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新開発銀行

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
新開発銀行
New Development Bank
新開発銀行の加盟国
略称 NDB、NDB BRICS
設立 2014年7月15日
種類 国際開発金融機関
法的地位 条約
本部 中国上海
会員数
10か国
公用語 英語
総裁 ジルマ・ルセフ
加盟 BRICS
ウェブサイト www.ndb.int
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新開発銀行の本部を置く上海の東方匯経中心

新開発銀行(しんかいはつぎんこう、: New Development Bank, NDB)は、BRICSの5か国(ブラジルロシアインド中国南アフリカ)によって設立された国際開発金融機関であり、世界銀行国際通貨基金の代替を目指すものである。本部は中国の上海BRICS開発銀行とも呼ばれる[1][2]

中国が主導し設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)とは、ホットラインを開設するなど共存を図る[3]

歴史

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新開発銀行の設立は、2013年3月27日に南アフリカのダーバンで開かれた第5回BRICS首脳会議英語版において、BRICSの首脳たちにより合意された[4]。名称はインド首相ナレンドラ・モディの考案とされる[5]

ブラジルのフォルタレザで開かれた第6回BRICS首脳会議英語版の初日にあたる2014年7月15日、1,000億ドルの資本金を持つ新開発銀行の設立と、同じく1,000億ドルにのぼる外貨準備基金の設立を記した、長らく待ち望まれた文書にBRICSの首脳らは署名した[6]。この2つの枠組みは、欧米主導の融資制度とドル通貨の影響力に対抗するものである。BRICS間の輸出信用機関の協力を記した文書、およびイノベーションにおける協力に関する合意についても、署名が行なわれた[7]

本部は上海に設置され、最初の総裁はインドから[8]、最初の取締役会長はブラジルから[9]、最初の理事会会長はロシアから[9]選ばれることになっており、初代総裁はインドのICICI銀行インフォシスで会長だったK・V・カマート英語版が就任した。

2016年7月12日に人民元建て債券で初の起債を行って環境事業に融資する「グリーンボンド」を発表し[10]中国工商銀行など中国の国営銀行やHSBCなど外資系[11]、邦銀では三菱東京UFJ銀行が引受することになった[12]

2023年3月24日、新開発銀行の総裁に初の女性総裁として、元ブラジル大統領ジルマ・ルセフが就任した[13]

加盟国

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新開発銀行の加盟国
# 国名 加盟年 BRICS加盟国
1 ブラジルの旗 ブラジル 2015年 Yes
2 ロシアの旗 ロシア 2015年 Yes
3 インドの旗 インド 2015年 Yes
4 中華人民共和国の旗 中国 2015年 Yes
5 南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国 2015年 Yes
6 バングラデシュの旗 バングラデシュ 2021年 No
7 アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦 2021年 Yes
8 ウルグアイの旗 ウルグアイ 2021年 No
9  エジプト 2021年 Yes
10 アルジェリアの旗 アルジェリア 2024年 No

組織と目標

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開発資本

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この銀行の融資で第一に重視されるのがインフラ計画への融資であり[14][15]、認可された融資額の上限は1年あたり340億ドルとする[15]。南アフリカは「新開発銀行アフリカ地域センター」という名称で、新開発銀行のアフリカ本部になっている[16]。この銀行は500億ドルの資本金で開始し、将来は1,000億ドルまで増資する[17]

最初の500億ドルは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの各国が100億ドルずつ拠出して集める[18][19]。いずれの国も他の4か国すべての同意なくして資本金の割合を増やすことはできず、この制約はインドが最も強く要求したものである[20][21]。この銀行は他国の新規加入を認めるが、BRICSの5か国の出資比率が55%を下回ることはない[22]

緊急時外貨準備金基金

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この準備金の目的は、国際金融市場の流動性圧力に対する備えを提供することにある[23][24][25]。これは、参加国の自国通貨が国際的な金融逼迫の悪影響を受けている場合の通貨問題に関わるものである[26][27][28]。その役割から「小規模版IMF」と呼ばれている[29]。この銀行は、アメリカがその拡張主義的通貨政策を止めた結果として経済的ボラティリティをこうむるであろう他の国々に対し、援助を提供することにもなる[30]

この基金は払込資本による100億ドルを含み、さらに要請によって支払われる追加の400億ドルが加わる[31]。初期の計1,000億ドルの資本金のうち、中国が410億ドル、ブラジル、ロシア、インドがそれぞれ180億ドル、南アフリカが50億ドルを提供する[32]。他国の新規参加も認めるが、BRICSの5か国の出資比率が55%を下回ることはない[33]。法的根拠は、2014年7月15日に署名された「BRICSコンティンジェント・リザーブ・アレンジメントの設立に関する条約」によって形成されている。

メンバーシップの拡大

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2021年9月、バングラデシュアラブ首長国連邦ウルグアイの3か国が加盟した[34]。同年12月にはエジプトも加盟した[35]。2023年7月、アルジェリアアブデルマジド・テブン大統領は、新たな経済機会を得るためにBRICSへの加盟を正式に申請したと語り、さらに新開発銀行に15億ドルを出資して株主になることも要請した[36]。2024年9月、アルジェリアは正式に新開発銀行へ加盟した[37]

歴代総裁の一覧

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歴代の新開発銀行総裁
氏名 期間 国籍
1 K・V・カマート英語版 2015年-2020年 インドの旗 インド
2 マルコス・トロイホ英語版 2020年-2023年 ブラジルの旗 ブラジル
3 ジルマ・ルセフ 2023年- ブラジルの旗 ブラジル

脚注

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  1. ^ BRICS銀行の創設がもつ意味:IMF/世銀はなぜ嫌われるか(その2)”. Yahoo!ニュース (2014年8月9日). 2024年6月20日閲覧。
  2. ^ BRICS新開発銀、24年は50億ドルの融資目標=副総裁”. ロイター (2024年3月26日). 2024年6月20日閲覧。
  3. ^ BRICSの新開発銀行が開業式典-AIIBと協力へ”. Bloomberg (2015年7月21日). 2024年6月20日閲覧。
  4. ^ Powell, Anita (2013年3月27日). “BRICS Leaders Optimistic About New Development Bank”. Voice of America. 2014年7月21日閲覧。
  5. ^ Modi budget hikes Indian aid, mum on regional bank”. www.devex.com. 30 May 2016閲覧。
  6. ^ "Brics nations to create $100bn development bank"” (英語). BBC (2014年7月15日). 2014年7月21日閲覧。
  7. ^ BRICS establish $100bn bank and currency reserves to cut out Western dominance”. RT.com (2014年7月15日). 2014年7月21日閲覧。
  8. ^ BRICS Development Bank launched, first president to be from India” (英語). The Times of India (2014年7月16日). 2014年7月21日閲覧。
  9. ^ a b Jeffrey T. Lewis and Paulo Trevisani (2014年7月15日). “Brics Agree to Base Development Bank in Shanghai Bank to Finance Infrastructure Projects in Emerging-Market Countries”. 2014年7月21日閲覧。
  10. ^ 「BRICS銀」が初の起債 400億円、環境事業に融資”. 産経新聞 (2016年7月12日). 2016年7月14日閲覧。
  11. ^ BRICS銀が初起債 人民元建て、三菱UFJ銀も引き受け”. RIEF (2016年7月19日). 2016年7月14日閲覧。
  12. ^ BRICS銀が初起債 人民元建て、三菱UFJ銀も引き受け”. 日本経済新聞 (2016年7月30日). 2016年7月14日閲覧。
  13. ^ BRICS銀行、総裁にルセフ氏 元ブラジル大統領”. 日本経済新聞 (2023年3月25日). 2024年6月20日閲覧。
  14. ^ “What the new bank of BRICS is all about”. The Washington Post. (2014年7月17日). http://www.washingtonpost.com/blogs/monkey-cage/wp/2014/07/17/what-the-new-bank-of-brics-is-all-about/ 2014年7月21日閲覧。 
  15. ^ a b “New BRICS Bank a Building Block of Alternative World Order”. The Huffington Post. (2014年7月18日). https://www.huffpost.com/entry/new-brics-bank_b_5600027 2014年7月21日閲覧。 
  16. ^ “BRICS countries launch $100 billion developmental bank, currency pool”. Russia & India Report. (2014年7月16日). http://in.rbth.com/world/2014/07/16/brics_countries_launch_100_billion_developmental_bank_currency_pool_36733.html 2014年7月20日閲覧。 
  17. ^ “BRICS Bank ready for launch - Russian Finance Minister”. Russia & India Report. (2014年7月10日). http://in.rbth.com/economics/2014/07/10/brics_bank_ready_for_launch_-_russian_finance_minister_36599.html 2014年7月20日閲覧。 
  18. ^ “BRICS Bank ready for launch - Russian Finance Minister”. Russia & India Report. (2014年7月10日). http://in.rbth.com/economics/2014/07/10/brics_bank_ready_for_launch_-_russian_finance_minister_36599.html 2014年7月20日閲覧。 
  19. ^ “BRICS countries launch $100 billion developmental bank, currency pool”. Russia & India Report. (2014年7月16日). http://in.rbth.com/world/2014/07/16/brics_countries_launch_100_billion_developmental_bank_currency_pool_36733.html 2014年7月20日閲覧。 
  20. ^ “Indian media: Brics bank 'a step in right direction'”. BBC. (2014年7月16日). http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-india-28322815 2014年7月20日閲覧。 
  21. ^ “Victory for Modi, India as BRICS summit clears setting up of a new development bank”. India Today. (2014年7月16日). http://indiatoday.intoday.in/story/modi-victory-brics-summit-clears-a-new-development-bank/1/372582.html 2014年7月20日閲覧。 
  22. ^ “BRICS Bank ready for launch - Russian Finance Minister”. Russia & India Report. (2014年7月10日). http://in.rbth.com/economics/2014/07/10/brics_bank_ready_for_launch_-_russian_finance_minister_36599.html 2014年7月20日閲覧。 
  23. ^ “What the new bank of BRICS is all about”. The Washington Post. (2014年7月17日). http://www.washingtonpost.com/blogs/monkey-cage/wp/2014/07/17/what-the-new-bank-of-brics-is-all-about/ 2014年7月20日閲覧。 
  24. ^ “RICS currency fund to protect members from volatility - Russia’s top banker”. Russia & India Report. (2014年7月17日). http://in.rbth.com/world/2014/07/17/brics_currency_fund_to_protect_members_from_volatility_-_russias_top_ba_36767.html 2014年7月20日閲覧。 
  25. ^ “BRICS Bank ready for launch - Russian Finance Minister”. Russia & India Report. (2014年7月10日). http://in.rbth.com/economics/2014/07/10/brics_bank_ready_for_launch_-_russian_finance_minister_36599.html 2014年7月20日閲覧。 
  26. ^ “What the new bank of BRICS is all about”. The Washington Post. (2014年7月17日). http://www.washingtonpost.com/blogs/monkey-cage/wp/2014/07/17/what-the-new-bank-of-brics-is-all-about/ 2014年7月20日閲覧。 
  27. ^ “RICS currency fund to protect members from volatility - Russia’s top banker”. Russia & India Report. (2014年7月17日). http://in.rbth.com/world/2014/07/17/brics_currency_fund_to_protect_members_from_volatility_-_russias_top_ba_36767.html 2014年7月20日閲覧。 
  28. ^ “BRICS Bank ready for launch - Russian Finance Minister”. Russia & India Report. (2014年7月10日). http://in.rbth.com/economics/2014/07/10/brics_bank_ready_for_launch_-_russian_finance_minister_36599.html 2014年7月20日閲覧。 
  29. ^ BRICS、開発銀行と「小規模版IMF」の創設で合意AFP 2014年7月16日
  30. ^ BRICS bank to benefit developing countries: Brazilian president”. IANS. news.biharprabha.com. 2014年7月15日閲覧。
  31. ^ “BRICS bank to be headquartered in Shanghai”. ITAR-TASS. (2014年7月10日). http://en.itar-tass.com/economy/739845 2014年7月11日閲覧。 
  32. ^ BRICS Development bank top on Agenda of 6th BRICS Summit”. IANS. news.biharprabha.com. 2014年7月15日閲覧。
  33. ^ “BRICS Bank ready for launch - Russian Finance Minister”. Russia & India Report. (2014年7月10日). http://in.rbth.com/economics/2014/07/10/brics_bank_ready_for_launch_-_russian_finance_minister_36599.html 2014年7月20日閲覧。 
  34. ^ BRICS新開発銀行、新たに3カ国が加盟へ”. AFPBB News (2021年9月6日). 2023年4月13日閲覧。
  35. ^ Roundup: Egyptian officials hail BRICS New Development Bank's decision to add Egypt as new member”. 新華社 (2021年12月29日). 2023年4月13日閲覧。
  36. ^ アルジェリア、BRICS加盟を正式申請 新開発銀行への出資も”. ロイター (2023年7月22日). 2024年5月16日閲覧。
  37. ^ BRICS New Development Bank authorizes Algeria to join”. Reuters (2024年9月1日). 2024年9月1日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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