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政府備蓄米

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

政府備蓄米(せいふびちくまい)とは、凶作や不作時の流通安定のために日本国政府が食料備蓄として保存しているである。1995年(平成7年)に「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」が施行され制度が発足した[1]。例年有意に潤沢な備蓄がみられる産地は北海道東北地方新潟県など日本のコメ生産量上位地域となる[2][3]。2019年産から「都道府県別優先枠」が設定され、産地の競合をせずに「一般枠」よりも良い価格で入札できる[4][5]

経緯

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1993年(平成5年)、日本は米の作況指数74という戦後最大の記録的な数値の生育不良にみまわれた。それまで日本政府は戦時中定められた食糧管理法に基づいて全ての米を政府米として管理していたが、この法には備蓄という概念はなく、不作時に備えて一定量の持ち越し在庫を保持するという方式がとられていた。しかしこの1993年はこの前々年である1991年の作況指数95という不作の影響からもともと持ち越し米は在庫23万トンという不足状況にあり、そこにさらなるこの大凶作が発生したため在庫が完全に尽き、日本国内全体が深刻な米不足に陥ったいわゆる「平成の米騒動」が発生するに至った。

政府はアメリカオーストラリア中国タイから合計259万トンに上るコメの緊急輸入を行う対応をとり、翌年には収量の増加・回復などもありこの騒動は落ち着くが、米の国際市場が大きく乱れる悪影響を及ぼしたため日本はウルグアイ・ラウンド農業合意での米の輸入受け入れ要求を呑まざるをえない立場となった。 また国民の主食の安定供給と凶作への備えという大きな政治的課題も顕在化したため、政府は需要と価格を安定させるための新たなシステムを構築するための議論を行い、1995年(平成7年)に食糧管理法を廃止し「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」が施行され、米の備蓄制度が発足した。

概要

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政府備蓄米は適正備蓄水準を100万トン程度として運用されている(当初の備蓄水準は150万トンであったがその後200万トンを超えるようになり、財政負担の問題などから100万トンに削減されるに至った)。毎年20万トン超を購入することで5年間で合計約100万トンになり古いものから入れ替わってく方式である。この100万トンとは日本の米の総需要量838万トン(平成29年度)の約8分の1にあたり、「10年に1度の不作(作況指数92程度)」または「通常程度の不作(作況指数94程度)」が2年連続した場合に対処できる[6]水準である。保管期間の5年を過ぎた備蓄米は飼料用として売却されるほか、一部は学校給食用などとして提供されるが米価への影響を避けるために基本的には主食用としての販売はなされない。

政府備蓄米はJAなどの政府寄託倉庫にて低温保管され、大凶作や不作の連続などにより米の民間在庫が著しく低下するなどの米不足が発生した際に放出される。食料・農業・農村政策審議会食糧部会において作柄、在庫量、市場の状況、消費動向、価格及び物価動向等について放出の必要性についての議論を行いこの結果を踏まえて、農林水産大臣が備蓄米の放出等を決定する。

農林水産省は2020年3月の会見で米は政府備蓄米が約100万トン、JAや卸売業者等が保有する民間在庫が約280万トンあり、これを合わせて需要量の6.2カ月分、約190日分になるとしている。また同じく主食であり輸入食品である小麦については、安定供給を図る観点から、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの輸出国から国が一元的に輸入しており、外国産小麦の国内備蓄が約93万トンあり、これは需要量の2.3カ月分、約70日分になるとしている[7](小麦は国の備蓄が2010年に廃止され民間備蓄になっている)。 ただし前述のとおり政府備蓄米はあくまで凶作や不作の際の安定した流通への備えであり国家の食料安全保障を主目的としているものではない(2010年の日本の食糧自給率における米の割合は24%ほどである)。また大規模な災害においても備蓄米は放出される事があるが、これは非常食とは性質が異なるものであり災害時の緊急の食料については各自治体や各家庭での備蓄を推奨している。

脚注

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関連項目

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