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情報銀行

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

情報銀行(じょうほうぎんこう)とは、行動履歴や購買履歴といったものを含む個人情報にひも付いたITデータを個人から預託され、他の事業者とのマッチングや匿名化したうえでの情報提供、一元管理する制度、あるいは事業者を指す[1][2]。データを提供したり活用したことに関して得られた便益は、データを受領した他の事業者から直接的または間接的に個人情報を提供した本人に還元される[2]

概要

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GoogleFacebookAmazonといったネットワーク上のサービスには利用者の検索履歴、購入履歴や閲覧したサイトの情報から利用者の関心ごとや消費傾向といったデータをそれぞれの会社に与えることになる[3]。こういった個人情報はモノやサービスの販売を行う企業に莫大な利益を生む可能性がある[3]。事実、インターネット上で行われる広告は、個人の嗜好に合わせることで、20兆円規模に成長した[3]

こういった個人情報にひもづくデータを特定の企業が独占することに欧州連合(EU)で異が唱えられ、「消費者の個人情報を消費者の手に取り戻す」と消費者本人に自身の情報をコントロールする権利があることを定められた。2018年からは、これを侵した企業に制裁金が科せられる[3]。この考え方を推し進め、個人が現金を銀行に預託するように、情報を預託し「運用」することを想定した制度、あるいは事業者を情報銀行と呼ぶ。

現状でも、メンバーズカードを発行する販売店などでは、顧客の購買履歴を全て把握することが可能であるが、その顧客が別系列の販売店で購入した履歴や自分の販売店で購入しない理由は把握できない[3]。これらを包括的に取り扱う情報は、これまでにない販売戦略を立てるのに役立つ価値を持つ[3]

展開

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日本

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個人情報保護法平成27年度改正されたことによって、情報銀行の制度が法的に実現可能となった[2]

日本においては、2016年6月2日に閣議決定された『日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて-』において、ある事業者が収集し管理している個人情報(行動履歴や購入履歴)を、別の事業者でも活用できるようにしようと提言されたことに端を発する[1]。同年9月16日に立ち上げられた「データ流通環境整備検討会」において、議論のテーマの1つとして情報銀行が採択されている[1]

データ流通環境整備検討会は、以下の分野での利活用が期待されるとしている[4]

信濃毎日新聞社説では、「日本政府はメリットを強調するが、政府による恣意的な運用などを疑問視する」と報じている[5]

2017年には富士通イオンフィナンシャルサービスオリコムなどによる情報銀行の実証実験が行われた[6]

2018年7月に総務省おもてなしICT協議会日立製作所JTB中部電力三井住友銀行ユーシーテクノロジを中心とする6グループに情報銀行の実証実験を委託した[7][8]。これを受け、同年9月には、日立製作所、日本郵便東京海上日動火災保険などによる実証実験の開始が発表された[9]。実験では運動量や睡眠時間などの生体データ、家電の使用状況などを収集する [10]

日本IT団体連盟は情報銀行に参入する企業の審査・認定を行う事業を開始することを発表している[11]

2021年7月、三菱UFJ信託銀行が情報銀行サービス「Dprime」のメディア発表会を開催。ブランドアンバサダーに元サッ カー日本代表で実業家である中田英寿氏就任が就任する[12]

EU

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欧州連合 (EU)では2018年よりEU一般データ保護規則が施行され、データが個人のものであることを明確化するとともに、個人データを扱う管理者に義務と、違反した場合の罰則を課している[13]

出典

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  1. ^ a b c 加藤慶信 (2017年2月24日). “政府が本腰、「情報銀行」って何だ”. 日経情報ストラテジー. 2017年11月24日閲覧。
  2. ^ a b c 吉澤亨史,山田竜司 (2017年4月12日). “改正個人情報保護法が可視化した「情報銀行」の意義”. ZDNET Japan. 2017年11月27日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 福山絵里子 (2017年5月23日). “官民に「情報銀行」構想 個人データを預かり「運用」”. NIKKEI STYLE. 2017年11月24日閲覧。
  4. ^ 大下淳一 (2017年3月27日). “情報銀行とは”. 日経デジタルヘルス. 2017年11月27日閲覧。
  5. ^ 社説 (2017年11月14日). “マイナンバー 懸念残して「連携」開始”. 信濃毎日新聞. http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171114/KT171113ETI090005000.php 2017年11月24日閲覧。 
  6. ^ 富士通とイオン、パーソナルデータを活用した情報銀行の実証実験”. ZDNET Japan (2017年7月19日). 2017年11月27日閲覧。
  7. ^ “「情報銀行」実証、日立や三井住友銀など 総務省委託”. 日本経済新聞. (2018年7月18日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3310223018072018EE8000/ 2018年9月13日閲覧。 
  8. ^ 平成30年度予算 情報信託機能活用促進事業に係る委託先候補の決定』(プレスリリース)総務省、2018年7月18日https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin01_02000258.html2018年9月13日閲覧 
  9. ^ “日立や日本郵便が「情報銀行」の実証実験”. 沖縄タイムス. (2018年9月10日). http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/312229 2018年9月13日閲覧。 
  10. ^ 個人情報を企業に提供 「情報銀行」の大規模実験始まる - NHK
  11. ^ 玄忠雄 (2018年9月12日). “ヤフーなど参加のIT団体連盟、「情報銀行」の認定事業を今秋に開始へ”. 日経 xTECH. 2018年9月13日閲覧。
  12. ^ 情報銀行サービス「Dprime」ブランドアンバサダー・中田英寿氏の就任について”. 三菱UFJ信託銀行 (2021年7月1日). 2023年4月26日閲覧。
  13. ^ 尾本憲由 (2017年10月24日). “フィンテック時代に個人情報はどう扱われる?”. 日刊工業新聞. 2017年11月27日閲覧。

資料

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関連項目

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外部リンク

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