微分 (曖昧さ回避)
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歴史的な経緯により、微分(びぶん、英: differential, derivative)は、
- dy⁄dx, … など: 函数の各点における瞬間の増加量。微分係数、微分商 (differential quotient) とも呼ぶ。函数として導函数とも呼ぶ。→詳細は「微分」を参照
- dx, dy, dt, … など: 各変数(あるいは各軸方向)への無限小変分。微小変分とも呼ぶ。微分商をこれら微分の間の商と見ることができる。→詳細は「微分小」を参照
- dy = dy⁄dx dx, … など: 函数の局所的な変動、微分小に対する函数の変分あるいは函数の局所的な近似の線型主要部。→詳細は「函数の微分」を参照
など複数の意味で用いられる。またこれら微分を求める操作 (differentiation) もやはり「微分」と呼ぶ。これらを多変数化など様々な意味で一般化したものもまたしばしば同様に「微分」と呼ばれ、またそれら一般化された概念の定式化に従って、上記の歴史的・基本的な微分の概念に対して、その本質的な意味の再定式化・再解釈がしばしば行われる。
- 多変数函数 f = f(x, y, z, …) の全微分 df をしばしば単に微分とも呼ぶ。全微分 df = ∂f⁄∂xdx + ∂f⁄∂ydy + ∂f⁄∂zdz + … を多変数函数 f の局所的な変動の線型主要部と見れば、微分小 dx, dy, dz, … は適当な接空間における (もとの変数軸と平行な) 局所座標系と理解できる。
- 同様の意味で函数行列を微分あるいは微分係数とも呼ぶ。
- 可微分多様体間の可微分写像 f: M → N の微分はそれらの接束の間の写像 df: TM → TN として与えられる。→詳細は「微分写像」を参照
- 微分幾何学あるいは可微分多様体論における微分形式は微分小 (dx, dy, dt, …) を扱うためのひとつの枠組みと理解することもできる。この場合における微分小 dx, … は多様体の余接束の大域切断として定式化することができる。
- 可微分多様体上の写像の微分の概念を微分形式に対して一般化して、外微分の概念が得られる。
- 微分形式の層と外微分から得られるド・ラム複体からのアナロジーで、一般にホモロジー代数における双対鎖複体の双対境界作用素を微分とも呼ぶ。→詳細は「双対鎖複体」を参照
- 微分小を測度と見れば、ある測度の別の測度に関する密度函数すなわち測度による測度の微分係数としてラドン–ニコディム微分の概念が得られる。
- 微分環における微分は環の積に関して積の微分法則(ライプニッツ律)を満たす加法的写像である。→詳細は「導分」を参照
- 微分多項式環における微分は各変数 x に対して交換関係 [x, ∂] = 1 を満たす元を言う。
- 多項式の形式微分は、極限操作を伴わない多項式環における形式的演算である。多項式 p(X) = ∑akXk に対し、その形式微分は dp(X) = ∑kakXk−1 で与えられ、形の上では多項式函数を通常の意味で微分したものと同じである。
- 数の微分は整数環と多項式環のアナロジーにより、素因数分解を介して定義される。→詳細は「算術微分」を参照
- 有限差分は微分の離散版であり、この意味の離散と連続は「時間尺度」として統一される。→詳細は「時間尺度微分積分学」を参照