教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律
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(教育職員性暴力等防止法から転送)
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教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | わいせつ教員対策法 |
法令番号 | 令和3年法律第57号 |
種類 | 教育法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 2021年5月28日 |
公布 | 2021年6月4日 |
施行 | 2022年4月1日 |
所管 | 文部科学省[総合教育政策局] |
主な内容 | 教育職員等による児童生徒性暴力等の防止について |
関連法令 | 児童福祉法、教育職員免許法 |
条文リンク | 教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律 - e-Gov法令検索 |
ウィキソース原文 |
教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(きょうしょくいんとうによるじどうせいとせいぼうりょくとうのぼうしとうにかんするほうりつ)は、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止を目的として制定された法律。法令番号は令和3年法律第57号、2021年令和3年6月4日に公布された。一般的に教育職員性暴力等防止法(きょういくしょくいんせいぼうりょくとうぼうしほう)・わいせつ教員対策新法(わいせつきょういんたいさくしんぽう)[1]。と呼ばれている。2022年(令和4年)4月1日施行[2]。
主務官庁
[編集]経緯
[編集]- 2021年(令和3年):5月28日、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和3年法律第57号)制定。6月4日公布。この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律の施行期日を定める政令により令和4年4月1日施行が決定した[4]。
本法律の特徴として、教員による一方的な行為だけでなく、合意のもとでの関係も性暴力に含まれると位置付けたのが大きな成果と言える。立法の背景には「合意による恋愛」という主張が、教員による性暴力の〝隠れみの〟になってきたという問題意識がある。『教員と生徒との恋愛はあり得る』という意見もあったが、最終的には、教育現場での性暴力の増加を無視できず、性暴力は絶対に許さないという強い意志を法律で示すことが重要だとして成立した。
構成
[編集]- 第一章 総則
- 第二章 基本指針
- 第三章 教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する措置
- 第四章 教育職員等による児童生徒性暴力等の早期発見及び児童生徒性暴力等への対処に関する措置等
- 第五章 特定免許状失効者等に対する教育職員免許法の特例等
- 第六章 雑則
概要
[編集]- 「学校」「児童生徒等」「児童生徒性暴力等」の定義
- 同法第2条において、学校に在籍する幼児、児童又は生徒または18歳に満たないものを児童生徒とし、教育職員等が行う以下の行為を「児童生徒性暴力等」と定義している。
- 第二条 この法律において、「児童生徒性暴力等」とは、次に掲げる行為をいう。
- 児童生徒等に性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条に規定する性交等をいう。以下この号において同じ。)をすること又は児童生徒等をして性交等をさせること(児童生徒等から暴行又は脅迫を受けて当該児童生徒等に性交等をした場合及び児童生徒等の心身に有害な影響を与えるおそれがないと認められる特別の事情がある場合を除く。)。
- 児童生徒等にわいせつな行為をすること又は児童生徒等をしてわいせつな行為をさせること(前号に掲げるものを除く。)。
- 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号。次号において「児童ポルノ法」という。)第五条から第八条までの罪に当たる行為をすること(前二号に掲げるものを除く。)。
- 児童生徒等に次に掲げる行為(児童生徒等の心身に有害な影響を与えるものに限る。)であって児童生徒等を著しく羞恥させ、若しくは児童生徒等に不安を覚えさせるようなものをすること又は児童生徒等をしてそのような行為をさせること(前三号に掲げるものを除く。)。
- イ 通常衣服で隠されている人の下着又は身体を撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
- ロ 児童生徒等に対し、性的羞恥心を害する言動であって、児童生徒等の心身に有害な影響を与えるものをすること(前各号に掲げるものを除く。)。[5]
- 児童生徒性暴力等の禁止
- 同法第3条において、教育職員等は、児童生徒性暴力等をしてはならないとしている。
- 基本理念
- 同法第4条において、同法は教育職員等による児童生徒性暴力等が懲戒免職の事由(解雇の事由として懲戒免職の事由に相当するものを含む。)となり得る行為であるのみならず、児童生徒等及びその保護者からの教育職員等に対する信頼を著しく低下させ、学校教育の信用を傷つけるものであることに鑑み、児童生徒性暴力等をした教育職員等に対する懲戒処分等について、適正かつ厳格な実施の徹底を図るための措置がとられることを旨として行われなければならないとしている。
- 任命権者等の責務
- 同法第7条において、教育職員等を任命し、又は雇用する者は、基本理念にのっとり、教育職員等を任命し、又は雇用しようとするときは、第十五条第一項のデータベースを活用するものとしている。また、公立学校の任命権者は、児童生徒性暴力等をした教育職員等に対する適正かつ厳格な懲戒処分の実施の徹底を図るものとする。かつ、公立学校以外の学校の教育職員等を雇用する者は、児童生徒性暴力等をした教育職員等に対し、懲戒の実施その他の児童生徒性暴力等の再発の防止のために必要な措置を講ずるものとするとしている。
- 教育職員等に対する啓発等
- 同法第13条において、国及び地方公共団体は、教育職員等に対し、児童生徒等の人権、特性等に関する理解及び児童生徒性暴力等の防止等に関する理解を深めるための研修及び啓発を行うものとしている。国及び地方公共団体は、教育職員の養成課程における児童生徒性暴力等の防止等に関する教育の充実その他必要な措置を講ずるものとし、教育職員の養成課程を有する大学は、当該教育職員の養成課程を履修する学生が児童生徒性暴力等の防止等に関する理解を深めるための措置その他必要な措置を講ずるものとしている。
- データベースの整備等
- 同法第15条において国は、特定免許状失効者等の氏名及び特定免許状失効者等に係る免許状の失効又は取上げの事由、その免許状の失効又は取上げの原因となった事実等に関する情報に係るデータベースの整備その他の特定免許状失効者等に関する正確な情報を把握するために必要な措置を講ずるものとし、都道府県の教育委員会は、当該都道府県において教育職員の免許状を有する者が特定免許状失効者等となったときは、前項の情報を同項のデータベースに迅速に記録することその他必要な措置を講ずるものとしている。
- 特定免許状失効者等に対する教育職員免許法の特例
- 同法第22条において、特定免許状失効者等(教育職員免許法第五条第一項各号のいずれかに該当する者を除く。)については、その免許状の失効又は取上げの原因となった児童生徒性暴力等の内容等を踏まえ、当該特定免許状失効者等の改善更生の状況その他その後の事情により再び免許状を授与するのが適当であると認められる場合に限り、再び免許状を授与することができるとしている。また、都道府県の教育委員会は、前項の規定により再び免許状を授与するに当たっては、あらかじめ、都道府県教育職員免許状再授与審査会の意見を聴かなければならない。都道府県の教育委員会は、特定免許状失効者等から失効した免許状の返納を受けることとなった都道府県の教育委員会その他の関係機関に対し、当該特定免許状失効者等に係る免許状の失効又は取上げの原因となった児童生徒性暴力等の内容等を調査するために必要な情報の提供を求めることができるとしている。
- 都道府県教育職員免許状再授与審査会
- 同法第23条において、第22条に規定する意見を述べる事務をつかさどらせるため、都道府県の教育委員会に、都道府県教育職員免許状再授与審査会を置くものとしている。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所ホームページ
- ^ “令和4年1月19日(号外 第13号)インターネット版官報”. https://kanpou.npb.go.jp/. 国立印刷局. 2022年2月19日閲覧。
- ^ 児童生徒等に対し性暴力等を行った教員への厳正な対応について - 文部科学省Webサイト。
- ^ “令和4年1月19日(号外 第13号)インターネット版官報”. https://kanpou.npb.go.jp/. 国立印刷局. 2022年2月19日閲覧。
- ^ “議案情報第204回国会(常会)”. https://www.sangiin.go.jp. 参議院. 2022年1月11日閲覧。