擬絶対値
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数学における擬絶対値(ぎぜったいち、英: pseudo-absolute value, 独: Pseudobetrag)は、絶対値よりも条件の緩い類似の概念である。
定義
[編集]R を単位的環とする。非負実数値函数 |•|: R → R+ が擬絶対値であるとは、以下の三条件をすべて満たすときにいう: a, b ∈ R を任意として
- 定値性:
- 劣乗法性:
条件 3 の代わりにより強く
- 3a. 乗法性:
を満たすものは絶対値と言う。
擬絶対値 |•| が非アルキメデス的とは
を満たすときに言う。
性質
[編集]- 擬絶対値は各元 a ∈ R に対して必ず |−a| = |a| を満たす。また、各元 a, b ∈ R に対して三角不等式 |a + b| ≤ |a| + |b| を満たす。
- 擬絶対値に関して必ず |1| ≥ 1 が成り立ち、特に絶対値に関して |1| = 1 が成り立つ。
- 絶対値を持つ任意の単位的環は整域でなければならない(乗法性により、実数の零積性質がその環に遺伝する)。
例
[編集]以下 (R, |•|) は擬絶対値持つ単位的環とする。
多項式環の擬絶対値
[編集]多項式環 R[X] または多変数の R[X1, …, Xn] はそれ自体(多項式の積に関して)単位的環を成す。ここでたとえば、1-擬ノルムは多項式環上の擬絶対値を与える。
行列環の擬絶対値
[編集]同様に行列環 Rn×n も(行列の積に関して)単位的環を成し、ここでも 1 ≤ p ≤ 2 なる各実数 p に対する p-擬ノルムが行列環上の擬絶対値を与える。