平山修次郎
平山 修次郎（ひらやま しゅうじろう、1887年〈明治20年〉7月18日[1] - 1954年〈昭和29年〉12月7日）は、日本の昆虫学者、標本商。三鷹市議会議長も務めた。
経歴
[編集]1887年（明治20年）、京都に生まれる[注釈 1]。京都府立第一中学校卒業後、三省堂標本器具部に勤める[2][注釈 2]。1907年（明治40年）には松村松年と台湾に採集旅行に行っている[2]。その後、三省堂が火災にあい昆虫標本部門を辞めることとなったため、1912年（大正元年）に渋谷に平山昆虫標本製作所を開く[4]。平山製作所では採集や標本作製の道具の販売、標本の作製や販売をおこなった[2]。
1930年（昭和5年）、東京・井之頭に平山博物館を開館[5]。
1933年（昭和8年）には三省堂から松村松年校閲、平山修次郎著による『原色千種昆虫図譜』（『原色千種昆蟲圖譜』）を刊行した。
1934年（昭和9年）には再び台湾に採集旅行、1936年（昭和11年）には「蟲同好会」を設立して採集会などをおこなった[2]。
その後三鷹市議会議員となり、1951年（昭和26年）5月17日から1953年（昭和28年）12月15日まで議長を務めた[2][6]。1954年（昭和29年）に69歳で逝去[2]。
平山博物館
[編集]1930年（昭和5年）、東京・井之頭に開館。収集した昆虫、鳥獣、貝類標本の展示のほか、標本や採集・標本作製用具の販売もおこなった[2]。
1952年（昭和27年）に文部省指定博物館となった[2]。
平山の死後、1955年（昭和30年）頃に閉館し[5]、1957年（昭和32年）に井の頭町会が平山家から譲り受け、井の頭文化会館となった[7]。現在は井の頭地区公会堂となっている。
矢島稔によれば、平山の死後、昆虫標本のコレクションは正力松太郎によって購入され、よみうりランドで展示された[8]。また1971年開館の兵庫県千種川グリーンライン昆虫館（兵庫県昆虫館）で展示されていた[9]。2008年の閉館後、兵庫県昆虫館は佐用町へ無償譲渡され佐用町昆虫館となった[9]。コレクションの一部は現在は兵庫県立人と自然の博物館で管理されているという[10]。
著書
[編集]- 『原色千種昆虫図譜』 三省堂、1933年（昭和8年）、全国書誌番号:46086625
- 『原色千種続昆虫図譜』 三省堂、1937年（昭和12年）
- 『原色蝶類図譜』 三省堂、1939年（昭和14年）、全国書誌番号:46051877
- 『原色甲虫図譜』 三省堂、1940年（昭和15年）、全国書誌番号:46037003
影響
[編集]平山の図鑑を少年期に読んで影響を受けた研究者には、青木淳一、石川良輔、茅野春雄、矢島稔などがいる[2][11]。他に手塚治虫、北杜夫[12]、養老孟司[13]、奥本大三郎など。
手塚治虫は小学生のとき、同級生から平山の『原色千種昆蟲図譜』を見せられてから昆虫に興味を持つようになり、昆虫採集に励み『昆蟲の世界』という肉筆回覧誌を発行したり、宝塚新温泉の「昆虫館」へ通い昆虫学者を夢みたこともあった[14]。治虫のペンネームは図鑑に掲載されていたオサムシに由来する[15]。
昆虫写真家の浜野栄次は平山の教えを受け[16]、志賀昆虫普及社を創立した志賀夘助は1919年から1931年まで平山の下で働いていた[2]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 『三鷹市議会史 : 市制施行十周年記念』三鷹市議会事務局、1960年、p.207。
- ^ a b c d e f g h i j 武蔵高等学校中学校紀要 2020, p. 41.
- ^ 武蔵高等学校中学校紀要 2020, p. 42.
- ^ 志賀 2004, p. 79.
- ^ a b “戦前期の武蔵野”. 三井住友トラスト不動産. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “歴代正副議長”. 三鷹市議会. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “虫ん坊 2011年12月号（117）”. 手塚治虫 TEZUKA OSAMU OFFICIAL. 2024年12月18日閲覧。
- ^ 矢島 2012, p. 37.
- ^ a b “佐用町昆虫館の歴史”. 佐用町昆虫館. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “東京産 オオクワガタ 平山修次郎コレクションと原色千種昆虫図譜、手塚治虫氏”. 昆虫漂流記 (2017年1月21日). 2024年12月18日閲覧。
- ^ 矢島 2012, p. 36.
- ^ 北杜夫『どくとるマンボウ昆虫記』新潮社〈新潮文庫〉、1993年3月25日、80-82頁。
- ^ 養老孟司 (2023年6月27日). “台湾で見つけた、標本ラベルの謎（前篇）”. 考える人. 新潮社. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “常設展1 「宝塚と手塚治虫」2｜常設展｜手塚治虫記念館”. 手塚治虫 TEZUKA OSAMU OFFICIAL. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “親友が語る手塚治虫の少年時代（8）治虫（オサムシ）誕生”. 虫マップ 手塚治虫ゆかりの地を訪ねて. 2024年12月18日閲覧。
- ^ 「浜野栄次」『20世紀日本人名事典（2004年刊）』日外アソシエーツ。コトバンクより2024年12月18日閲覧。
参考文献
[編集]- 志賀夘助『日本一の昆虫屋 志賀昆虫普及社と歩んで、百一歳』文藝春秋〈文春文庫PLUS〉、2004年7月10日。
- 矢島稔『日本の昆虫館 戦前と戦後のあゆみ』東海大学出版会、2012年2月20日。
- 白井亮久; 高田陽; 福田悠人 (2020), 武蔵高等学校収蔵の戦前の昆虫標本の整理（予報）～収蔵標本から探る創立期の生物相調査と Fauna Musashinensis との関連について～, , 武蔵高等学校中学校紀要4: pp. 29-73