庵野監督はアニメ制作の初期段階においては受け身の姿勢を取り、各スタッフにアイデアを出させてそれをぶつけ合うことで話の骨格に肉付けをしていった[10]。そのため、設定担当である山下にも脚本の初期稿が渡されて、思い付いたアイデアやストーリーなどを電話やFAXで庵野監督に伝えた[10]。テレビシリーズの最終回や旧劇場版用の準備プロットも考えて提案した[11]。
- 青の6号
- 最初は参加する予定はなかったが、本人の漫画『ダークウィスパー』が海を舞台にしたものであったために一部の人間が「山下いくとは参加しないのか」と言い始め、それが伝言ゲームの要領で伝わるうちに「山下本人がやらせろと言っている」と変化。それを聞いた制作会社のゴンゾが仕事を依頼。実際に潜水艦をデザインすることになった。
- 戦闘妖精雪風
- OVA版のメカデザイナーとして戦闘機等のデザインを手がける。主役機・メイヴのデザインは「蓮の花」をヒントにしているとのこと。また、本機のエンジン部までをパソコンで描き上げていたところ、データが全部消えてしまった。この腹いせに落書きとして描かれたのが、前述の「メイヴちゃん」である。本来ならば戯れで描いた1イラストで終わるところが、フィギュア化・OVA化とトントン拍子にメディア展開してしまい、遂には「たすけて!メイヴちゃん」作中のキャラクター「スーパーシルフちゃん」のパンツに、原作者の神林長平の直筆サインを入れさせるに至った。
主な参加作品
[編集]テレビアニメ
[編集]- ふしぎの海のナディア (1990〜1991年) メカニックデザイン
- 新世紀エヴァンゲリオン (1995〜1996年) メカニックデザイン
- 機神大戦ギガンティック・フォーミュラ (2007年) メカニックデザイン
OVA
[編集]- トップをねらえ! (1988〜1989年) メカニックデザイン(第5、6話)
- 青の6号 (1998〜2000年) メカニックデザイン[12]
- 戦闘妖精雪風 (2002〜2005年) メカニックデザイン、絵コンテ・脚本(最終話)
- 戦闘妖精少女 たすけて! メイヴちゃん(2005年) キャラクター原案
WEBアニメ
[編集]- 日本アニメ(ーター)見本市 「偶像戦域」(2015年) 原案、監督、脚本、イメージボード、キャラクター&メカニックデザイン、絵コンテ、原画
アニメ映画
[編集]- 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生(1997年) メカニックデザイン、エヴァンゲリオンコンセプトデザイン
- 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(1997年) メカニックデザイン、エヴァンゲリオンコンセプトデザイン
- ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007年)主・メカニックデザイン
- ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(2009年)主・メカニックデザイン
- ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012年)主・メカニックデザイン、イメージボード
- シン・エヴァンゲリオン劇場版(2021年)主・メカニックデザイン、原画
実写映画
[編集]雑誌
[編集]- バンダイ『サイバーコミックスNo.9』(1989年)『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』ピンナップイラスト[注 2]
- プロジェクトU『PONY-METAL U-GAIM』(-年)同人誌に参加して数点の原画を寄稿
その他
[編集]- 準天頂衛星システム「みちびき」2〜4号機打ち上げミッションロゴ(2017年)コンセプトデザイン[15]
- 新幹線:エヴァンゲリオン プロジェクト「500 TYPE EVA」(2015年11月7日〜2018年5月13日)車両外装デザイン[16]
著作
[編集]小説
[編集]- 『エヴァンゲリオン ANIMA』(2008〜2013年) - 陰山琢磨の後を引き継ぐ形で途中から執筆。製作総指揮、メカニックデザイン、イラスト担当。全5巻[4]。
漫画
[編集]画集
[編集]- 山下いくと、きお誠児『それをなすもの: 新世紀エヴァンゲリオンコンセプトデザインワークス』KADOKAWA、1998年3月25日。ISBN 978-4-048-52908-2。
- 山下いくと、きお誠児『なをもつかぜのほん』BLUE AND PURPLE。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e 『電撃ホビーマガジン 2007年12月号』メディアワークス、169頁。
- ^ a b c 秋山由香 (2015年7月31日). “『エヴァ』のスタジオカラーやアニメクリエイターが語る! 日本アニメ(ーター)見本市の"短編アニメ発想法"”. MdN books. エムディエヌコーポレーション. 2024年3月13日閲覧。
- ^ a b c 伊藤真広、村中宣彦(編)、2006、「【プロ作家】→【同人名義】データベース」、『ゲームラボ特別編集「現代視覚文化研究」』、三才ブックス ISBN 4-86199-061-0 p. 192
- ^ a b ふじきりょうすけ (2017年10月6日). “「エヴァ」人類補完計画がなかったら? 碇シンジ17歳を描くif小説刊行”. KAI-YOU.net. 株式会社カイユウ. 2024年3月18日閲覧。
- ^ 相馬亨 (2015年5月9日). “日本アニメ(ーター)見本市第21話山下いくと監督「偶像戦域」 エヴァのメカニックデザイナーが描く”. アニメ!アニメ!. イード. 2024年3月13日閲覧。
- ^ a b それをなすもの 1998, p. 17.
- ^ a b それをなすもの 1998, pp. 114–116.
- ^ それをなすもの 1998, p. 61.
- ^ それをなすもの 1998, p. 52.
- ^ a b それをなすもの 1998, p. 71.
- ^ それをなすもの 1998, pp. 73–74.
- ^ “青の6号”. GONZO公式サイト. 2016年5月16日閲覧。
- ^ “シン・仮面ライダー:蜘蛛男が登場! デザインに出渕裕、前田真宏、山下いくと 庵野秀明監督「バッタと蜘蛛が出ます」”. 2021年9月30日閲覧。
- ^ 山下いくと [@ikuto_yamashita] (2017年4月10日). "横から失礼します。". X(旧Twitter)より2024年3月18日閲覧。
- ^ “エヴァンゲリオンのスタッフ制作のロゴが、準天頂衛星「みちびき」打ち上げのミッションロゴに採用!”. エヴァ・インフォメーション. カラー (2017年2月24日). 2024年3月18日閲覧。
- ^ “山下いくと&高倉武史が描くエヴァ新幹線インプレ!”. KADOKAWA. (2015年11月6日) 2024年3月18日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 山下いくと (@ikuto_yamashita) - X(旧Twitter)