愛の寓意
イタリア語: Allegoria del trionfo di Venere 英語: Venus, Cupid, Folly and Time | |
作者 | アーニョロ・ブロンズィーノ |
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製作年 | 1540年 - 1545年頃 |
種類 | 油彩、板 |
寸法 | 146.1 cm × 116.2 cm (57.5 in × 45.7 in) |
所蔵 | ナショナル・ギャラリー、ロンドン |
『愛の寓意』[1](あいのぐうい、伊: Allegoria del trionfo di Venere)は、イタリアの画家アーニョロ・ブロンズィーノにより1540年から1545年頃に描かれた絵画である[2]。
『愛のアレゴリー』[3][4]『時と愛の寓意』[5]とも。ロンドンにあるナショナル・ギャラリーに収蔵されている[1]。本作は、イタリアのメディチ家からフランス王フランソワ1世に贈られた[6]。
作品
[編集]左手に黄金のリンゴ、右手に矢をもつ女性が画面中央に描かれている。彼女と口づけを交わしている少年は、左手で女性の頭を支え、女性の乳首を右手の指で挟んでいる[7][8]。
少年は、背に緑、白、青の3色の小ぶりな翼を生やしており、左足を赤いクッションの上に載せている。背中には矢筒をさげるベルトが見えており、矢筒は左足のそばにある。右足の近くには、白い鳩のつがいがいる。少年の背後の暗がりには、口を大きく開けて頭を両手で掻きむしる老婆が描かれている。その上には、口を開けて青いカーテンをもつ女性の横顔が描かれている。彼女の視線の先では、筋肉を隆々とさせた、禿頭に白髭の老人がカーテンをつかんでいる。この老人は、白と黒の大きな翼を生やしており、右肩には砂時計を載せている[9]。
その下では、足首に飾りをつけた裸の男児が、口づけを交わす女性と少年にバラの花を振り撒こうとしている。男児の足もとには、赤みがかった老人の仮面と、白っぽい若者の仮面が置かれている。男児の背後から、緑色のドレスを身につけた少女が顔をのぞかせているが、左手にはミツバチの巣、右手にはサソリが握られており、ドレスの下には爬虫類のうろこのようなものが見え、足は鉤爪をもつライオンのそれのようである[10]。
解釈
[編集]画面中央の女性がヴィーナスであることは、男児がバラの花を振り撒こうとしていることからわかる。ヴィーナスと口づけを交わしている少年は、羽と矢筒という目印から、キューピッドであるとわかる[11]。ヴィーナスとキューピッドは愛の擬人像である。鳩も愛を表している[12]。
キューピッドの背後で頭を掻きむしっている老婆は、嫉妬の擬人像である。画面右上の筋肉隆々の男性は、老いていることと右肩に砂時計を載せていることから、時の擬人像となる。この時の翁の視線の先にいる横顔の女性は、真実もしくは忘却の擬人像とされる。画面右下の仮面は、カーニバルに使われることから、愛欲のシンボルとされる。男児は、快楽の擬人像である[3][11][13]。ミツバチやサソリをもつ少女は、欺瞞の擬人像である[14]。
脚注
[編集]- ^ a b 『怖い絵』 2007, p. 56.
- ^ “第十講 ロンドン、大英博物館、ナショナル・ギャラリー”. 山口大学. 2018年12月31日閲覧。
- ^ a b 勝俣涼. “アレゴリー”. 美術手帖. 2018年12月31日閲覧。
- ^ 荒屋鋪透. “ひる・ういんど 第21号 サトゥルヌスの変容 「公開美術講座」研究ノート”. 三重県立美術館. 2018年12月31日閲覧。
- ^ “フランドル (1) ルーベンス 《戦争の惨禍の寓意》を中心に”. 社団法人如水会 (2007年2月20日). 2018年12月31日閲覧。
- ^ 『怖い絵』 2007, p. 58.
- ^ 『怖い絵』 2007, p. 59.
- ^ 篠塚二三男 (2014年3月). “【研究ノート】ブロンズィーノの《愛のアレゴリー》 : 黄金比とエロス”. 跡見学園女子大学. 2018年12月31日閲覧。
- ^ 『怖い絵』 2007, p. 60.
- ^ 『怖い絵』 2007, p. 61.
- ^ a b 『名画の常識』 2012, p. 160.
- ^ 『怖い絵』 2007, p. 62.
- ^ otsukamuseumのツイート(873461898112520192)
- ^ 『名画の常識』 2012, p. 162.
参考文献
[編集]- 中野京子『怖い絵』朝日出版社、2007年。ISBN 978-4-255-00399-3。
- 中村麗『これだけは知っておきたい「名画の常識」』小学館〈小学館101ビジュアル新書 Art〉、2012年。ISBN 978-4-09-823019-8。