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復氏届

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

復氏届(ふくうじとどけ)は、日本において婚姻(法的な結婚)をし、その際に配偶者に改めた者が、配偶者の死後に提出できる書類。この届出により、婚姻前の氏に復することができる。

概要

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婚姻により改氏した者が離婚した場合には、その離婚により婚姻前の氏に復することができる(民法第767条第1項)。ただし、夫婦の一方が死亡した場合または失踪宣言により配偶者が死亡したとみなされた場合には、生存している配偶者(生存配偶者)は「復氏届」の提出により氏を復することができる。

法的根拠

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復氏届の手続き根拠としては、戸籍法第95条民法第751条第1項に規定されている。

手続き等

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配偶者の死亡または失踪宣言により配偶者が死亡したとみなされた場合に、婚姻の際に改氏した生存配偶者は婚姻前の氏に復することができる[1][2][注釈 1]離婚と異なり、この場合の復氏はその届出の有無及び時期については生存配偶者の自由意志に委ねられ、第三者の同意や家庭裁判所の許可などは不要である[2]

復氏届の届出人は生存配偶者のみであり、届出地は戸籍法第25条の規定(届出事件の本人の本籍地又は届出人の所在地)による[4]

復氏届を提出した場合、原則として婚姻前の戸籍に復籍する[4]。ただし、既にその戸籍が除籍されている場合、または生存配偶者が新戸籍の編成を申し出た場合には、新戸籍が編成される[4][5]

復氏の届出のみでは、子供の氏や戸籍に変動をもたらさないため[4]、子供の氏を生存配偶者の氏と同じにするためには、民法第791条第1項に規定する子の氏の変更の許可を得た上で、戸籍法第98条の規定による入籍届を提出する必要がある[6][7]

生存配偶者本人の意思に反し、親族などが復氏届を提出した場合には、戸籍法第114条の規定に基づき、戸籍の訂正を申請することで戸籍の訂正をすることができる[8]

姻族関係の終了とは無関係の届出であるため、姻族関係を終了させる場合には、復氏届とは別に姻族関係終了届を提出する必要がある[2][6]

婚姻の際に改氏していない者、夫婦が共同で帰化した者は、復する氏がないため復氏届を提出できず[2]、夫婦が共同で養子となり配偶者の死後も養子縁組が存続している者は、民法第810条の規定により氏の変更が制限される[5]。なお、婚姻の際に配偶者である外国人の氏を称するために、戸籍法第107条第2項に規定する氏を変更する旨の届出をしていた者については、配偶者の死亡の日から3ヶ月以内に限り、戸籍法第107条第3項に規定する氏を変更する旨の届出をすることにより、婚姻前の氏に変更することができる[9][注釈 2]。また、外国人が帰化により日本人の配偶者の氏を称し、その配偶者が死亡した場合には、生存配偶者である帰化した者の提出した復氏届については受理して差し支えないとされており、生存配偶者が帰化前に称していた氏は、復氏の届出により編成される新戸籍の関係では婚姻前の氏に準じて取り扱うことが認められる[5]

民法第897条に規定する祭祀に関する権利を承継した後に、生存配偶者が復氏した場合には、その権利を承継すべき者を定めなければならない(民法第769条第1項[10]。その協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所がその権利を承継すべき者を定めることとなる(民法第769条第2項)[10]

届出数

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下記の表は法務省の戸籍統計による[11]

復氏の届出数
年度 届出数
1997年(平成9年)度 2,379
1998年(平成10年)度 2,328
1999年(平成11年)度 2,497
2000年(平成12年)度 2,446
2001年(平成13年)度 2,586
2002年(平成14年)度 2,486
2003年(平成15年)度 2,473
2004年(平成16年)度 2,461
2005年(平成17年)度 2,469
2006年(平成18年)度 2,473
2007年(平成19年)度 2,261
2008年(平成20年)度 2,224
2009年(平成21年)度 2,180
2010年(平成22年)度 2,221
2011年(平成23年)度 2,177
2012年(平成24年)度 2,101
2013年(平成25年)度 2,073
2014年(平成26年)度 1,961
2015年(平成27年)度 2,101
2016年(平成28年)度 2,014
2017年(平成29年)度 2,075
2018年(平成30年)度 2,009
2019年(平成31年)度 1,834
2020年(令和2年)度 1,610
2021年(令和3年)度 1,553
2022年(令和4年)度 1,601

脚注

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注釈

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  1. ^ 婚姻前に複数の氏を称していた場合には、自由に選べる訳ではなく、生存配偶者が婚姻の際に称していた氏となる[3]
  2. ^ 3ヶ月を経過してから氏を変更する場合には、戸籍法第107条第1項の規定に基づき家庭裁判所の許可を得なければならない[9]

出典

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  1. ^ 加藤 1981, p. 539.
  2. ^ a b c d 青木 & 大森 1982, p. 406.
  3. ^ 床谷 2017, p. 184.
  4. ^ a b c d 青木 & 大森 1982, p. 407.
  5. ^ a b c 床谷 2017, p. 185.
  6. ^ a b 加藤 1981, p. 540.
  7. ^ 芹澤 2017, pp. 32–33.
  8. ^ 床谷 2017, pp. 185–186.
  9. ^ a b 床谷 2017, p. 186.
  10. ^ a b 床谷 2017, p. 60.
  11. ^ 種類別 届出事件数”. 戸籍統計. 政府統計の総合窓口. 2024年5月4日閲覧。

参考文献

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  • 加藤令造『新版 戸籍法逐条解説』岡垣学補訂(新版・改訂2版)、日本加除出版、1981年4月1日。 
  • 青木義人、大森政輔『全訂 戸籍法』(第2版(全訂版))日本評論社、1982年9月20日。 
  • 芹澤健介「第一章 死後離婚とは何か」『死後離婚』洋泉社〈新書y 306〉、2017年2月17日、13-58頁。ISBN 9784800311528 
  • 床谷文雄 著「第751条(生存配偶者の復氏等)」、二宮周平編 編『新注釈民法(17) 親族(1)』有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、2017年10月20日、183-186頁。ISBN 9784641017528 

関連項目

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外部リンク

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