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平行移動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
平行移動はすべての点を一定の方向に一定の距離だけ動かす。
平行な二つの直線を軸とする二つの鏡映合成は平行移動である。各点が平行移動により距離 M だけ動くとき、二つの直線の距離はその半分 M/2 である。

ユークリッド幾何学における平行移動(へいこういどう、: translation, parallel translation, parallel displacement)とは、すべての点を一定の方向に一定の距離だけ動かす変換である。

平行移動は並進[1]あるいは並進運動 (translational motion) とも呼ばれる。

平行移動は向き距離角度を保ち、非自明なものは不動点を持たない。

一次元の場合、平行移動 T は定数 a を用いて

T(x) = x + a

と表せる。

概観

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平行移動は各点に定ベクトルを加える操作として解釈することや、座標系原点をずらす操作として解釈することもできる。定ベクトル v に対して、v に対応する平行移動 Tv は、点 P(p)v だけ動かす写像

Tv(p) = p + v

として働く。

平行移動は二つの図形の間の一対一対応や、ある平面から別の平面への写像とみることもできる[2]T が平行移動であるとき、部分集合 A の写像 T によるを、AT による平行移動と呼ぶ。T が定ベクトル v に対応する平行移動 Tv であるとき、ATv による平行移動はしばしば A + v と書かれる。

平行移動を剛体運動として記述することもできる(平行移動の他には回転鏡映)。n-次元ユークリッド空間において任意の平行移動は等距変換である。平行移動全体の成す集合は平行移動群 T(n) を成す。この群はもとの空間(の加法群)と同型であり、ユークリッド群 E(n)正規部分群である。E(n)T(n) による剰余群直交群 O(n) に同型:

E(n)/T(n) ≅ O(n)

である。

ベクトル変数の写像 f(v) に作用する、定ベクトル δ に対応する平行移動作用素 Tδ

で定義される作用素を言う。

行列表現

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非自明な平行移動は不動点を持たないアフィン変換である。一方、行列の積は必ず原点を固定する。 にも拘らず、ベクトル空間の平行移動を行列で表すことが、斉次座標系英語版を用いた回避方法によって一般に行われる。

例えば三次元の場合において、ベクトル w = (wx, wy, wz) は四成分の斉次座標 w = (wx, wy, wz, 1)で表せる[3]

各点を斉次座標で書いた斉次ベクトル p を、定ベクトル v だけ平行移動させるには、平行移動行列

を掛ければよい。実際、以下に見るように掛けた結果

は所期のものであることが確認できる。平行移動行列の逆行列は、ベクトルの向きを逆にすればよいから、

で与えられる。同様に、平行移動行列の積は、ベクトルの和に対する平行移動

になる。ベクトルの和は可換であるから、平行移動行列同士の積もそうである(任意の行列の積が非可換であるのとは異なる)。

物理学における平行移動

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物理学における平行移動は並進運動とも呼ばれ、物体の位置を変える運動である(回転運動に対照する)。例えば Whittaker (1988, p. 1) によれば、

If a body is moved from one position to another, and if the lines joining the initial and final points of each of the points of the body are a set of parallel straight lines of length , so that the orientation of the body in space is unaltered, the displacement is called a translation parallel to the direction of the lines, through a distance . (剛体がある位置から別な位置へ動くとき、剛体の各点の始点と終点を結ぶ直線が平行線集合となり、したがって空間における剛体の向きが変わらないならば、この変位を「その直線方向への距離 だけの平行移動」と呼ぶ。)

平行移動は物体の各点 (x, y, z)

なる形の式に従って変化させる操作である。ただし、x, Δy, Δz) は物体の各点に共通のベクトルとする。この物体の各点に共通の平行移動ベクトル x, Δy, Δz) は、(「角」変位 (angular displacement) と呼ばれる回転を含む変位と区別して)ふつう「線型」変位または「直線」変位 (linear displacement) と呼ばれる特定の種類の変位を記述するものである。

時空を考えるとき、時間座標の変化は平行移動であると考えられる。例えば、ガリレイ変換群やポワンカレ群は時間に関する平行移動を含む。

脚注

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  1. ^ まれに併進とも書く。
  2. ^ Osgood & Graustein 1921, p. 330.
  3. ^ Paul 1981.

参考文献

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  • Osgood, William F.; Graustein, William C. (1921). Plane and solid analytic geometry. The Macmillan Company 
  • Paul (1981), Robot manipulators: mathematics, programming, and control : the computer control of robot manipulators, Cambridge, MA: MIT Press, https://books.google.co.jp/books?id=UzZ3LAYqvRkC 
  • Whittaker, Edmund Taylor (1988). A Treatise on the Analytical Dynamics of Particles and Rigid Bodies (Reprint of fourth edition of 1936 with foreword by William McCrea ed.). Cambridge University Press. ISBN 0-521-35883-3 

関連項目

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外部リンク

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