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族長の秋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
族長の秋
El otoño del patriarca
著者 ガブリエル・ガルシア=マルケス
発行日 1975年
ジャンル 小説
 コロンビア
言語 スペイン語
ウィキポータル 文学
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族長の秋』(ぞくちょうのあき、スペイン語: El otoño del patriarca)は、ガブリエル・ガルシア=マルケスの長編小説。スペイン語初版は1975年に出版された。日本語版は鼓直の訳によるものが、1983年に集英社の叢書〈ラテンアメリカの文学〉の1巻として刊行され、以降集英社文庫(1994年、改版:2011年)、新潮社(2007年)からガルシア=マルケス全小説刊行されている。新潮文庫から2025年2月28日(金)に刊行することが発表された。

概要と特徴

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世界的ベストセラー『百年の孤独』に続くガルシア=マルケス長編第二作。『百年の孤独』刊行から8年後の1975年に発表された作品。ラテンアメリカ文学でしばしば執筆される、独裁者小説の系譜に属している。

ラテンアメリカ諸国の歴史は、ヨーロッパからやってきた白人たちによって人為的に作られ、翻弄された結果、さまざまなタイプの専制的な独裁政権が作られてきた歴史がある。そういった独裁者小説の中でも最高傑作の一つとされている。

ガルシア=マルケスは『グアバの香り――ガルシア=マルケスとの対話』にて、「権力の孤独についての詩」ようなものと語っている。

この作品の最大の特徴は、段落のない長い文章と螺旋状と形容される文体で書かれていることにある。400ページ近く、段落のない読書体験はこの本でしか得られない読書体験である。

まず主人公の大統領に名前はなく(呼びかけられるときは「閣下」)、会話文に括弧もなく、一人称三人称が混在し、語り手の主体はいつの間にか変わり、時系列も混在する。その縦横無尽な文章世界の中で、主人公である独裁者の残虐な行為と冷酷な行動とともに、彼の絶望と孤独が語られる。(正確には語り手の入れ替わりによる6箇所の改行により、6のパートに分けれられる)

しばしば大統領と『百年の孤独』のアウレリャノ・ブエンディア大佐の類似性が指摘されている。もちろん実在した特定の独裁者ではない。

小説家の筒井康隆氏にして、『百年の孤独』の文庫化に際し、新たに書き下ろされた解説において、筒井「おれのお気に入り」として次に読む作品として、『族長の秋』を強く推薦し、「読むべきである。読まねばならぬ。読みなさい。読め。」と言わしめた。そして初版である集英社ラテンアメリカの文学 13〉では安部公房が月報を担当してる。

あらすじ

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独裁者大統領は死んだ。大統領府にたかるハゲタカを見て、不審に思い、官邸に押し入った国民達の見たものは、無惨な男の死体であった。年齢は107歳とも232歳ともいわれる。複数人物の語りにより悪事・凶行が次々に明らかになってゆくが、同時に孤独と猜疑心に陥り朽ちてゆく肖像を描く。

登場人物

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・大統領            名前はなく(呼びかけられるときは「閣下」)

・ベンディシオン・アルバラド  元娼婦で父なし子を産んだとされる

・パトリシオ・アラゴネス    街で悪事をはたらいていた、ぺてん師。大統領にそっくりであることから影武者として登用された。

・マヌエラ・サンチェス     美人コンテストの優勝者

・ロドリゴ・デ=アラギル    信頼できる腹心の将軍(のちに丸焼きにされる)

・レティシア・ナサレノ     たった一人の正妻

・サエンス=デ=ラ=バラ    政敵の暗殺を繰り返す男

日本語訳

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  • 鼓直:訳(以下同)「族長の秋 」、集英社ラテンアメリカの文学 13〉、初版1983年6月、ISBN 978-4081260133
  • 「族長の秋」、集英社ギャラリー〈世界の文学〉第19巻「ラテンアメリカ」に収録、1990年2月、ISBN 978-4081290192
  • 「族長の秋」、集英社文庫 〈ラテンアメリカの文学〉、初版1994年5月、ISBN 978-4087602357
  • 「族長の秋: 他6篇」、新潮社〈ガルシア=マルケス全小説〉、2007年4月 、ISBN 978-4105090128
  • 「族長の秋」新潮文庫、2025年2月28日刊行予定、ISBN 978-4102052136

日本語版のデザイン

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・初版は1983年の集英社の叢書シリーズ〈ラテンアメリカの文学〉 全18巻のうちの13巻。シリーズ統一の装幀は菊池信義。

・2007年には新潮社より刊行の〈ガルシア=マルケス全小説〉より「族長の秋: 他6篇」として刊行。全集のフォーマットにならい、装画はシリーズを通して、アーティストのシルヴィア・ベッヒュリの作品より選ばれている。装幀は新潮社装幀室。