張洪 (元)
張 洪（ちょう こう、? - ?）は、13世紀後半にモンゴル帝国及び大元ウルスに仕えた漢人将軍の一人。
『元史』には立伝されていないが『羅氏雪堂蔵書遺珍』に収録される『経世大典』の抜粋にその事蹟が記され、『新元史』にはこれを元にした列伝が記されている[1]。
概要[編集]
張供は河間路滄州の出身で、モンゴル帝国に仕えて千戸に任じられた人物であった。1261年（中統2年）に功績により銀符千戸とされ、1262年（中統3年）に李璮の乱が起こると済南に拠った李璮軍の討伐に功績をあげた。これにより、金符を授けられて武衛親将軍千戸の地位に進んだ。1267年（至元4年）には新しい首都となる大都城の造営に関わり、金織衣を与えられた。1274年（至元11年）からは南宋領への侵攻に加わり、五河口の攻略戦に従事した。1275年（至元12年）には鄭陽郡を守った[2]。
1277年（至元14年）に北方モンゴル高原でシリギの乱が勃発すると、張洪も叛乱鎮圧のため派遣された。この時張供は宣武将軍・侍衛親軍総管の地位を授けられ、シリギの甥のサルバンを討ったと伝えられている。しかし、遠征先からの帰還中、カラコルム付近のタミル川で賊に輜重を略奪される失態を犯している。1279年（至元16年）には宣命広威将軍・左衛親軍副都指揮使の地位に進み、1280年（至元17年）には更に安遠大将軍に昇格となった。1287年（至元24年）にはナヤンの乱鎮圧戦にも従軍し、その翌年に昭毅大将軍の地位を授けられた所で官職を退いた[3]。
息子に張奉政がおり、千戸の地位を継承した。武墨将軍・僉左衛親軍都指揮司事の地位を経て1295年（元貞元年）には左衛で屯田を行ったが、1307年（大徳11年）に引退し息子の張庸が地位を継いでいる[4]。
脚注[編集]
- ^ 渡辺健哉 2010, p. 83-84/90.
- ^ 『羅氏雪堂蔵書遺珍』経世大典輯本,「張洪、河間滄州人。中統二年、以功授銀符千戸。三年、従征李璮、囲済南、賜金符、進武衛親将軍千戸。至元四年、董修大都城工呈、賞金織段二。十一年、従征五河口。十二年、出守鄭陽郡」
- ^ 『羅氏雪堂蔵書遺珍』経世大典輯本,「十四年、従北征撒里蛮、進宣武将軍、侍衛親軍総管。還至和林塔迷児之地、行嚢為賊所掠。十六年、改授宣命広威将軍・左衛親軍副都指揮使。十七年、加安遠大将軍。二十四年、扈駕征乃顔。二十五年、以昭毅大将軍、尋告老」
- ^ 『羅氏雪堂蔵書遺珍』経世大典輯本,「子奉政、襲醆、授武墨将軍・僉左衛親軍都指揮司事。元貞元年、提調左衛屯田、得粟餘十万斛。大德十一年、子庸襲職」
参考文献[編集]
- 渡辺健哉「『羅氏雪堂蔵書遺珍』所収「経世大典輯本」について」『集刊東洋学』第103巻、中国文史哲研究会、2010年5月、82-94頁、CRID 1050852414444364544、hdl:10097/00132677、ISSN 0495-9930。
- 『新元史』巻166列伝63張洪伝