出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
斜交座標系(しゃこうざひょうけい、oblique coordinate system)とは、斜めに交わった数直線を軸とする座標系である。直交座標系の拡張としてとらえられる。
2本の数直線 x, y が共通の原点をもち、なす角 θ(ただし 0° < θ < 180°)で交わっているとき、その座標系はx軸、y軸からなる斜交座標となる。
座標平面上の全ての点Pは、その点からx軸、y軸に関して平行線をひくことにより、P(a, b) と一意に表すことができる。
逆に座標 (a, b) が与えられれば、Pの位置は一意に決定される。
なお、2本の軸のなす角 θ = 90° のときとして、斜交座標系は直交座標系を含む。
x軸、y軸からなる斜交座標系と共通の原点を持つx′軸、y′軸からなる直交座標系について、x軸、y軸がx′軸となす角をそれぞれ θ, ϕ とする。
斜交座標系で P(a, b) と表されている点を直交座標 (a′, b′) に座標変換する公式は以下である:
直交座標系はこの表記では θ =0, ϕ =90° の場合である.
直交座標系の場合は、2つのベクトル の内積はその座標成分の積の和で表されるが、斜交座標系の場合は以下のようになる:
(1)
あるいは次のようにも表現できる[1][注 1]:
このとき、添字が上についている量(u1 など)を反変成分、下についている量(v1 など)を共変成分という。各座標軸の方向を向く単位ベクトル(共変基底ベクトル)を とすれば、反変成分を用いて
と書くことができる。また、反変基底ベクトルとして
- :y軸(または)に垂直で長さが 1/sin(ϕ − θ) のベクトル
- :x軸(または)に垂直で長さが 1/sin(ϕ − θ) のベクトル
とすれば[注 2]、共変成分を用いて
と書くことができる。
上記の議論は を入れ替えても同様に成り立つ。
式(1)の右辺に表れた行列
は計量テンソルとよばれ、共変・反変基底ベクトルで一般的に表される。
斜交座標系では計量テンソル g は
となる。また反変成分と共変成分の変換は
とシンプルに表すことができる.
以上で2次元の場合を説明したが、斜交座標系はより一般の次元においても同様に考えられる。
- ^ ui, vi などにはアインシュタインの縮約記法が適用され、総和記号が省略されていることに注意。
- ^ これらのベクトルの間には、クロネッカーのデルタを用いて、 の関係が成り立つ。
- ^ W. フリューゲ 著、後藤学 訳『テンソル解析と連続体力学』ブレイン図書出版、1979年、3-6頁。