日野基本射撃場発砲事件
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日野基本射撃場発砲事件 | |
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発砲に使用された自動小銃と同型の銃 | |
場所 |
日本 岐阜県岐阜市日野南9丁目7 日野基本射撃場 |
座標 | |
日付 |
2023年(令和5年)6月14日 午前9時8分頃 |
概要 | 自衛官候補生の男が自動小銃を発砲し、3名が死傷。 |
攻撃側人数 | 1人 |
武器 | 自動小銃(89式5.56mm小銃) |
死亡者 | 2人 |
負傷者 | 1人 |
対処 | 男を殺人未遂容疑で現行犯逮捕 |
影響 | 全国の陸上自衛隊で射撃訓練を見合わせ |
管轄 |
岐阜県警察岐阜中警察署 陸上自衛隊中部方面警務隊第130地区警務隊(守山駐屯地内) |
日野基本射撃場発砲事件(ひのきほんしゃげきじょうはっぽうじけん)は、2023年(令和5年)6月14日の午前9時8分頃に岐阜県岐阜市にある陸上自衛隊の日野基本射撃場で自衛官候補生が自衛官3人に向けて自動小銃を発砲し、2人が死亡した事件[1]。
概要
[編集]事件が起きたのはJR東海岐阜駅から東に約7キロの位置に所在する日野基本射撃場。1907年に日本陸軍歩兵第68連隊の射撃場として開設され、1960年より陸上自衛隊が使用している。元は露天の射撃場だったが周辺の宅地化が進んだため、2015年には屋内射撃場化工事が行われた[2][3]。
事件当日は午前9時頃から新隊員の教育のための実弾射撃訓練が行われており、この日が射撃訓練の最終日だった[4]。自衛官候補生の1人であるZ(当時18歳)は、射撃位置の前に位置する「準備線」と呼ばれる場所で、他の候補生とともに教官の指示の元で実弾を受け取り弾倉に入れ込む作業をしていたが、突然無断で銃の装填を行った。待機場所の管理をしていた「交代係」であるA3曹(当時25歳)がそれに気づき、Zに対して動きを止めるように指示するとZは9時8分頃、A3曹に89式5.56mm小銃で発砲、その後、後ろで実弾の管理や受け渡しを行う「弾薬係」を担当していたB1曹(当時52歳[5])の方に振り向き、歩いて近づきながらB1曹にも発砲、続けざまに同じ弾薬係であるC3曹(当時25歳)に発砲し、さらにB1曹にもう1発を発砲した。その後Zは周囲の自衛官らに取り押さえられたが、その際にも数発を壁に向けて発砲した[6][7][8]。A3曹は脇腹に命中、B1曹は胸部に2発命中、C3曹は左太ももに命中し、A3曹とB1曹は心肺停止の状態で搬送されたが、搬送先の病院で死亡が確認され、C3曹も全治3ヶ月の重傷を負った[9][10][11]。死亡したA3曹、B1曹[1]と重傷を負ったC3曹は3人とも守山駐屯地に所属していた。
銃を発射した候補生Zは、その場で身柄を拘束され、殺人未遂の疑いで逮捕され、岐阜県警察に引き渡された[1]。15日、県警はZを殺人容疑に切り替えて岐阜地方検察庁に送検した[12]。本事件は自衛隊施設内で発生した事件のため、県警と警務隊による合同捜査になっている[13]。7月20日、岐阜地検は、事件当時の精神状態を調べるため、Zの鑑定留置を始めた。期間は11月24日までの約4カ月間[14]。11月22日、岐阜地検は鑑定留置の延長を岐阜簡易裁判所に請求し、認められたと明らかにした。期間は2024年1月18日まで[15]。1月18日、岐阜地検は鑑定留置が終了したと明らかにした [16]。同月23日、岐阜地検はZを強盗殺人と同未遂の非行内容で岐阜家庭裁判所に送致した[17]。2月19日、岐阜家裁(浜口紗織裁判官)は「人の命の重さを全く顧みない残虐な犯行で、社会的影響も深刻だ」 と指摘し、刑事処分が相当としてZの逆送致を決定した[18]。同月28日、岐阜地検はZを強盗殺人と同未遂の罪で起訴した[19]。
容疑者
[編集]容疑者である自衛官候補生Zは、同年4月に守山駐屯地に駐屯する第35普通科連隊に入隊していた[1][20]。容疑者は「52歳の教官が狙いだった」と供述した[8]。9月20日、陸上自衛隊はZを懲戒免職処分にした[21]。
反応
[編集]国内
[編集]- 浜田靖一防衛大臣は、国民に心配をかけたことを陳謝した上で、被害者への哀悼の意を表した[1]。
- 森下泰臣陸上幕僚長は会見を開き謝罪し、原因究明と再発防止を図るため、調査委員会を立ち上げたことを明らかにした[1]。
- 公明党の佐藤茂樹国会対策委員長は、与党の会合で原因解明と再発防止策、信頼回復に努めてほしいと述べた[1]。
- 鈴来洋志元陸将補は、事件が残念であると述べた一方、1984年(昭和59年)の訓練自衛官小銃乱射事件を思い出したと話した[22]。
日本国外
[編集]影響
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i 日本放送協会 (2023年6月14日). “【速報中】陸自射撃場発砲事件 2人死亡 18歳自衛官候補生逮捕 | NHK”. NHKニュース. 2023年6月14日閲覧。
- ^ “陸自射撃場で発砲か、2人死亡1人負傷 18歳の自衛官候補生を逮捕”. 朝日新聞デジタル (2023年6月14日). 2023年6月14日閲覧。
- ^ “陸自日野射撃訓練場(岐阜市)覆道射撃場新設工事が完成”. 東海防衛だより通巻第23号 (2015年5月). 2023年6月15日閲覧。
- ^ “逮捕の自衛官候補生、実弾射撃訓練の最終日に発砲か 隊員3人死傷”. 朝日新聞デジタル. 2023年6月25日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 宮崎県出身“射殺された52歳自衛官は宮崎県出身”. テレビ宮崎 (2023年6月). 2023年6月17日閲覧。
- ^ “自衛官候補生、取り押さえられた際も発砲…無断で弾倉を装填”. 読売新聞. 2023年6月25日閲覧。
- ^ “自衛隊銃撃 陸自元幹部”管理規則や弾薬使用あり方見直しを””. NHK. 2023年6月25日閲覧。[リンク切れ]
- ^ a b “陸自射撃場発砲事件 逮捕の候補生 連射ではなく1発ずつ4発発射”. NHK NEWS WEB. (2023年6月14日) 2023年6月14日閲覧。
- ^ “死亡の52歳、胸に2発被弾 逮捕の候補生、狙ったか 他の2人は1発ずつ・陸自小銃発砲”. 時事通信. 2023年6月25日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “【速報】陸自射撃場で銃発射、死者2人に 新たに男性隊員の死亡確認 18歳隊員は殺人未遂で現行犯逮捕 岐阜市”. FNN. 2023年6月25日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “陸自3人死傷事件 自衛隊・警察が動機の解明進める”. NHK. 2023年6月25日閲覧。
- ^ “陸自射撃場で3人銃撃した18歳候補生、殺人容疑で送検”. 読売新聞. (2023年6月15日) 2023年6月16日閲覧。
- ^ 「取り押さえられそうになったから」自衛官候補生、発砲の理由を供述朝日新聞2023年6月16日
- ^ “陸自3人殺傷事件、自衛官候補生の男を鑑定留置 岐阜地検”. 朝日新聞. (2023年7月20日) 2023年11月22日閲覧。
- ^ “陸自小銃発射事件で元候補生の鑑定留置を延長 来年1月まで”. 産経新聞. (2023年11月22日) 2023年11月22日閲覧。
- ^ “元候補生の男鑑定留置終了 岐阜市の陸自小銃発射事件”. 産経新聞. (2024年1月18日) 2024年1月18日閲覧。
- ^ “陸自元候補生を家裁送致、強盗殺人の非行内容 地検「弾薬奪う目的」”. 産経新聞. (2024年1月23日) 2024年2月19日閲覧。
- ^ “元自衛官候補生の逆送決定 3人死傷の小銃発砲―岐阜家裁”. 時事通信. (2024年2月19日) 2024年2月19日閲覧。
- ^ “陸自発砲事件、元自衛官候補生の19歳を強盗殺人罪で起訴 岐阜地検”. 朝日新聞. (2024年2月28日) 2024年2月28日閲覧。
- ^ “実名も公表…陸自射撃場で3人死傷した銃撃事件 19歳の元自衛隊員を起訴 父親「隊への不満は口にせず」”. 2024年3月2日閲覧。
- ^ “自衛官候補生を懲戒免職 岐阜の陸自小銃発射事件”. 産経新聞. (2023年9月20日) 2023年11月22日閲覧。
- ^ “陸自施設の射撃事故「偶然はありえない」OBが思い出した山口事件”. 朝日新聞デジタル (2023年6月14日). 2023年6月14日閲覧。
- ^ “Japan: Cadet shoots dead two instructors at military firing range”. BBC. (2023年6月14日) 2023年6月14日閲覧。
- ^ “Aerial footage shows aftermath of shooting at military training center in Japan”. CNN. (2023年6月14日) 2023年6月14日閲覧。
- ^ “Two killed, one wounded in shooting at Japan military range”. aljazeera. (2023年6月14日) 2023年6月14日閲覧。
- ^ “Japanese army trainee shoots 3 fellow soldiers, killing 2”. Fox61. (2023年6月14日) 2023年6月14日閲覧。
- ^ “隊員3人死傷の守山駐屯地 自衛官候補生の修了式行われる”. 日テレNEWS (Yahoo! News). (2023年6月28日) 2023年6月28日閲覧。
- ^ “小銃発射事件の死亡自衛隊員2人が特別昇任 公務災害も認定”. サンケイスポーツ. (2023年6月27日) 2023年6月29日閲覧。
関連項目
[編集]- 訓練自衛官小銃乱射事件 - 同様の自衛官による自衛官殺傷事件。
- 河瀬駅前交番警察官射殺事件 - 警察官による警察官殺害事件。
- 東富士演習場違法射撃事件 - 自衛官が実弾入りの銃を民間人に試射させた防衛不祥事。
- 2009年フォートフッド銃乱射事件 - 米兵による米兵殺傷事件
- 2014年フォートフッド銃乱射事件 - 同様の米兵による米兵殺傷事件。
- ゴルニー演習場違法射撃事件 - ロシア兵によるロシア兵殺傷事件。
- ベルゴロド州演習場小銃乱射事件 - 同様のロシア兵によるロシア兵殺傷事件。
- 中野市4人殺害事件 - 本事件から3週間前の2023年5月25日に発生した銃殺事件。
- en:Fragging
- 安全配慮義務 -「陸上自衛隊事件」により定立された概念。